↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレと言われたガチャスキル、猫と一緒に毎日回してます 〜孤児院育ちの少年は、魔石を一つずつ集めて少しずつ強くなる〜  作者: はわわわわ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/24

# 第5話 薬草百五十本と、スライムと、二回目のガチャ

# 第5話 薬草百五十本と、スライムと、二回目のガチャ


南の草原は、ルーヴェンの町の門を出て、ゆるやかな坂を下った先に広がっている。


膝くらいまでの草が、風に吹かれて波のように揺れていた。ところどころに白い小さな花が咲いていて、遠くには森の黒い縁が見える。


「青葉草は、葉っぱの裏が少し青く光ってるのが目印だ」


ガルドさんが、草の中から一本を引き抜いて見せてくれた。細長い葉っぱの裏側が、確かにうっすらと青みがかっている。


「根っこは残せ。そうすれば、また生えてくる。全部抜いたら、来年の見習いが困る」


「はい」


「それから、森の方には近づくな。草原の端の、あの石の列が境目だ。あそこから先は、お前らにはまだ早い」


ガルドさんが指さした先には、膝の高さくらいの石が点々と並んでいた。


「分かりました」


「よし。始めろ。俺はそこにいる」


「あの、ガルドさん」


岩の方へ歩き出したガルドさんを、俺は思わず呼び止めた。


「毎日ついてきてもらって、いいんですか。ガルドさんにも、自分のお仕事があるんじゃ」


ガルドさんは振り向いて、少しだけ眉を上げた。


「これが俺の仕事だ。ギルドから金ももらってる」


それから、草原の向こうの、森の黒い縁に目をやった。


「……それにな。見習いを草原に放り出して、何かあってからじゃ遅い。そういうのは、もう見たくない」


最後の一言は、ほとんど独り言みたいに小さな声だった。


聞き返す前に、ガルドさんは背を向けて、少し離れた岩に腰を下ろした。腕を組んで目を閉じる。寝ているようにも見えるけれど、たぶん、ちゃんと見てくれているのだと思う。


---


薬草採取は、思っていたよりずっと大変だった。


青葉草は、似たような普通の草に混じって生えている。葉っぱの裏を一本ずつ確かめないと見分けがつかない。しゃがんで、探して、裏返して、違って、また探す。


一時間もすると、腰が痛くなってきた。


「レン……俺、まだ六本……」


少し離れたところで、トーマが草の中に埋もれていた。


「俺は九本」


「なんでそんなに早いんだよ」


「生えてる場所に、なんとなく決まりがある気がするんだ。日当たりがよくて、ちょっと土が湿ってるところ」


前世で、ゲームの素材集めの効率を考えるのが好きだった。その癖が、こんなところで役に立つとは思わなかった。


ルルはというと、最初は俺の足元にくっついていたのに、そのうち蝶々を追いかけて草の中を跳ね回り始めた。白い毛玉が、草の波の間からぴょこぴょこと見え隠れしている。


「ルル、あんまり遠くに行くなよ」


「るる!」


返事だけはいい。


結局、一日目に集められたのは、二人合わせて七束だった。銅貨十四枚。


ギルドでリゼさんに薬草を渡すと、「初日で七束なんてすごいじゃない」と褒めてくれた。


帰り道、トーマが自分の取り分の銅貨七枚を、俺の手に押しつけてきた。


「これ、レンのガチャに使えよ」


「え、だめだよ。トーマが稼いだんだから」


「いいって。俺はまだ欲しいもんないし」


「だったら、院長先生に渡しなよ。薪代とか、きっと助かるから」


トーマは少し考えて、「それもそうだな」とうなずいた。


「じゃあ俺の分は院長先生な。レンの分はガチャ。それで、ガチャですげえのが出たら、俺にも見せてくれよ」


「うん。約束する」


---


二日目は九束。三日目は十一束。


だんだんコツがつかめてきて、トーマも青葉草を見つけるのが早くなった。ルルは三日目になると、なぜか青葉草の群生している場所の近くで丸くなって昼寝をするようになった。偶然かもしれないけれど、ルルが寝ている場所の周りを探すと、たいてい青葉草が見つかった。


「ルル、もしかして分かってる?」


「……るる」


ルルは片目だけ開けて、またすぐに閉じた。


---


この三日間、薬草を摘むのは午前中だけだった。


お昼を食べ終わると、ガルドさんの「授業」が始まる。


「魔物と戦う前に、覚えることがある」


最初の日、ガルドさんは草の上にあぐらをかいて、そう言った。


一つ目は、逃げ方だった。


「背中を見せて走るな。魔物は、逃げるものを追う。相手を見たまま、後ろに下がれ。仲間がいるなら、声をかけ合って下がれ」


俺とトーマは、ガルドさんを魔物に見立てて、何度も「後ろに下がる」練習をした。ガルドさんが一歩踏み出すたびに、二人で一歩下がる。簡単そうに見えて、草に足を取られて転びそうになる。トーマは三回、本当に転んだ。


二つ目は、手当ての仕方だった。


「青葉草は、なぜ傷薬になると思う」


「えっと……傷に効くから?」


「そうだ。だから、摘んだ青葉草は、自分たちでも使える」


ガルドさんは、青葉草の葉を手のひらでもみつぶして、緑色の汁を出して見せた。


「怪我をしたら、まず水で洗う。それから、これを当てて布で縛る。町に戻るまでの間に合わせだが、何もしないよりずっといい」


俺たちは、自分の腕に青葉草の汁を塗って、布の巻き方を練習した。ひんやりして、少し草の匂いがした。


三つ目は、草原の魔物の話だった。


角ウサギは、驚くとまっすぐ突っ込んでくる。横に避ければいい。草原オオカミは、見たらすぐに町へ戻る。見習いが相手をしていい魔物じゃない。そして、スライム。


「スライムは、動きは遅い。だが、体に触れると肌がただれる。素手で触るな」


ガルドさんは、小枝で地面に丸を描いて、その真ん中に小さな点を打った。


「体の真ん中に、核がある。スライムは、核を割らないと死なん。核以外をいくら斬っても、すぐにくっつく」


それから、トーマには木剣の素振りを、俺には走り込みをさせた。


「お前は剣術のスキルがないなら、まず足だ。動けないやつから倒れる」


夕方には、二人とも足がぱんぱんになっていた。


帰り道、トーマが「冒険者って、思ってたより地味だな」とぼやいた。


でも、その声は、少しも嫌そうじゃなかった。


---


そして四日目の朝。


「今日は、スライムをやる」


ガルドさんが、草原の入り口でそう言った。


---


スライムは、草原の低いところにある水たまりの周りによくいるらしい。


ガルドさんについて行くと、草の間に、ぷるぷるとした半透明の塊がいくつか見えた。大きさは、ちょうどスイカくらい。薄い緑色で、体の真ん中に、ビー玉くらいの濃い色の玉が浮かんでいる。


地面に描いてもらった丸と点が、そのまま目の前に浮かんでいるみたいだった。


「教えたことを覚えているな」


ガルドさんが低い声で言う。


「はい。素手で触らない。核を割る。危なくなったら、目を離さずに下がる」


「よし」


「核を、狙えばいいんですね」


トーマが、腰の木剣を握りしめた。孤児院の物置にあった、古い練習用の剣だ。


「やってみろ。危なくなったら止める」


「はい!」


トーマはスライムに向かって駆け出した。剣術のスキルのおかげか、構えはさまになっている。踏み込んで、横なぎに一閃。


木剣が、ぶよん、とスライムの体にめり込んだ。


そして、そのまま跳ね返された。


「うわっ!?」


トーマが尻もちをつく。スライムはぷるんと揺れただけで、何事もなかったように元の形に戻った。


「核に届いていない。刃が体の表面で滑っている」


ガルドさんが淡々と言った。


「スライムの体は、表面が一番硬い。斬るんじゃない、突け。核までまっすぐにだ」


「突く……!」


トーマは立ち上がって、もう一度構えた。今度は剣先をまっすぐスライムに向けて、体ごと突き出す。


ずぶり、と木剣が半透明の体に沈んだ。剣先が、核の端をかすめる。


ぴしっ。


小さな音がして、核にひびが入った。スライムの体がぐにゃりと崩れ、ただの水たまりみたいに草の上に広がっていく。


崩れた体の中に、割れた核のかけらが散らばっていた。そのかけらの間に、青い小さな石が一つ、ころんと転がっている。


「やった!」


「魔石だ……!」


思わず駆け寄って拾い上げる。親指の先くらいの、青みがかった石。ベルンさんの店で買ったのと同じ、小魔石だ。


「スライムの核は、卵の殻みたいなもんだ」


ガルドさんが、後ろから割れたかけらを拾い上げて見せてくれた。薄くて、もろくて、指で押すとぱりっと崩れる。


「三匹に一匹くらい、この殻の中で魔石が育っている。核が割れれば、スライムは死ぬ。だが魔石は殻よりずっと硬いから、割れずに中から出てくる」


「じゃあ、核を割らないと、魔石も取れないんですね」


「そういうことだ。中身があるかどうかは、割ってみるまで分からん」


割ってみるまで、分からない。


なんだか、ガチャみたいだと思った。


ガルドさんが後ろから言った。


「今日はあと何匹かやるぞ。レン、お前もやってみろ」


「はい」


俺も、トーマに借りた木剣で挑戦した。


でも、これが難しかった。剣術のスキルがない俺の突きは、どうしても狙いがぶれる。核に届く前に剣先が逸れて、何度もスライムの体の表面を滑った。


トーマの突きも、いつも決まるわけではなかった。


スライムは、剣が刺さると、体の中で核をするりと横へ逃がすのだ。剣先が届く寸前で核がずれて、空振りになる。トーマが剣を引き抜くと、穴はすぐにふさがって、また最初からやり直しだった。


「くそっ、また逃げた!」


トーマは汗だくになって、何度も突き直していた。


結局、その日にトーマが倒したのは、二十回以上突いた末の五匹。俺が倒したのは一匹だけ。手に入った魔石は二個だった。


---


夕方、ベルンさんの店に寄った。


三日間の薬草の取り分と最初の残りを合わせて、銅貨は二十九枚になっていた。小魔石を八個買うと、五枚残った。


スライムの魔石二個と合わせて、十個。


「今度は何が出るのかねえ」


ベルンさんが、カウンターの向こうから楽しそうに身を乗り出す。この前ルルのことを話したら、すっかりガチャのことが気になっているらしい。


「店の中ではやるなって言いましたよね」


「爆発しないんだろう? 猫が出るくらいなら構わんよ」


ということで、今回はベルンさんの店で回すことになった。トーマとベルンさんが、左右から俺の手元をのぞき込む。カウンターの上では、ルルがお行儀よく座っていた。


――ガチャ。


光る画面に、魔石を一つずつ入れていく。


> 所持魔石:10個

> **ガチャを回しますか?** [はい] [いいえ]


[はい]。


カプセルが回る。光の粒が渦を巻いて、ころん、と一つ転がり出た。


色は、また白。


> **【N】 革の小物袋**


手の中に、手のひらより少し大きいくらいの、茶色い革の袋が現れた。口を紐できゅっと締められるようになっていて、腰のベルトに下げるための輪っかもついている。


> **【N】革の小物袋**

> 腰に下げられる、小さな革の袋。

> 小石なら、たくさん入る。


「……袋」


「袋だな」


トーマが、ちょっと気まずそうに言った。ベルンさんは「まあ、袋は便利だぞ」と、なぐさめるように笑っている。


正直に言えば、がっかりした。四日間、腰を痛めて薬草を摘んで、スライムと戦って、やっと回した二回目が、袋。


小石なら、たくさん入る。


説明文の最後の一行を、もう一度読む。


なんで、わざわざ小石なんだろう。


そう思ったとき、頭の中で、何かがかちりと噛み合った気がした。


小石投げ。小石を、狙った方向にまっすぐ投げられる。それだけ。


――小石なら、たくさん入る。


俺は、自分の右手を見下ろした。


今日、スライムの前で、俺は何度も木剣の狙いを外した。核まであと少しなのに、剣先がぶれて届かなかった。トーマの突きも、核にするりと逃げられてばかりだった。


でも、俺には、狙ったところにまっすぐ当てられるスキルがある。柿の木のこぶに、こつんと当てるだけだと思っていたスキルが。


スライムの核は、ビー玉くらいの大きさだった。柿の木のこぶより、ずっと小さい。でも、狙えないほどじゃない。


「……レン?」


トーマが、俺の顔をのぞき込んだ。


「お前、なんか悪い顔してるぞ」


「悪い顔はしてないよ」


たぶん、前世でガチャの外れキャラの使い道を思いついたときと、同じ顔をしているだけだ。


カウンターの上で、ルルが「るる」と鳴いた。まるで「やってみれば?」と言っているみたいだった。


「トーマ。明日、ちょっと試したいことがあるんだ」


(第5話 終わり)


---


**【ガチャ記録】第5話まで**


ガチャを授かってから 7日目 / ガチャLv.1


回した回数:2回


今回出たもの

- 魔石ガチャ:【N】革の小物袋


これまでに出たもの

- 特別枠【祝福の一回】:【N】子猫(ルル)

- スキル:小石投げ

- そのほか:【N】革の小物袋


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。