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新しく書いてみます。

毎週土曜日に更新予定。

お読みいただけたら幸いです。

1-1



カチッ



「ふぅ……まただめだったか……」



 男はメールの中身を見て溜息をついている。

無理もあるまい、男は新卒というカードを生かせず、第二新卒でも危うそうなのだから。


 男がデスクトップPCに向かっている部屋はワンルームマンションだ。

何の変哲もない部屋と言っていい。

壁にはスーツが二着掛けられている。

スーツを生かせる日を夢見て頑張っているのだろう。

そんな男は紺のジャージが似合っている。

黒髪を短髪にして一見爽やかな好青年風に見える。

顔は十人並、まぁ悪くはない。

二十半ばまではいっていないであろう年齢に違いない。

少なくとも少年といった外見には見えない。

身長も年齢でいえば平均を上回っている。

大学を無職のまま卒業しフリーターをしながら公務員試験の勉強をしていた。

公務員試験と言っても必ずなりたいという訳ではなさそうで手あたり次第企業へ応募していた。

今の所それが実った様子はない。

今年も仕事を見つけられていない現状を鑑みて焦りが男の顔に出ている。



「バイトに行くか……」



 何度見ても変わらないメールの内容。

やっと諦めたらしい。

現実逃避は、ほどほどに……。







「おつかれさまー」


「また明日っす」


「おーう」



 大手コンビニでの仕事が終わった。

大学生と高校生のバイト達に軽く挨拶を返して男は帰路へつく。

ちょっと偉そうな返事はあれだ、彼の折れそうな心を支えるのに必要なのであろう。

なにせ彼らは数少ない下の者なのだから。

いずれ追い越される気がしないでもないが……。


 男はママチャリの籠へ酒とツマミの入ったコンビニ袋を入れ、ペダルを漕ぎ出した。

近場でのバイトを選んだのは時間を大切にしているからだろうか?

いや横着者の可能性もある。



「寒くなってきたな」



 男は呟く。

独り言が多いのは仕様である。

友達が少ないのかも知れない。

実際、友達は多くなかった。

好きなマンガやゲーム、小説といった趣味の話が出来る友達が二人いるくらいであった。

もちろん同性である。

そこに華やかさはなかった。

完全なるボッチではないのでセーフか?

何がセーフなのかわからないが。


 男はしばらく自転車を漕ぎ、自身が住むマンションへ着いた。

コンビニの袋を持ちエレベーターを待つ間、スマホを弄っていた。



「割と景気良くなってきてるはずなんだがなぁ……」



 どうやらニュースサイトを見ていたらしい。

政治、経済辺りのニュースを見ての呟きに違いない。

納得がいかない。

そんな気持ちが男の顔に出ていた。

何で俺が就職出来ないのだろう。

きっとそんな所だ。


 確かに中肉中背、顔も普通でパッと見は悪くない。

高校以来、運動らしい運動はしていなかったが体型も維持されていた。

特に自慢できる学歴ではなかったが馬鹿にされるほどの所でもなかった。

まぁ、人付き合いは得意ではなさそうなのでコネはあるまい。

特技、賞罰……特になし。

普通だ。

だが普通に就職出来ていない。

運が悪いのだろうか?

それで終わらせられたら遣る瀬無いだろう。

本人に何とか出来る所とは思えないし。



「ぷはーっ!これのために生きているな!!」



 部屋の玄関へ入るなり発泡酒を呑みだす男。

安い発泡酒な辺りが今の男の立場を表しているかの様だ。

そしてこの発言。

まだ靴すら脱いでいない。

だめ人間に片足を突っ込んでいる。



ぽーん。



 男のスマホが鳴った。

男はカーゴパンツの尻ポケットからスマホを取り出す。

もう片方の手はアルミ缶を持ったままだ。



「おっ!キタキタキター!!本命様ー」



 どうやらスマホに届いたモノは本命企業からの連絡だった模様。

無理やりテンションを上げている様にも見える。

きっと今までだめだった事が頭にちらついているのかも知れない。

少し痛々しい。


 どれどれ……。



『長尾様


お世話になっております。

株式会社×× 採用担当の○○です。


先日はお忙しい中、面接にお越しいただき誠にありがとうございました。


慎重なる選考を重ねましたところ、

残念ながら今回はご期待に添えない結果となりました。


多数の企業の中から弊社を選び、ご応募頂きましたことを深謝するとともに、

長尾様の今後一層のご活躍をお祈り致します。


株式会社××

採用担当○○』



 だめだったね、長尾君。



「……」



 長尾君は天井を仰いだ後で苦々しい表情をして酒をあおった。

情報が苦かったのだろう。

その直後、部屋から長尾君が消える。

主の消えた部屋は寒々しかった。



 まぁ、仕方ないよね。

何せ千の企業……千人からお祈りされたんだもの。

最下級ながら神格を得てしまったら仕方ない。

ここにはこれ以上力を持つ存在は要らない。

だから行ってもらう。

お元気で。


 えっ?それを知っている私は誰なのかだって?

それはヒ・ミ・ツ。

うざい?まぁ可愛い女の子の声で言われたと思ってくださいな。



 さて長尾君は私からのメールにいつ気が付くかな?

簡単に状況説明を書いておいた。

馬鹿馬鹿しいとは思うだろうけど、自分で確認出来たら態度も変わるに違いない。

頑張って欲しいものだ。

わりとどうでもいいけど。



 ではでは。




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