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ハズレと言われたガチャスキル、猫と一緒に毎日回してます 〜孤児院育ちの少年は、魔石を一つずつ集めて少しずつ強くなる〜  作者: はわわわわ


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# 第6話 剣と小石の、二人の戦い方

# 第6話 剣と小石の、二人の戦い方


翌朝、俺は草原に向かう途中で、町の外を流れる小川に寄り道をした。


「石拾い?」


トーマが、川べりにしゃがみ込む俺を不思議そうに見下ろした。


「うん。投げやすそうなのを集めておこうと思って」


川原には、水に削られた丸い石がたくさん転がっている。大きすぎると重くて投げにくいし、小さすぎると当たっても効かなさそうだ。手のひらにすっぽり収まるくらいで、少し平たくて、端が硬そうなもの。


拾っては握って、また拾って。腰に下げた革の小物袋が、だんだん重くなっていく。ガチャで出た袋は、説明文のとおり、本当に小石がたくさん入った。


ルルは川の浅瀬をのぞき込んで、泳いでいる小魚に前足を伸ばしては、水に濡れるのが嫌なのか慌てて引っ込める、を繰り返していた。


「ルル、落ちるなよ」


「……る」


ちょっと不機嫌そうな返事だった。


---


「小石投げ、か」


草原の水たまりのそばで、ガルドさんは俺の説明を黙って聞いていた。


「スライムの核を、石で狙ってみたいんです。剣だと、俺はどうしても狙いがぶれるので」


「やってみろ」


ガルドさんの返事は短かった。止めもしないし、笑いもしない。


俺は袋から石を一つ取り出して、十歩くらい先のスライムに向き直った。ぷるぷると揺れる半透明の体の真ん中に、ビー玉くらいの核が浮かんでいる。


――あそこに、まっすぐ。


そう思っただけで、腕がすっと自然に動いた。


投げる。


庭の柿の木のときと同じように、石はまっすぐに飛んでいった。山なりにもならず、横にもぶれず、吸い込まれるように核のある場所へ。


ぶよん。


そして、スライムの体の表面で、ぽよんと跳ね返された。


「……あ」


石は草の上に転がり落ちた。スライムは、何かが当たったことに気づいたのか、ぷるりと体を震わせてこっちを向いた。


「当たったな」


ガルドさんが言った。


「狙いは完璧だ。だが、力が足りん。スライムの表面を抜けるには、子どもの腕じゃ無理だ」


「……ですよね」


なんとなく、そんな気はしていた。狙ったところに当たる。それだけ。説明文に書いてあったとおりだ。


もう一度、二度と投げてみる。全部、核のある場所のど真ん中に当たる。でも、全部跳ね返される。


「やっぱり外れか?」


トーマが心配そうに言った。


「いや……」


俺は、跳ね返された石と、スライムを見比べた。


昨日のトーマの突きを思い出す。木剣がスライムの体にずぶりと沈むと、核はするりと横へ逃げてしまう。でも、逃げた核は遠くへは行かない。剣が刺さった穴のすぐ奥で、ぷかぷか浮いていた。トーマが剣を引き抜くまでの間、その穴は確かに開いていて、核はそこから丸見えだった。


表面が一番硬い、とガルドさんは言った。


じゃあ、表面さえ抜けていれば?


「トーマ。スライムを突いて、剣を抜かずにそのまま押さえておける?」


「え? できると思うけど」


「核が逃げても、穴から見えると思うんだ。逃げた先に、俺が石を入れる」


「……ってことは、俺は核に当てなくていいのか?」


「うん。核の近くに刺して、穴を開けておいてくれればいい。逃げた核は、俺が狙う」


トーマはしばらくぽかんとしていたが、やがて、にやりと笑った。


「なるほどな。やってみようぜ」


---


トーマがスライムに踏み込む。昨日教わったとおりに、剣先をまっすぐ突き出す。


ずぶり。


木剣が半透明の体に沈み込んだ。トーマが歯を食いしばって、剣をそのまま押さえる。スライムの体がうねり、剣を押し戻そうとしている。


核が、剣先からするりと横へ逃げた。いつもなら、ここでトーマが「くそっ」と言う場面だ。


でも、剣の刺さった傷口は、ぽっかりと開いたままだった。その奥、逃げた先に、濃い色の核が見える。


――あそこだ。


石を投げる。


まっすぐ。傷口の真ん中を抜けて、核へ。


ぱきん、と乾いた音がした。


核が真っ二つに割れて、スライムの体がぐしゃりと崩れた。トーマの木剣が、支えを失って地面に突き刺さる。


「……やった」


「やったああ!」


トーマが飛び上がった。俺も、思わず拳を握りしめた。


割れた核の中は、空っぽだった。魔石が育っているのは三匹に一匹。今回は外れだ。でも、そんなことはどうでもよかった。


「もう一匹!」


「おう!」


二匹目。トーマが突いて、押さえて、俺が投げる。ぱきん。


三匹目。ぱきん。今度は青い小魔石がころんと転がり出た。


四匹目、五匹目。


だんだん息が合ってきた。トーマは核をぴったり狙わなくてよくなったぶん、突きが速くなった。突く角度も工夫して、核が見えやすいように傷口を開いてくれる。俺は、核が逃げた先へ、トーマが剣を押さえた瞬間に石を投げる。昨日みたいに何度も突き直さなくていいので、トーマの息も上がらなくなった。


昨日は二人で六匹だった。今日は、お昼までに十二匹。


「ほう」


岩の上で、ガルドさんが腕を組んだまま、小さく声を漏らした。


---


お昼は、院長先生が持たせてくれた小さな黒パンを、トーマと一つずつ食べた。


ガルドさんは、自分の包みから干し肉と固いチーズを取り出した。そして何も言わずにナイフで切り分けると、俺たちの黒パンの上に一切れずつ載せた。


「……いいんですか」


「食わんと動けん」


それだけ言って、ガルドさんは自分の分にかじりついた。


ルルが、干し肉の匂いに鼻をひくひくさせて、俺の膝に前足をかけてきた。ちぎって分けてやろうとすると、ガルドさんの太い指が、すっと俺の手を止めた。


「やめとけ。人間の干し肉は塩がきつい。猫の腹にはよくない」


「そうなんですか」


「昔、仲間が飼っていた猫で、な」


ガルドさんはそれ以上言わなかった。


おあずけをくらったルルが、恨めしそうにガルドさんを見上げる。


ガルドさんは、ふうっと息を吐くと、包みの奥から小さな油紙の包みを取り出した。中から出てきたのは、小指くらいの大きさの、白っぽい干し魚だった。


「塩を使わずに干した川魚だ。これならいい」


ルルの前に置かれると、ルルは目をまんまるにして、両前足で抱えるようにかじりついた。


「……ガルドさん、なんでそんなの持ってるんですか」


「たまたまだ」


ガルドさんは、そっぽを向いて干し肉をかじった。


どう見ても、たまたまではなかった。トーマと顔を見合わせて、二人でこっそり笑った。


干し肉は塩気が強くて、噛むほどに味が出た。黒パンだけのお昼より、ずっとお腹にたまった。


ガルドさんは、干し肉をかじりながら、ぽつりと言った。


「面白い戦い方だ」


「本当ですか」


「剣で敵を止めて、別のやつが急所を狙う。冒険者のパーティーでは、昔からある戦い方だ。お前らは、誰にも教わらずにそれを見つけた」


トーマが照れくさそうに鼻の頭をかいた。俺も、なんだか顔が熱くなった。


「レン」


「はい」


「遠くから正確に当てられるやつは、パーティーで重宝される。前に出るやつが安心して戦えるからだ」


ガルドさんは、干し肉の最後のひとかけらを口に放り込んだ。


「そのスキルを、外れだと思うな」


「……はい」


外れだと思うな。


昨日、ガチャの説明文に「それだけ」と書かれていたスキルを、ガルドさんはそう言ってくれた。


午後もスライムを倒し続けて、その日の魔石は合わせて七個になった。


---


次の日も、俺たちは草原に通った。午前中にスライムを倒し、午後は青葉草を摘む。昼過ぎには、前の日の分と合わせて魔石がちょうど十個になった。


その日の夕方、ひだまりの家の縁側で、俺は三回目のガチャを回した。今回も、子どもたちが周りに集まってきている。


> 所持魔石:10個

> **ガチャを回しますか?** [はい] [いいえ]


[はい]。


カプセルが回って、ころん。


色は――白。


「あー、また白だ」


ポポが言った。白いカプセルは一番下のノーマルだと、前に教えたのを覚えていたらしい。


ぱかり、と開く。


> **【N】 スキル「小石投げ」**


「……また小石投げ?」


一瞬、がっかりしかけた。同じスキルが二つ出ても仕方がない。


でも、画面の表示がいつもと違った。カプセルの絵の横で、金色の文字がきらりと光っている。


> **【重複】スキル「小石投げ」が強化されました。**

> **小石投げ → 小石投げ+1**

> 投げた小石の威力が、少し上がる。


「強化……」


前世で何度も見た仕組みだった。同じキャラクターが重なると、強くなる。限界突破。


まさか、このガチャにもあるなんて。


「レン兄ちゃん、どうしたの? また外れ?」


ミリィが心配そうに俺の袖を引っ張る。


「ううん。……当たりかもしれない」


---


翌日。


草原の水たまりのそばで、俺は一人でスライムの前に立った。トーマは少し後ろで、木剣を構えて待機している。


いつもの川原の石を握る。


――核へ、まっすぐ。


投げた。


石は昨日までと同じようにまっすぐ飛んで、スライムの体の表面に当たった。


そして、跳ね返されなかった。


ずぶっ、と石がスライムの体にめり込んで、そのまま奥へ。勢いは落ちていたけれど、確かに核まで届いた。剣よりずっと速い石に、核は逃げる間もなかった。


ぴしり。


核に、小さなひびが入った。スライムが苦しそうにのたうつ。


「トーマ!」


「任せろ!」


トーマが飛び込んで、ひびの入った核を木剣で一突きした。ぱきん。スライムが崩れる。


「すげえ……レン一人でひびが入ったぞ!」


「うん。まだ一発じゃ割れないけど」


でも、昨日までは跳ね返されていたんだ。少し、ほんの少しだけど、確かに強くなっている。


もしもう一回、小石投げが重なったら? もう二回、三回重なったら?


岩の上で、ガルドさんが目を開けてこっちを見ていた。何も言わなかったけれど、口の端が、ほんの少しだけ上がったように見えた。


足元で、ルルが「るる」と誇らしげに鳴いた。いや、お前は何もしてないだろ、と言いかけてやめた。


ルルが草原についてきてくれるだけで、なんだか毎日が少し楽しいのだから。


(第6話 終わり)


---


**【ガチャ記録】第6話まで**


ガチャを授かってから 10日目 / ガチャLv.1


回した回数:3回


今回出たもの

- 魔石ガチャ:【N】スキル「小石投げ」(重複で小石投げ+1に)


これまでに出たもの

- 特別枠【祝福の一回】:【N】子猫(ルル)

- スキル:小石投げ+1

- そのほか:【N】革の小物袋


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