第4話 気持ちの温度差が目立っていた
お肌をつやつやのぷるんぷるんにさせたエリーサベト・モルベリとパトリック・フェリデンは、お風呂を終えて、ネグリジェに着替えてすぐに寝るかと思いきや、テンション高めのエリーサベト・モルベリは、新作ドレスを収納したウォークインクローゼットにパトリック・フェリデンに案内した。侍女のマーナと念の為の護衛にキュリアクスも同行した。風呂上りの女性を狙う者が現れるかもしれないと警戒心の高めのキュリアクスだった。酔いがまだ覚めないフェリシア・リドマンとダリウス・リドマンが城内に滞在してるのも理由の一つかもしれない。
あまりにも警戒するキュリアクスにまさか、そんなと呆れた様子でマーナは見つめていた。
「キュリアクス、私もエリーサ様と一緒にいますから中はご遠慮してくださいね」
「ま、まさか!? 中にまで行くわけがありませんよ。何をそんな、ここにいますから、終わり次第声をかけてくださいね」
「そうよね。まさかと思って言ってみただけですよ。あまりにもぐいぐい来るものですからね」
「それは失礼!」
キュリアクスはコホンと咳払いして、姿勢を正した。マーナは、胸をなでおろした。
「なるべく早めに終わらせますからね」
「……」
静かに頷くキュリアクスだった。すでにエリーサベト・モルベリとパトリック・フェリデンは、クローゼットの中できゃきゃうふふとテンション高めにドレスの試着をしていた。
「ちょっと、何これ、エリーサ。すごい豪華じゃない??」
「でしょう、でしょう。私の誕生日兼ねてお父様にねだってみたの。こういう時にしか買ってくれないから。大人になると子供の時みたいにたくさんは手に入らないのよね。サイズアップすることは滅多にないから、侍女たちも気にしてくれないし」
パトリックは、クローゼットからドレスがかかったハンガーを取り出し、エリーサベトに見せた。そのドレスはパニエのレースがふりふりに着いていた。
「これは私も欲しいものだわ。良かったわねぇ。誕生日さまさまじゃない」
「ええ、そうね。本当に良かったと思ってる。ここからここまでが最近買った新作ドレスよ。これはペチスカートもついているの。良かったら、試着してみない?」
「色柄も素敵ね。青いドレスなんて、持ってないわ。こっちは黄緑色じゃない。エリーサ、あなたの服は見てるだけでも飽きないわ」
「そぉお? そう言ってもらえると嬉しいわ。パトリック、あなただって、豪華じゃない。いつ見ても素敵よ」
「この服はいつも侍女に選んで貰っているから。私のセンスではないのよ。エリーサは自分で選んで揃えているじゃない。すごいと思うわ」
「あー、うちの侍女たちは服装に無頓着で私が選んで着せているのよ。まぁ、好きだから。仕方ないのよ。パトリックの服を選んでいるのが侍女だったなんて、言わなければ分からないわ。今着てる服はどうしていたの?」
パトリックはほぼ入り浸り状態でエリーサベトのお城に住んでいたため、着ていた服も借りて過ごしていた。服を選ぶのはいつも侍女のマーナだった。
「エリーサ様、それは私が選んでおりました。エリーサ様が普段選ばない服をパトリック様にと思いまして……」
「なんだ、そうだったのね。別に気にしなくてもいいのに……私はパトリックとペアルックになっても平気だから。あ、そもそも、同じ服は2着も持っていなかったわ。色違いはあるけどね」
「え、ええ。そうですね。気にされていなかったのですね。余計な考えでした」
「まぁ、いいのよ。ありがとう、マーナ。パトリックと同じサイズだったなんて、嬉しいわ。ね、パトリック」
「ええ、いつもありがとう。助かってるわ。たまたまね、同じサイズでいいってなってるけど、ただ、二の腕の部分が緩い時もあるのよね」
「もう、パトリックったら、私の腕が太いってこと!?」
「え、そういう意味じゃないわよ、いや、そうなってしまうわね」
「何をぉ~~。もう、パトリックは許しちゃう!」
じゃれ合いながら、エリーサベトは常にテンション高めで行動していた。ずっと一緒に行動できるなんて、夢のようだと幸せをかみしめていた。パトリックはいつフェリシアとダリウスが帰るのか心中は穏やかではいられなかった。どんなに楽しいことをしていても、表面は明るくして内側はモヤモヤとしていた。
「エリーサ、私、そろそろ眠くなってきたわ。いろいろありすぎて疲れちゃった」
「ああー、そうね。もうこんな時間。寝ましょう。明日も早いし」
「え? 何か用事?」
「何言ってるの。フルートのレッスンの日よ。演奏会もするって先生が言ってたわ」
「あ、ああ。明日だったのね」
「全然、気持ちがこもってない返事ね」
「だって、いろいろありすぎてレッスンのことなんて、頭に入らないわよ」
「ふーん、私は楽しすぎてたまらないわ。パトリックと一緒の時間が増えたから」
「へぇ、そう? それは良かったわ」
素っ気ない仕草を見せるパトリックは気力が無かった。そんなに悩むことがあるのかとエリーサベトは首をかしげる。
一方その頃、クローゼットの出入り口で待っていたキュリアクスはあまりにも時間が長かったため、腕組をしながら立ったまま眠っていた。今日も一日体力を消耗して疲れが出たのだろう。
外では静かにフクロウが鳴いていた。




