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悪役令嬢は有能侯爵夫人と結ばれたいー理解されないと思ったら、あっさり受け入れられましたー  作者: 餅月 響子
第四章

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第8話 父と娘の会話は長くは続かない

 オスタワ王国の地下にあるオシャレなバーで側近であるフロレンチノ・カブラルを引き連れて、ダーツに夢中になるオレリアン・モルベリを少し遠くからシャンパンを飲みながら、じっと見つめるエリーサベト・モルベリの姿があった。ひゃっくりが止まらないくらいお酒が入っていた。


「エリーサ。そんなに飲んで大丈夫なのか。おや、パトリックはどうしたんだ?」


 ダーツを真ん中に差し込み、満足気な顔をするオレリアン・モルベリは、カウンターに戻り、クラフトビールを大きなジョッキでぐいっと飲んだ。


「オレリアン様も、飲みすぎ注意ですよ」


 側近のフロレンチノ・カブラルは細い目を歪ませながら、心配する。


「わしは大丈夫だ。このくらい!」

「そうよ、父上こそ、もう年なんだから。気を付けて」

「そうだよなぁ。エリーサも大人なんだから、わしも取ったわけだ。本当にいつ花婿が来てもおかしくないんだ。うん、そうだ。よし、飲むぞ」


 オレリアン王は、話を勝手に終わらせて、何事も無かったようにジョッキをさらにぐいっと持ち上げて、飲んだ。


(私、婿を呼び寄せるなんて一言も言ってないのに、父上の妄想が激しいわ)

「……パトリックが悩んでいたわ。婚約破棄になったというのに、弟のナマスール準男爵がハンナ・リドマン様と婚約されるって話だわ。こんな悲劇ありえないわ」

「なんで、急にパトリックの話になるんだ。ん? リドマン? フェリシアのことか。あー、婚約破棄は聞いていたが、準男爵が婚約するって話は聞いてないな。あちらはリドマン家と繋がりが深いなぁ。ほう……」

「父・上!? 話を聞いておりますか? パトリックのお立場をお考えになってみてくださいよぉ!」

「なぬ? パトリック? あ……まぁ。気の毒ではあるなぁ。でも、仕方あるまい。そういう人生を歩むことを選択なされたのだから。エリーサには関係のない話だろう」


 オレリアンは、エリーサベト・モルベリのガンガン来る圧力にタジタジになりながら、バーテンダーにワインを注文した。ダーツをまたやりにいこうと立ち上がる。


「ちょっと、まだ話は終わってないわ」

「別にダーツをしてもよかろう。話は聞けるから!」

「……真剣な話をこれからしようと思ったのに!! もういいわ!!」


 エリーサベト・モルベリは、オレリアン・モルベリに頼みごとをしようとここの地下室まで降りてきた。いつもなら、早々に寝る時間であることをオレリアンは分かっていない。真剣な話をこれからという時にダーツに夢中になっている。呆れて、話す気力を失った。


「ちょっと、まちなさい。今、やめるから」

「いえ、もういいわ。今の父上には正確な判断ができないから。おやすみなさい!」


 エリーサベト・モルベリは、残り少ないシャンパンをぐいっと飲み干して、勢いに任せて力いっぱいに扉を閉めて、上って行った。

 目をつぶってしまうくらいの扉の音に皆は驚いていた。


「そんなにいきおいよく閉めなくてもよかろう」

「お嬢様は何か言いたかったかもしれませんね」

「ん~? そうだったのか」

「ここにいらっしゃるのはなかなか無いですからね」

 

 側近のフロレンチノ・カブラルは、少し口角を上げた。申し訳ないことをしたと目を伏せるオレリアン・モルベリだった。


「アルコールの強いものを出せ。今日は飲むぞ!」

「オレリアン様!!」

「いーや、飲んで忘れる。娘のことを気づけないダメな親なんだ。今日くらい飲ませておくれ」

「お待たせしました。ヒポクロスです」


 バーテンダーはカウンターにグラスを置くと、オレリアンは一気に飲み干した。


「あ……早い」


 あまりにも強烈なアルコール度数であることを知っていたバーテンダーは目を見開いて驚いた。オレリアンは、飲み終えると、背中からばったりと床に倒れてしまった。


「オレリアン様!!!」


 目はぐるぐる、顔は全体真っ赤になり、呂律はまわっていなかった。


「まったく、世話の焼ける王様ですね……」


 フロレンチノ・カブラルは、バーテンダーとともにオレリアンの大きな体を起こして、ゆっくりと運んだ。


 オレリアン王は、当分お酒を飲むことが禁止になった。

 その出来事を知ったエリーサベト・モルベリは、ため息しか出なかった。






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