4話 始動
「さすが均。今日の朝食も旨いな」
「ふふっ、ありがとうございます、兄様」
「……ん? 均、頬に米が付いている。取ってやるから動くな」
「え、あ……もう、自分で取れるのに……」
なんだこの、イケメン&美少年空間。
もし私が少女漫画の取り巻き的存在だったら、鼻血出してぶっ倒れているぞ。
「月英姉様も、沢山食べてくださいね」
そう言いながら、お粥をよそってくれる。
おお、またしても白粥。
それに今日は、シジミのなんか塩辛っぽいのと漬物……ん?
この漬物、もしかして昨日と同じものか?
「昨日の夕食も、魚以外は均が作ったものだ」
いや、まだ何も言ってませんが?
孔明は風を妖術で操ったとあるが、実際は天文学で分かっていただけでハッタリだった、みたいに言われてるけど、本当に妖術使いなんじゃないか?
「お前のころころ変わる表情が分かりやすすぎるだけだ」
……また読まれた。
おのれ孔明!
「あの、月英姉様。昨日はご挨拶できなくてごめんなさい。気分が優れず、ずっと部屋で寝ていました」
「あ、そうだったんですね」
だから昨日会わなかったのか。
それにしても、病弱、ウサギ属性、料理、しかも天真爛漫少年。
どんだけ属性盛ってるんだ。
まあ兄の方も、天才、イケメン、胡散臭い、たぶんというか確実にどSとか、属性盛りもりだが。
「気にするな均。白粥の用意をしてくれていただけでも助かった。このシャオリズも、家に帰って、夕飯の匂いがするまで寝ていたのだからな」
「ふふっ、早速、仲良し夫婦さんですね♪」
「まあな」
「……ノーコメントです」
何を言っても、孔明様の掌の上で転がされる。
せめてもの抵抗として、英語を使ってやる。
まあ、私のチート能力である『言語がなぜか通じる』によって、英語だろうが通じてしまうのだが。
「月英姉様が来てくれて、なんだか賑やかですね」
「村でも、タヌキの妖怪が来たと騒がれているぞ」
「はいはい、どうせ私はシャオリズで……ん?」
よく見ると、均君の皿には殆どおかずがない。
シジミなんて2、3個ぐらいだし。
「均君。それで足りますか? 足りないなら、私のシジミ食べます?」
「あ、いや、その……」
「……均は小食でな。俺の焼いた魚も殆ど食べられない」
「え、それにしては……」
お椀を見る限り、白米のお粥は私たちと同じぐらい食べてるような。
「……白米は大好きなんです」
顔を真っ赤にしながら俯く均君。
……くっ、あざといな!
「……さて月英。昨日の話について、言っておくことがある」
昨日の話?
ああ、水の話か。
まあざっくり言うと、汚い水は危険だから煮沸消毒しろというやつだな。
「お前が気持ちよく寝てる間に、村長に会ってきてな。水の件を伝えたのだが……」
おお、仕事が早い。
そして、「お前が寝てる間に俺は働いてますが?」というアピール。
……お前の属性に、嫌味なヤツを追加してやる。
「ざっくり言うと、鼻で笑われた」
「でしょうね」
まあ当然の結果だろう。
今までの常識が間違っていると言われて、「はいそうですか」となる人などそうそういない。
というか、タヌキの妖怪の話を信じる孔明様の方がおかしいのだ。
いや、信じるというより、面白がっているだけだと思うが。
「さて、信じさせる策が必要になったので、とりあえず100策ほど考えてきた」
そう言いながら、策が書かれている大量の竹簡……紙変わりの竹の板を取り出してくる。
「……一番効果的なものかつ、犠牲も出ないで比較的難易度が低いものだけ教えてください」
「な、なにっ!?」
驚愕する孔明様。
いや、そんなの全部聞けるわけないだろう。
まったく、人に何か教えたがる人間は、どうしてもいつもこうなのか。
マタギのおじいちゃんも、動物の解体方法とかの話がめちゃくちゃ長かったもんな。
「す、凄いです、月英姉様! 兄様の策披露談義は、いつも夕方ぐらいまで続くのに!」
「駄目ですよ均君。こういう輩には、ちゃんと本当のことを言わないと付けあがる一方ですから」
「……では、最良な策を告げる」
お、珍しくバツの悪そうな顔。
初めて優位に立てた気がする。
孔明、敗れたり! なんてね。
「必要なのは『証明すること』だ。それがあれば、誰だろうと信じる」
「でしょうね」
「そう言うということは、当てはあるのか?」
「はい。今から材料を言うので、用意してください」




