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異世界で悪役令嬢のメイドになったので、AIと一緒にお屋敷改革いたします。  作者: TOM


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厨房のお仕事⑤ 買い出し2


〈ミツキ、まっすぐだよぅ〉


「うん! わかってる!」


 石畳の道は、ガストンさんの言う通り、一本道だった。


 それにしても……。


〈ミツキ、急がなきゃ〉


「もうわかっているって!」


 石畳の道は、確かに一本道。 でも丘陵に沿って何度も上下し、うねっていた。

 上り坂を踏みしめるたび、足が徐々に重たくなる。


 お屋敷の掃除で少しは鍛えられたかと思っていたけど、

 それとは違う疲労がたまっていく。


「ちょっと……! 遠すぎじゃない……? ちょっと休ませて……」


 汗が私の頬を伝い、石畳に落ちる。


〈まだ半分くらいだよぅ。このペースなら片道30分くらいかなぁ〉


 30分……。往復で1時間……。


 空はほとんどが白くなり、太陽が昇るのを心待ちにしているようだった。

 休んでいる暇はなさそうだ。


「急がなきゃ……」


 私は気合を入れなおし、重たい足取りで進み続けた。


――


「やっと着いた……」


 私の太ももはもうパンパンだった。


〈魚屋さんは、町の奥、船着き場の近くだよぅ〉


「う、うん」


 淡々と急かしてくるソルに文句を言いたくなったけど、

 今はそんな体力さえ温存したかった。


 太陽がもう顔を出している。


 町に入るとすぐに海の香りがした。

 都会で生まれ育った私は少しだけテンションが上がった。


 その香りに混ざって、何やらいい匂いもした。

 きっとパンを焼くにおいだ。少しおなかがすく。


 私が歩いてきた石畳の道は、町の中をカーブするように伸びていて、

 その両脇に屋台が立ち並んでいる。ここが市場なのだろう。


 町は早朝だというのにすでににぎわっていた。


 ――客引きの活気づいた声。

   朝食を買いに来た夫人。

   荷車を押すおじさん。

   駆け回る子どもたち。


 その賑わいが、私を元気づけた。石畳の道を歩く。


 屋台の裏側には石造りの家が立ち並び、その間にロープが渡され、

 カラフルな小さな旗がいくつもつるされている。


「いらっしゃい! 新鮮な野菜だよ!」

「焼きたてのパンはいかがだい?」

「肉ならうちが一番だ!」


 気持ちのいい声かけが私の胸を高鳴らせる。


〈ミツキ、もうすぐだよぅ〉


 カーブを抜けると一気に視界が広がった。


 海だ。


 朝一番の光を浴びた海がきらきらと輝いている。


〈ミツキ、ここだよぅ〉


 海に気を取られていた私ははっとした。


「いらっしゃい! 今日取れたばかりの魚だ!

 じっくり選んでいきな!」


 そこには笑顔の素敵なふくよかな女性がいた。


 ガストンさんはお婆さんと言っていたけど、すこし若く見える。

 腕まくりをした太い腕は、年齢を感じさせないほど力強い。


「あ……、あの……、バルバラさんですか……?

 私ガストンさんの使いできたんですけど……」


「ん……? お嬢さんがガストンのところの……?」


 彼女は、私をまじまじと見つめた。


「ガストンはどうしたんだい?」


「それが……」


 私は経緯を説明した。


「そうかい。あのガキんちょも年を取ったもんだね」


 バルバラさんは豪快に笑った。


「いやなに、あいつもこの町の出だからね。

 小さいころにはよく面倒を見てやったもんだ!」


 ガストンさんの子どもの頃……。

 興味はあったが、私には時間がなかった。


「あの……、すみません……。私急いでて……」


「おっと、そうよね。リリアナ様の朝食が遅れちゃあいけない」

 

 そういうとバルバラさんは魚を数匹まとめて渡してくれた。


「今日はとりあえずサービスだ!

 次回からはお代をとるからね。たんまりお金を持ってきな!」


「えっ……。そういうわけには……」


「いいんだよ! あんたにやるわけじゃあない。

 それでうまいもん作って、リリアナ様を元気づけておくれ!」


「はっ、はい!」


 私は魚を受け取り、一礼して、足早にその場を後にした。


 元気づけて……、か……。


〈ミツキ、急がなきゃ。 もうあんまり時間がないよぅ〉


「う、うん!」


 私はお屋敷に向けて駆け出した。


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