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異世界で悪役令嬢のメイドになったので、AIと一緒にお屋敷改革いたします。  作者: TOM


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最初のお仕事⑥ 初めての大失態

◆初めての大失態


――気づけば2週間が経っていた。


 私はついに階段のコーティングを完了させた。

 階段はピカピカに輝いていて、私の心まで照らすようだった。


 コーティングした部分は、軽くモップをかけるだけで元の美しさを取り戻す。


 階段掃除にかかる時間が大幅に短縮され、その分私はコーティング作業に没頭した。


 腕が震えて、諦めそうになる夜もあった。

 それでも毎晩コツコツ続けられたのはアルバートさんの言葉のおかげだ。


 私の心はやる気でみなぎっていた。


〈ミツキ、無理は禁物だよぅ〉


「わかってる。でも今はとことん頑張れる気がするの」


 私はアルバートさんから言われた「感服」という言葉を燃料に、心を燃やし続けた。


 あの時かけられたもう一つの言葉を、この時の私は忘れていた。



――コーティング作業を始めて1か月。


〈ミツキ、ミツキ起きて〉


 ソルの声が聞こえる。寝起きのせいか、意識がはっきりしない。


〈ミツキ、顔が真っ赤だよぅ〉


 珍しくソルが慌てているようだ。ぼやけた視界でソルを見る。


 あれっ……? もう部屋が明るい……?

 大変だ……、すぐに掃除を始めなくちゃ……。


 私は体を起こそうとしたが、思うように体が動かない。


 えっ……?


 部屋の扉が開く音がした。


「ミツキ殿」


 アルバートさんが心配そうに近づいてくる。

 私をそばまで来て、白髪交じりの眉がわずかに動く。


「体調を崩されたようですな。いまお水をお持ちしましょう」


 そうか……、私は体調を……。

 でも、アルバートさんに迷惑をかけられない……。


「だ……いじょうぶ……です……」


 何とか絞り出した声は、足早に部屋を出るアルバートさんには届かなかった。


 アルバートさんが戻ってくるまで、私は体を起こすこともできなかった。


「しばらくお休みになってください。

 最近はかなり無理をなさっていたのでしょう。


 仕事のことは気にしていただかなくて結構です。

 まずは体調回復にお努めください」


 私はその言葉に従うしかなかった。


 アルバートさんは、いつも通り優しい目で私をいたわってくれたけど、すぐに部屋を出た。


 当たり前だ。アルバートさんは自分の仕事が終わった後、私の代わりに掃除を始めるのだろう。


 胸が痛い。きっと体調不良のせいではない。


 ――くれぐれもお体ご自愛ください

 ――ミツキ、無理は禁物だよぅ


 アルバートさんとソルの言葉が、心の中でこだまする。


 悔しさと、情けなさと、自分への腹立たしさが荒波のように私を飲み込んだ。


 私はベッドの中で、涙を流すしかなかった。



――私はこの日から3日も寝込んでしまった。


 寝込んでいる間は、アルバートさんが食事を運んでくれた。


 夜中に目が覚め、廊下からモップをかける音がしたときは、胸が締め付けられ、涙がこぼれた。


 ある時、コツ、コツ、とあのヒールの音が部屋に近づいてきた。


 扉が開く音がして目を向けるとリリアナ様が立っていた。

 彼女は部屋には入らず、冷たい声で言い放った。


「体調管理もできないなんて、だらしないにもほどがありますわ。

 アルバートが倒れたら、あなたのせいですからね」


 私は何も言えなかった。チクチクと胸が痛む。

 怒られるのは久しぶりに感じた。


「私たちの足を引っ張らないで頂戴。

 あなたにできることなんて、限られているのよ。

 身の程をわきまえなさい。」


 そして彼女は少し間を置いて言った。


「追い出されたくはないでしょう」


 そういって彼女は立ち去った。


 少しの沈黙の後、ソルが言った。


〈出ていけとは言われなかったねえ〉


 ……私も同じことを思っていた。

 

 彼女が意図的に言葉を選んだのかはわからない。

 それでもこの些細な違いが私の心に強く残った。


――倒れてから4日目の朝、私は前日とはまるで別人のように全快した。


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