最初のお仕事④ 初めての成功
◆初めての成功
「ミツキ殿。……ミツキ殿、起きてください」
肩を軽く揺すられ、私は目を開けた。
「あっ……」
私は事態をすぐに理解した。
部屋が明るい。すでに日が昇っている。
「すみません!」
「いえ、大丈夫ですよ。昨夜も無理をされたのでしょう」
アルバートさんが心配そうにこちらを見つめている。
優しい。痛いくらいに……。
「いえ……、ご迷惑をおかけしてすみません」
そういいながら私は、アルバートさんの後ろに嫌なシルエットを発見した。
青い瞳がこちらを睨んでいる。リリアナ様だ。
ううっ……、また怒られる……。
そう思ったが、彼女は何も言わずに立ち去った。
その横顔は、どこかいつもと違うように見えた。
アルバートさんも、無理はなさらず、と言い残し、部屋を出ていった。
やってしまった。せっかくいい調子だったのに寝坊するなんて……。
それにしてもリリアナ様の様子がおかしいような……。
〈コーティングで名誉挽回だねぇ〉
ひえっ……。突然ソルが言った。
そうだ、コーティング! 早速試さなきゃ!
〈でも、まずはいつもの仕事を終わらせなきゃねぇ〉
わかってる!
――その日はいつもより寝たおかげか、希望があったおかげか、今までで一番早く仕事を終えることができた。
私は、昨日作ったコーティング剤を小瓶に移し、廊下の片隅へ向かった。
「ここなら……誰にも見られないよね」
ソルが胸元からひょこっと顔を出す。
〈ミツキ、まずは少量で試すんだよぉ〉
「うん……」
私は布にコーティング剤を少しだけつけ、床の一角をそっと磨いた。
すると――。
「……えっ」
床が、光った。
昨日までくすんでいた木目が、息を吹き返したかのように輝いている。
〈ほらねぇ。大成功だよ〉
「すごい……!」
胸がじんわり熱くなる。
これなら、リリアナ様も喜んでくれるだろう。
あの重いモップを一生懸命こすりつける必要もなくなるはずだ。
そう思い、一直線の廊下を見て、私は気づいた。
「えっ……。これを全部やるの……?」
胸がすうっと冷たくなる。
〈もちろんそうだよぉ。廊下、階段、大広間、食堂に厨房もねぇ〉
私は事の大変さにいまさら気づいた。
〈君ならできるよ、ミツキ〉
ソルがのんきに言う。
「ソルは、手伝えないくせに……」
〈応援はできるよぉ〉
私は睨むようにソルを見た。
〈がんばれ、ミツキ〉
彼は我関せずという感じで、ぷかぷか浮いている。
私は、可笑しさを溜息でかき消して、両手で顔を覆った。
やってやる……!
どんなに大変でも、自分のためになることだ。
それがアルバートさんやリリアナ様を喜ばせることにつながるかもしれない。
私は気合を入れなおした。
そして、今日のところは眠ることにした。




