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カチッ
「ふぅ……まただめだったか……」
なんでだよ……俺はそう思わずには居られなかった。
また応募した企業からのお断りメールだったからだ。
俺はモニターから目を外しPCチェアに体重を預けた。
あー、嫌になる。
俺のどこが悪いってんだよ……。
何をしても平均に近い、いや平均の上をいっているのにさ。
今年こそ就職させてくれよ。
第二新卒で何とかしたい。
もう田舎の家族から何も言われたくない。
戻ってこいったってあっちにはまともな仕事なんてない。
「バイトに行くか……」
何度見ても変わらないメールの内容。
バイトの萌ちゃんの顔を見れば少しは気が紛れるかな……。
俺はジャージからパーカーとカーゴパンツ姿へ、のそのそと着替える。
はぁ、行こう……。
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「おつかれさまー」
「また明日っす」
「おーう」
バイトが終わった。
バイトの後輩である大学生の萌ちゃんと高校生の翔に軽く挨拶を返した。
可愛い萌ちゃんの顔を見ても一心不乱に仕事をしても気は晴れなかった。
やはり企業からのお断りメールは堪える。
また明日か可愛くない野郎の言葉……ずっとこんな日常が続くのかも知れないな。
嫌な想像が頭を過る。
俺はママチャリの籠へ発泡酒とチーカマ、ポテチの入ったコンビニ袋を入れ、ペダルを漕ぎ出した。
メシはいいや、何だか食欲がない。
それどころか何もしたくない。
「寒くなってきたな」
俺は自転車を漕ぎながら暗い空を見上げる。
田舎と違って星なんて見えない。
もっとも星座だとかは有名どころしか知らないけども。
冬が近いな。
俺は冬の到来を感じながら自転車を漕いだ。
マンションへ着き、コンビニの袋を持ちエレベーターを待つ間、スマホを弄った。
暇があればニュースをチェックしている。
時事関係は見ておかないとな。
面接で返事が出来ないなんて避けたい。
「割と景気良くなってきてるはずなんだがなぁ……」
株価は上がっている。
景気も良くなっていると言われている。
だがその恩恵を俺には感じられない。
納得がいかない。
何で俺だけ……そう思わずには居られなかった。
遊んでばっかりいる様な奴が内定をもらっていると言うのに何でだ!?
俺は普通だ。
少なくとも見た目や学歴は普通のはず。
だが普通に就職出来ていない。
運が悪いのだろうか?
神社へお参りにでも行くべきか?
お祓いをしてもらうべき?
やれる事はやろうかな……。
「ぷはーっ!これのために生きているな!!」
部屋の玄関へ入って発泡酒をあけた。
歩きながら呑まなかったのを褒めて欲しい。
美味い。
ちょっと前は酒より炭酸ジュースとかの方が好きだったんだけどな……。
就活が上手く行っていないせいか酒を呑むことが増えた。
毎日呑んでいると思う。
ぽーん。
玄関に響く音にビクッとした。
俺のスマホからの音だった。
この音はPCからメールが転送されて来た音だ。
俺はカーゴパンツの尻ポケットからスマホを取り出す。
「おっ!キタキタキター!!本命様ー」
誰からのメールか判ってつい叫んでしまった。
今の俺にとって大本命の企業からのメールだった。
期待と気合でいっぱいになる。
それと同時に今までの結果も思い起こされた。
メールの中身を見る。
ちょっと手が震えたのは内緒だ。
『長尾様
お世話になっております。
株式会社×× 採用担当の○○です。
先日はお忙しい中、面接にお越しいただき誠にありがとうございました。
慎重なる選考を重ねましたところ、
残念ながら今回はご期待に添えない結果となりました。
多数の企業の中から弊社を選び、ご応募頂きましたことを深謝するとともに、
長尾様の今後一層のご活躍をお祈り致します。
株式会社××
採用担当○○』
「……」
またご活躍をお祈りされてしまった。
もう一度読み返す。
宛先は……間違っていない。
名前も俺だ。
長尾。
長尾晶。
俺はメールから目を逸らし酒をあおった。
色々と苦い。
発泡酒も苦ければメールが示す結果も苦い。
俺は目を閉じた。
そして目を開ける時に寒さが和らいだのを感じた。
あれ?
悲しい結果と少しの疑問。
その後に来たのは……。
「なんで……部屋はどこへ行った?」
そう言わざるを得なかった。
照明が消えただけではない。
自身の部屋の匂いも消えた。
足元は玄関ではなくゴツゴツしていた。
「ここはどこ?」
呑みすぎたか?
まだ最初の一本を空けてすらいない。
俺は混乱しているらしい。
手さぐりで照明のスイッチを探したがなかった。
「ははっ、本命からのお祈りメールが相当答えているらしい」
俺は呑まずには居られなかった。
あ、これ以外はもう一本しかないぞ!
もっと酒もってこーい!!
どうしよう……。




