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2-11

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「アキラ、おはよう。昨日は地走りトカゲ(グリーンクリーパー)の群れを捕まえたんだって?」


「おー、アレス、おはよ。あのトカゲな、俺達を狙って来たみたいなんだけど空からゼロが近づいたら動かなくなってさ。だから倒さないで捕まえた」


「助かるよ。地走りトカゲ(グリーンクリーパー)は馬の代わりになるもの。持久力はあるし結構堅い、荷車だって引けるしね」


「役人もそう言ってた。これから見つけたら捕まえてくれって懇願されたよ」


「あははっ。上手く馴らせば役に立つからねー」


「ぴ」


「やぁ、ぴよこ。君の方が役に立ってるから大丈夫!」


「ぴー」



 おばちゃんの店で朝飯を頼んでいた晶。

アレスと最初に行った酒場兼食事処だ。

他の席も冒険者で埋まっている。

割と早い時間帯ではあるが皆仕事熱心なのだろう。

晶もそうだ。

オークの残党狩り、草原の一角兎(ホーンラビット)の肉確保、大ネズミの排除、忙しく働いていた。

今日も朝飯の後でウィル達と一緒に海沿いを歩いて回る予定だった。

何か危険な魔物が巣を作っていないかの確認だそうだ。


 朝飯は焼肉と魚と葉野菜のスープ。

おばちゃんの店、朝飯の定番だ。

穀物は滅多に出て来ない。

ドンの町ではまだ農業といえるほどの事は出来ていない。

森で取れる野草で精一杯だという。

肉はオーク肉が沢山。

魚は小魚が多いが結構豊富にとれるらしい。

そして調味料はと言うと……塩は多くの場所で取れると。

よほど内陸でもない限り塩に困る地域は少ないらしい。

塩以外は、唐辛子に似た物が使われている。

森で良く見かける物で種をすりつぶして使っている。

辛いが重宝されている様だ。

結果、食事は中々美味いらしい。

晶は文句を言ったりしていなかった。


 朝飯の到着を待っているとアレスとイェンがやって来たのだ。

そして朝の挨拶から昨日の話なんかをしていた。

アレスは砕けた態度になっている。

それを咎める爺はいない。

恐らくビクトリアの方へ付いているのだろう。

アレスはぴよこも大事にしてくれている。

気を遣って褒めたりしていた。

言葉は通じていないと思うが……主である晶へのアピールかも知れない。


 そんなアレスは晶に用があるらしい。



「アキラ、買い物に行かないか?」


「買い物?出来るならしたいけど……」



 アレスの用は買い物だった。

晶の反応は鈍い。

ドンの町、店の品ぞろえの悪さを見て知っているからだろう。

いまいち乗り気でなさそう。



「あぁ、ドンでじゃないよ。タマギ島へ行こう!」


「タマギ島……」


「うん。船でもいいんだけど、一つの船に人が多いと襲われやすいし魔力が高い人がいても危ない。できればゼロに乗せてもらいたいんだけど……」


「船には興味あるけど、ゼロで行こうか。大人なら三人くらいはいけるだろう」


「いいのかい!?やったぁ」


「アレス様、もう一人の事なんですが……自分も乗りたいです!」


「お、イェンも一緒か。いいぞー」


「やった!ありがとうアキラ!!」



 アレスはタマギ島へ行こうと言っている。

行く方法は船だ。

晶がいなければね。

アレスは船の危険性について語っている。

恐らく海ではなく空を行きたいからだろう。

いや、海が危ないのは嘘ではないが。

それに対し、晶があっさりとゼロに乗って空を行こうと誘っている。

ゼロを恐れないのなら気にしない晶。

空で暴れられたら危険だものね。

アレスが喜んでいる。

こうして見ると年相応だ。

晶と友になり、いつも王子でいなければいけない重圧から逃れられているのかも知れない。

良い事ではないだろうか。

アレスの護衛に付いていたイェンもゼロに乗りたいと言い、それを了承する晶。

イェンも嬉しそうだ。

まぁ、空を飛んだ事のある人なんて早々いないだろう。

気持ちは解る。



「で、船だとどのくらいかかるんだ?」


「そうですね……最速だと、副都市アミを朝出航して日が暮れる頃ですかね」


「最速じゃないと、どうなの?」」


「船の上で一泊ですね。次の日、夕方に着くと聞いています」


「あの船で寝るのか……」


「はい……しかも夜は魔物が活発に動くのでとても危険です」


「うげっ」


「基本は魔法を使い最速で行きます。魔法を使うので魔物に感知されやすいですがね……」


「で、でもみんな無事に着くんだよね?」


「昼でも四隻に一隻は……」


「……海、危なすぎだろ!!」


(ワシらも無茶したからのぅ……)

(あんなカヌーみたいな船で海を渡るとか……タケマツさんが戦わなかったら絶対死んでましたよ……)

(仕方なかったんじゃ。船を出してくれる者がおらんかった……)

(自作の船ってだけで無茶でしたよ)

(まぁ、何度か襲われたが無事渡れた訳じゃし……無事ではないか死んだしの)

(タケマツさんには感謝しています。はい)


「だから南大陸への進出が遅れています。物資も大量には運べませんし……」


「みんな頑張って来てるんだな……」


「はい。タマギ島では養える人の数も決まっていますから必死です」


「島だもんなぁ……」



 海は危険。

昼間も危険だが夜はもっと危険らしい。

タケマツとカヅキは無理をして海を渡ったらしい。

どれだけ時間がかかったのやら……。


 人が多く集まると襲われるなんて、ここに町が出来るほどの輸送……大変であったろう事は想像に難くない。

犠牲を出してでも進めなくてはいけない計画。

その重圧はカルロス、アレス達にかかっているはずだ。

王族も楽ではない。

更に最前線に立つのだから頭が下がる。


 最速の船、その速度は解らないが空を飛べるゼロと競える様なものではあるまい。

船で朝、出航して夕方着となるとなるとゼロならば遅くても昼前には到着するだろう。

もっと早いとは思うが。

これは移動に関して革命的な速さ、安全さだろう。

ゼロが大きいと言っても物を大量に運べる訳ではないのが難点か。

まぁ、カヅキの終の手札(ラストカード)を公にしていいのなら一気に解決する問題ではあるのだが……。

さすがにそこまでは信頼してはいないだろう。

まだお互いを知っていない。


 でもカヅキの終の手札(ラストカード)を使ったなら……物流の大革命!考えるだけで楽しそうである。



「今日はウィル達と海周りの調査なんだ。明日でいいか?」


「そっか。うん、明日お願い」


「明日ですね!」


「今ぐらいでいいかな?」


「いいとも」


「はい」



 アレスとイェンは晶の朝飯が来る前に去っていった。

王子ともなると忙しいのだろう。

ちゃんと朝ご飯は食べたのだろうか?


 明日はタマギ島だ!







 無事にウィル達との仕事をこなした晶。

砂浜、岩場と見て回ったが特に危険はなかった模様。

晶はパラソル、ビーチチェア、トロピカルドリンク、焼きそば、カレー、などと呟いていた様だ。

良い海だったらしい。

いずれ海を満喫するであろう。


 翌日は快晴であった。



「おはよー!」


「おう、おはようさん」


「アキラ、おはよう」


(ふふっ、アレス王子がはしゃいでいますねぇ)

(よっぽど空が楽しみなんじゃろう)


「朝飯は食ったか?」


「食べてきました。一応お弁当も作ってもらいましたよ!」


「アキラは?」


「もう食べた。いつでも行けるぞ」


「でしたら行きましょう!!」


「行きましょう!」


「おう」



 テンションの高いアレスとイェン。

背中を押される様に出発する晶であった。

ゼロの騎乗装備も弄ってある。

席を三つに増設してあった。

鐙、背もたれ、シートベルト、掴まる紐。

晶の手先は器用だと言える。

やはり職人を目指すべきであったろう。

万全である。

いやパラシュートはない。

その時は運を天に任せるしかないだろう……。



 ゼロに乗る三人、アレス、イェン、アキラの順だ。

アレスが先頭に乗りたいと言い張った。

イェンが護衛としては真ん中に……と言ったが押し切られていた。



「しゅっぱーつ!」


「「おーっ!」」


(承知)



 スススーッと謎の浮遊をした後で大空へ。

ゼロの大きな羽が優雅に動く。

晶はそれを見て、そんなんで飛べるとかおかしいよな。

なんて今更な事をぼやいていた。

ぴよこは晶のフードの中。

万が一空へ頬りだされたら気が付かないんじゃ……。

すぐにおねむだろうから大丈夫か。



 まだ朝のせいか風が冷たそうだ。

そして先頭のアレスは風と戦っている。

あ、これ耐えられないかも知れない……。

頑丈な晶ですら最初は風と戦っていた。



「ア、アキラ!」


「アレス様!!」


「ゼロ、もっとゆっくり飛んでくれ」


(解りました。マスター)



 アレスが息も絶え絶えといった感じで晶の名を呼んだ。

それを心配するイェン。

晶は自分も通った道なので何があったか察したらしい。

ゼロに指示を出した。



「ふぅ……風が凄いんだなぁ」


「驚きましたね。これほどとは……」



 アレスが息を吐いた。

イェンも同意している。




「空はどうだ?そろそろ見渡せる余裕が出たろう?」


「……凄い!海がキラキラしてる!!」


「海は広いなぁ……」


「良い景色だよな」


「うん!」


「これは記念になります」


「そうだな。これは凄い記念だ!だけど何だろう……自分の小ささを感じるな」


「アレス王子もですか。私もそんな気がします」


「自然に人は勝てないさ」


「アキラもそう思うんだ?」


「そりゃそうだ。出来る事なんて限られているさ」


「そっか……」



 アレスとイェンが周りに視線を移した。

そして感動の声をあげる。

感動だけではない。

自然の雄大さも感じている様だ。

相対的に自分の小ささも解ったらしい。

晶が悟った様な事を言う。

聞いた事のある言葉をそのまま言ったのかは判らない。

だがアレスには響くものがあったらしい。

穏やかな顔になっていた。



 海を空から眺め、渡る晶一行。

空は青く、遠くまで見渡せる。

このままどこまででも行けそうであった。




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