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異世界で悪役令嬢のメイドになったので、AIと一緒にお屋敷改革いたします。  作者: TOM


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最初のお仕事⑦ 初めての達成

◆初めての達成


――倒れてから4日目の朝、私は前日とはまるで別人のように全快した。


 体が軽い。息を吸うと胸の奥まで空気が届く。


〈ミツキ、元気になってよかったねぇ〉


「うん、ありがとう。アルバートさんにも挨拶しなきゃ」


 そう言って、部屋を出ると、ちょうどアルバートさんと鉢合わせた。


「ミツキ殿。体調はもうよろしいのですかな?」


「はい。ご迷惑をおかけしました」


「謝罪は不要です。ご回復されたのなら何よりです」


「はい……。あの、ありがとうございました」


 アルバートさんがいつもの穏やかな目で微笑む。


「これからもよろしくお願いいたします。

 床のコーティングはリリアナ様もお気に召しているようです」


 えっ……。そうなのっ……!!


 私は真偽を問うようにアルバートさんを見た。


「リリアナ様は綺麗好きですから」


 アルバートさんが当然のように言った。


「わかりました!がんばります!」


 アルバートさんはもう一度微笑み、自室へ戻っていった。

 

 リリアナ様も気に入ってくれていたんだ。

 そんな風には見えなかったのに……。


〈ミツキ、よかったねぇ〉


「うん!」


 休養中に失いかけていた、やる気が一気に戻ってきた。


「よーし! やるぞー!」


 

――それから私は、自分の体調にも気を付けながら、毎日コツコツと作業を続けた。


――それから1か月が経った。


「やったー!!」


〈やったね、ミツキ〉


 私はついにすべてのコーティング作業を終えた。


 あまりに地道で何度も心が折れかけた。

 それでも毎回ソルが励ましてくれて、何とか持ちこたえることができた。


「ミツキ殿。お見事です」


「アルバートさん! ありがとうございました!」


 途中から、アルバートさんが手すきのときに手伝ってくれるようになった。


 最初は忙しい彼のことを思って断ったが、

 手の空いたときだけということで押し切られてしまった。 


 アルバートさんは恐ろしいほど手際が良く、

 私が5日はかかるであろう範囲を一晩で済ませてくれた。


「アルバートさんが手伝ってくれていなかったら、

 あと1か月はかかっていたと思います」


「そんな。私はミツキ殿のやる気に後押しされたにすぎません」


 いつもの優しい穏やかな目。

 これまでのことを思い返すと涙がこぼれそうになった。


「それにしても、生まれ変わったようですな」


 そういって彼は大広間を見渡した。

 大広間の床は見違えるように輝いていた。


 私は誇らしい気持ちになった。


 階段のコーティングが終わってからは、廊下、食堂、大広間の順で作業を行ってきた。


 厨房はガストンさんが深夜に使用することもあって、作業できる日に優先的に進めた。


「辺境伯がお戻りになられたらさぞ驚かれることでしょう」


 辺境伯……。 どんな人なんだろう……。


 以前聞いたときは、慈悲深く聡明な方と言っていたけど……。

 リリアナ様の顔がちらついて、うまくイメージできない。

 

 辺境伯についてもう一度聞いてみようかと考えていると、

 あのヒールの音が大広間に響いた。


 入口に目をやると、リリアナ様が立っていた。


 私は身構えながらも少し期待した。

 もしかしたら、なにかお褒めの言葉をいただけるかもしれない。


 しかし、彼女は少しの沈黙の後、私とアルバートさんを一瞥し、去っていった。

 その背中からは感情を読み取れなかった。


 私はがっかりとも安堵とも言えない微妙な気持ちになった。


 私の気持ちを察したのか、アルバートさんが言った。


「リリアナ様もお喜びです」


 本当に? この気持ちも顔に出ていたのか、アルバートさんが続けた。


「婚約破棄の件があってから、リリアナ様は塞ぎがちになってしまわれました。

 以前から、自分にも周りにもお厳しい方でしたが、時折笑顔を見せることもございました」


 リリアナ様が笑顔……。想像がつかない。


「王弟のもとで何があったのか……。


 王弟は ”高慢な態度に嫌気がさした” と、おっしゃられたようですが、

 私にはリリアナ様がそのような態度をとったとは思えませぬ。


 リリアナ様は、勤勉でご自分の立場や役割をしっかりと理解しておられました。

 それになにより、リリアナ様は、アルセリア家、アルセリア領をとても愛しておられました。


 そんなお方が、なぜ婚約破棄されるような事態に……。


 この屋敷にいるものの多くは私と同じ考えでしょう。

 辺境伯と、リリアナ様の兄アレクシス様も同様です。


 このお屋敷に、リリアナ様を責めるものはおりませぬ」


 そうだったんだ……。

 少し意外な気もするが、腑に落ちる部分もある。


「すみませぬ。少々、熱がこもってしまいましたな」


「いえ、聞けて良かったです」


 アルバートさんはいつもと同じ穏やかな目で微笑んだ。



――コーティングが終わってから、私の1日はとても快適になった。


 朝起きてから、日が沈む前に、一連の仕事が終わる。


 それからは、気になったところの拭き掃除や洗濯をして、夜はぐっすり眠った。


 この屋敷では、使用人は自分の物を自分で洗い、リリアナ様の物はアルバートさんが洗っていた。


 アルバートさんの負担を少しでも肩代わりできないかと思っていた私は、できることはやらせてほしいといったが、今のところ音沙汰がない。


 高貴な方の所有物を、末端の使用人には任せられないということだろうか。

 そう考えると私も自信がない。万が一、傷でもつけたらどれだけ怒られるだろう……。


「ミツキ殿」

 

 廊下の窓ふきを始めていた私にアルバートさんが声をかけた。


「実は、大変なことになりまして…… 」


「何でしょう! お力になれることでしたらなんでもいたします!」


「そう言っていただけると幸いなのですが……。

 いや、実は、ガストン殿が腰を痛められましてな」


「えっ……」


 背筋に緊張が走った。


「これからは厨房も手伝っていただきたいのです」


 ……あの地獄のような厨房を……?


「あのっ、私一人ですか……?」


「私もできる限り伺いたいとは思っているのですが……」


「いえっ……! 大丈夫ですっ……!」


 私は見栄を張った。


〈ミツキ、本当に大丈夫?〉


 ソルは黙ってて!


――こうして、私のブラックお屋敷ライフは第2章に突入する――



お読みいただきありがとうございます!

素人のつたない文章ですが、ここまで読んでいただけたこと、深く感謝いたします。

第2章ではさらにミツキの成長とソルの活躍を描ければと思っています。

読んでいただいた方に楽しんでもらえるよう励んでまいりますので、

これからもどうぞよろしくお願いいたします!

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