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ハズレと言われたガチャスキル、猫と一緒に毎日回してます 〜孤児院育ちの少年は、魔石を一つずつ集めて少しずつ強くなる〜  作者: はわわわわ


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第24話 森が動いた日

第24話 森が動いた日


知らせが来たのは、森から戻って六日目の昼だった。


ギルドの鐘が、町じゅうに響いた。


かん、かん、かん、かん。


四つ続けて打つのは、「全員集まれ」の合図だ。見習いになったばかりのころ、リゼさんに教わった。でも、実際に聞くのは初めてだった。


ギルドの前の広場には、もう大勢の人が集まっていた。冒険者たち。衛兵さんたち。石工の親方や、鍛冶屋のおじさんまでいる。


台の上に、ハロルドさんが立った。


「草原の見張りから、知らせが来た」


広場が、しんと静まり返った。


「森の外れに、魔物の群れが出てきている。数は、数百。ゆっくりだが、まっすぐこっちに向かっている。早ければ、明日の夕方には、門の前に着く」


誰かが、息をのむ音が聞こえた。


「王都の騎士団が着くのは、早くて四日後の朝だ。それまで、門を守る」


ハロルドさんは、広場を見渡した。


「十五年前、この町は、三日間、門を守り抜いた。今度は、あのときよりも準備ができている。森の奥まで行って、群れの居場所と、通り道を調べてきた者たちがいるからだ」


ハロルドさんの目が、一瞬だけ、俺の方を向いた気がした。


「群れが着いてから、三日。三日、持ちこたえればいい。力を貸してくれ」


◇ ◇ ◇


それから夕方までは、あっという間だった。


町の外に住む人たちが、荷物を抱えて門の中に入ってきた。畑の野菜も、鶏も、牛も、全部一緒だ。


小さい子どもたちと、お年寄りは、教会に集まることになった。石造りの、町で一番頑丈な建物だ。


ひだまりの家の子どもたちも、教会に移ることになった。


「レンにいちゃん、ルルも来るの?」


ミリィが、俺の服の裾をつかんで、聞いてきた。


「ルルは、俺と一緒に、門のところに行くんだ」


「……あぶないの?」


ミリィの目が、うるんでいた。ポポも、隣で唇を噛んでいる。


俺は、しゃがんで、二人の目の高さに合わせた。


「ルルは、危ないものがすぐ分かるんだ。だから、ルルがいたら、みんな早めに逃げられる。ルルは、町のみんなを守る、大事なお仕事があるんだよ」


「ルル、えらいね」


ミリィが、俺のフードの中のルルを、そっとなでた。ルルは、目を細めて、ミリィの指に額をこすりつけた。


「ちゃんと、帰ってきてね。ルルも、レンにいちゃんも、トーマにいちゃんも」


「うん。約束する」


院長先生は、子どもたちを連れて教会に向かう前に、俺とトーマを、もう一度だけ抱きしめた。


何も言わなかった。


でも、言いたいことは、ちゃんと伝わった。


◇ ◇ ◇


ひだまりの家を出る前に、俺は、ガチャで出たものを、全部広げてみた。


この百日あまりで、少しずつ増えていったもの。


包帯は、ガルドさんの手当てでほとんど使ってしまった。それでも、まだ二つ残っている。手ぬぐいも何枚かある。丈夫な縄。ろうそく。石けん。堅焼きパンの大箱は、半分くらい残っていた。


全部、ギルドの詰所に持っていくことにした。


「これ、使ってください」


詰所の机に、どさりと並べると、リゼさんが目を丸くした。


「レンくん、これ……全部、ガチャで?」


「毎朝の、無料のやつです。包帯とか、手ぬぐいとか、そういうのばっかりですけど」


リゼさんは、包帯を一つ手に取って、しばらく黙っていた。


それから、ふわりと笑った。


「そういうのが、一番足りなくなるのよ。ありがとう。大事に使わせてもらうわね」


堅焼きパンは、壁の上で夜通し見張りをする人たちに配られることになった。固くて、日持ちがして、腹にたまる。こういうときのためにあるようなパンだ、と、詰所の衛兵さんが言った。


◇ ◇ ◇


配置が決まった。


トーマは、ボリスさんと一緒に、門の内側で盾を構える。若い冒険者たちと並んで、もし門が破られたときに、最初に受け止める役だ。


ダンさんは、壁の上に石や矢を運ぶ係。ニコさんは、弓の使える人たちと一緒に、壁の上。


そして、俺は。


「レンは、壁の上だ」


ハロルドさんが言った。


「門の真上の、見張り台の横。ニコと一緒に、投石紐で、壁に取りつこうとする小さいやつらを落としてくれ。それと、その猫だ」


ハロルドさんは、俺のフードのルルを見た。


「群れの中に、特に大きなやつや、おかしな動きをするやつがいたら、すぐに知らせてほしい。その猫なら、分かるだろう」


「……はい」


「無理はするな。大きいやつは、オスカーたちと、大人の冒険者が相手をする。君は、自分の届く距離で、自分にできることをすればいい」


自分にできることを。


ガルドさんに言われたのと、同じ言葉だった。


◇ ◇ ◇


夕方、壁の上に上がると、そこには、思いがけない人がいた。


ガルドさんだった。


左の肩から胸まで、包帯でぐるぐる巻きのまま、見張り台の横に、木の椅子を置いて座っていた。剣は、膝の上に置いてある。


「ガルドさん! まだ寝てないとだめって、神官様が……」


「寝ていられるか」


ガルドさんは、いつもの怖い顔で言った。


「剣は振れん。だが、目と口は使える。見習いどもに、どこを狙えばいいか教えるくらいはできる」


それから、ちらりと俺を見た。


「それに、お前らを見張っておかんと、また無茶をするだろう」


隣で、ニコさんが小さく吹き出した。


俺も、つられて、少しだけ笑った。


笑ったのは、森から帰ってきて、初めてだったかもしれない。


◇ ◇ ◇


その夜は、壁の上で過ごした。


見張りは交代でやることになっていた。俺とニコさんの番は、夜明け前。それまでは、壁の内側の、詰所の床で毛布にくるまって眠ることになった。


眠れるか心配だったけれど、横になったとたん、すとんと眠りに落ちた。


フードから出てきたルルが、俺の胸の上で丸くなった。その重さと温かさが、いつもと同じだったからかもしれない。


◇ ◇ ◇


夜明け前に起こされて、壁の上に立った。


空気が、冷たかった。吐く息が、白い。夏はもう、とっくに終わっていた。


東の空が、少しずつ明るくなっていく。


草原が、薄い光の中に浮かび上がってきた。見慣れた草原だ。毎日のように、薬草を摘みに来た場所。トーマと二人で、スライムを追いかけた場所。投石紐の練習をした、北側の丘。


その、ずっと向こう。


森の黒い縁が、見えた。


「……静かだね」


隣で、ニコさんがつぶやいた。


「うん」


鳥の声が、しなかった。


森で聞いた、あの静けさと同じだった。


◇ ◇ ◇


その日の昼が過ぎて、日が傾き始めたころだった。早ければ明日の夕方、と言われた、その「明日」だった。


ルルが、フードの中で、ぴたりと動きを止めた。


耳が、前に向かってぴんと立つ。首筋の毛が、ゆっくりと逆立っていく。


尻尾が、たわしのようにふくらんだ。


背中の毛も。


全身の毛が、全部。


ルルが、俺の肩の上に乗り出して、森の方をじっと見つめた。小さな体が、小刻みに震えていた。


「ガルドさん」


声が、かすれた。


「来ます」


ガルドさんが、椅子から立ち上がった。


見張り台の上の衛兵さんが、角笛を吹いた。低い、長い音が、町じゅうに響き渡った。


森の縁が、揺れた。


最初は、風で木が揺れているのかと思った。でも、違った。


森の縁から、黒い染みのようなものが、じわじわと草原ににじみ出してきた。


染みは、どんどん広がっていった。


右へ。左へ。


草原の、端から端まで。


それは、魔物の群れだった。


灰色のオオカミの背中。茶色のイノシシの背中。牙トカゲの、ぬらりとした鱗。空には、洞窟コウモリの黒い影が、雲のように渦を巻いていた。


窪地で見たときよりも、ずっと多い。


そして、群れの真ん中に、ひときわ大きな影があった。


熊のような形をしていた。でも、熊よりも、ずっと大きい。家ほどもある体が、のそりのそりと、草原を進んでくる。


その背中から、何か黒いものが突き出していた。


ぬらりと光る、黒い、尖った塊。いくつも、いくつも。まるで、背中から黒い柱が生えているみたいに。


そして、その黒い塊が、どくん、どくんと、赤黒く脈打っていた。


窪地の、あの柱と、同じ光だった。


「……あいつが、頭だ」


ガルドさんが、低い声で言った。


「沢で群れを率いていたオオカミも、胸に同じ光を持っていた。あの光を砕いたとたん、群れはばらばらになった。……見ろ。周りのやつらは、全部、あいつに歩調を合わせている」


言われてみれば、そうだった。オオカミも、イノシシも、牙トカゲも、種類の違う魔物たちが、あの大きな影を中心に、同じ速さで進んでくる。あれが止まれば、群れも止まる。そんなふうに見えた。


壁の上の誰もが、言葉を失っていた。


フードの中で、ルルが、小さく唸った。


俺は、腰の投石紐を握りしめた。


指が、震えていた。


でも、もう、一人じゃなかった。


隣には、ニコさんがいる。後ろには、ガルドさんがいる。門の下には、トーマとボリスさんがいる。壁の上にも、下にも、町じゅうの人たちがいる。


そして、俺の肩には、ルルがいる。


ガチャの画面の端には、「99」の数字。


百回目は、まだ取ってある。


(第24話 終わり)


――――――――――――


【ガチャ記録】第24話まで


ガチャを授かってから 115日目 / ガチャLv.4


回した回数:合計99回(無料83回・魔石16回) ※99回で止めて、100回目は取ってある


今回出たもの:なし


これまでに出たもの

・特別枠【祝福の一回】:【N】子猫(ルル)


・スキル:【N】小石投げ+2、【N】方向感覚、【N】生活魔法:着火(少し上達)


・装備・冒険の道具:【SR】風読みの投石紐、【R】革の小盾(トーマに)、【R】丈夫な雨合羽、【R】丈夫な革の胸当て(レンが着用)、【N】砥石(トーマに)、【N】革の小物袋、【N】丈夫な縄、【N】丈夫な靴ひも、【N】革の手袋(投石紐の練習用に)、【N】革の水筒


・食べ物:【R】大きな燻製ハム(孤児院の晩ごはんに)、【R】干し果物の詰め合わせ(ダンとニコにも)、【R】堅焼きパン(大箱)、【N】じゃがいも(一袋)、【N】乾燥豆(一袋)×4、【N】干しいも×3、【N】小麦粉(小袋)×2、【N】乾燥ハーブ×2、【N】塩一袋×7


・レシピ・本:【N】レシピ「じゃがいももち」(院長先生に)、【N】レシピ「はちみつケーキ」、【N】生活魔法の入門書(着火が少し上達)


・手当て・身の回り:【N】包帯×8、【N】手ぬぐい×6、【N】石けん×5


・布・裁縫:【R】厚手の毛布(孤児院に)、【R】大きな布地(院長先生が子どもたちの服に)、【N】縫い針と糸×5、【N】ボタン一袋×3、【N】革ひも×2、【N】指ぬき


・台所・家の道具:【N】木のスプーン×2、【N】釘一袋、【N】木の器×2、【N】鉄の鍋(孤児院に)


・紙・灯り:【N】紙の束×7(地図の下書きに)、【N】炭の棒×6、【N】ろうそく十本


・庭:【N】青葉草の種(孤児院の庭に)、【N】青葉草の束(ダンの家に)


・おもちゃ・ルルの宝物:【N】猫じゃらし(ルルの宝物)、【N】毛糸玉×2(ルルの宝物)、【N】木のコマ(小さい子たちに)、【N】ビー玉一袋(小さい子たちに)


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