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悪役令嬢は有能侯爵夫人と結ばれたいー理解されないと思ったら、あっさり受け入れられましたー  作者: 餅月 響子
第四章

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第1話 隠したい事実

 賑やかな音楽と声が響き渡るバテドロン王国では、仮面舞踏会が行われていた。婚約者のパトリック・フェリデンが脱走したことが国中で広まる前に楽しいことをしておこうと企画したのは王妃であるヴァランティーヌ・リドマンだった。パトリック・フェリデンからしたら、義母になる。国王のヴィダル・リドマンは、ヴァランティーヌに頭が上がらないため、言うことを聞くしかなかった。主催者は、フェリシア・リドマンの妹のハンナ・リドマンの花婿を探すことが目的とされるため、フェリシア・リドマンは出席しなくても何の違和感を持たない為だ。婚約破棄になるかもしれない事実というのを隠すために必死だった。


「ハンナ、笑顔が大事。いい? 笑顔よ。口角をしっかり上げるの」

 

 舞踏会は食事からもう始まっており、積極的に参加しているハンナにヴァランティーヌ・リドマンは、小声でアドバイスする。笑顔を作らなくても相手はもう見つけていたのだ。先日、行われた舞踏会の時に一目惚れしたギノノ王国のパトリック・フェリデンの弟であるナマスール・フェリデン男爵が再び舞踏会に参加していたため、ハンナは到着してすぐに腕を組む熱々のカップル状態だ。二人とも仮面をかぶっていたが、お互いに顔と名前も知っている。他の参加者は、その様子を見て、良い顔をしていなかった。この会場は、独身の者が婚活をするために集められた催しもの。既に出来上がっている二人は場違いだった。


「ねぇ、ナマスール。これが終わったら、二人で抜け出さない?」


 ぐいっと服を引っ張り、耳元で小声で話すハンナ・リドマンに、ナマスール・フェリデンは困った顔で体を傾けた。顔に着けていた仮面がずれている。ひらりとドレスのレースが翻る。


「うーん……」

「だって、これは私の婚活を積極的にするって話でしょう。ねー、ねー、いいでしょう?」

「あー、まぁ、そうだねぇ」


 ハンナの押しに負けてしまうナマスール・フェリデンは、こめかみをぽりぽりとかいた。


「――あのさ、ハンナ。一つ、聞きたいことがあるんだけど」

「なーに?」


 一通り、ダンスを終えて、長く装飾が綺麗なテーブルにたくさんのメニューが並べられていた。ハンナは、三角形に並べられたブルーチーズをつまんでかぶりついた。さらに高級なワインを片手でぐびっと飲んだ。頬が少し赤らんでいる。


「姉さん……パトリックは、元気かな?」

「――あー、そうだったわ。貴方はあの人のご令弟れいてい様でいらっしゃるものね」


 さっきまで楽しそうな顔をしていたハンナの顔が一気に青白くなっていく。


「うーん、まぁ。結婚式の日取りの連絡がないと母上が気にしておられたから。ちょっと気になってね。その前に、この舞踏会があると言うから、驚いていたよ。今日、姉さんはどこにもいないんだね」

「え、ええ、そうよ。今日はなんて言っても、私が主役だから。義姉様は出席しないわ」

「あー、ああ。そうか。そうだよね。聞いた僕が悪かった」

「……でしょう? 分かってもらえたら、嬉しいわ」


 ハンナはフライドポテトをつまんでまたすぐにワインを飲む。ワイングラスが空っぽになると、執事のトレイに乗せた。


「新しいものをお持ちします」

「いえ。もう結構よ。お腹いっぱいになったわ……ひっく」

「かしこまりました」


 しゃっくりをして、何も言わずに会場を後にした。ハンナは、聞かれたくないことを言われ、機嫌が悪くなった。せっかく、これから二人きりになるかもしれないのに、パトリックの話をされて、モヤモヤした気持ちになった。


(なんで、私という人がいるのにお姉様の話をするの。シスコンかしら。まったく。考えていることが分からないわ)


 つまらなそうな顔を見たナマスール・フェリデンは、ハンナを追いかけることをやめて、テーブルに沢山詰まられたライ麦で作られた黒パンを小皿に取り分けて、そっと頬張った。


(……何か悪いことを言ってしまったかな)


 その二人の様子を王座から眺めていたヴィダル・リドマンとヴァランティーヌ・リドマンはため息をつき、お互いに顔を見合わせて眉をひそめていた。


 会場には音楽が鳴り響き、残った参加者たちでにぎわっていた。ハンナよりも先に双方に婚約者を決めたカップルも誕生していた。カップルになった二人の周りは拍手を送った。


 婚約が正式に決まったわけじゃないナマスール・フェリデンは羨ましそうに眺めるだけだった。

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