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悪役令嬢は有能侯爵夫人と結ばれたいー理解されないと思ったら、あっさり受け入れられましたー  作者: 餅月 響子
第四章

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第2話 幸せを噛みしめる瞬間

 オスタワ王国の令嬢であるエリーサベト・モルベリは、今、この上なく、幸せ絶頂であった。それはなぜかと言うと、大好きなギノノ王国の令嬢のパトリック・フェリデンとともに自室でボードゲームに夢中になっている。ロイヤルゲーム・オブ・ウルというゲームだ。花と幾何学的なデザインで装飾されたボードにコマを動かして遊んでいる。


 何とも、ほんわかした平和な時間が訪れている。

 それは前からずっとエリーサベトが望んでいたことだった。


 いつもフルートやピアノのレッスンで一緒になることはあっても、ボードゲームで遊ぶことは無かった。

 鼻歌が自然と出るし、無意識にお肌もツヤツヤになっている気がしてならなかった。

「あ、パトリック。そこにコマを置くんじゃないのよ。次はココね」

「あ、そうなの。知らなかったわ。ありがとう。ココね」

「そう、そこ。ああ! もう、一緒に遊ぶのがこんなに楽しいだなんて、夢のようだわ。ねぇ! キュリアクス」


 ガードマンのキュリアクスは、キャビネットの近くで腕を組みながら、眠そうにあくびをしていた。ゲームに参加できない身としては退屈でつまらないものだ。侍女のマーナはひたすら隣の寝室で洋服の整理をしていた。


「はっ! ……コホン。いや、それは良かったですね。エリーサ様」

「そ、そう。そうなのよ。楽しすぎるわ。これ以上の幸せあるかしら! おほほほ」


 笑いが止まらないエリーサベトの横で、パトリックも毒素が抜けたような笑顔を見せていた。婚約破棄を成立させたようなもので、もうフェリシア・リドマンと関わらなくていいと思うと、口角は上がりっぱなしでエリーサベトと同じくらい鼻歌がこぼれていた。


「エリーサ、私、貴方がいて本当に良かったと思ってる。ありがとう」

「何を言うのよ、いきなり。私だって、パトリックがいて私が存在してるようなものなの。お礼をいうのは私の方よ」


 エリーサベトはボードゲームのコマを転がして、パトリックの両手をがっちりつかみ、目をじっと見つめた。


「エリーサ、どうしたの?」

「ううん。本当にありがとう。私はパトリックが生き甲斐です」

「う、うん」


 エリーサベトの圧力が強いと感じたパトリックは身を引くくらいだった。マーナも扉の横から半分顔を覗かせてじっとその様子を見つめていた。


(エリーサ様って本当にパトリック様を愛していたのね。ここまで愛が強いとは……すごいわ)


「さぁ、エリーサ。ボードゲームの続きをしましょう」

「うん。そうね。次は私の番だったわ」


 気持ちを切り替えて、ボードゲームに視線をそらした。まだそれ以上の関係には抵抗を感じるパトリックは、心臓が落ち着かなかった。確かに男性よりは良いとしたものの、これ以上の関係に踏み込んだことは一度もない。しかも、ここはマーナもキュリアクスもいる部屋だ。心の準備ができていない。いつにも増して、エリーサベトのボードゲームへの熱意は熱かった。


「これで、私が有利になるはず。はい! パトリックの番よ」

「ええ、そうね」


 お菓子のクッキーを食べ、紅茶を飲みながら、二人は夜遅くまでボードゲームに夢中になっていた。



―――― 一方、その頃、


 パトリックに婚約破棄同然に振られて生気を失ったフェリシア・リドマンが、馬に乗って家路に向かっていた。横には、解放された弟のダリウス・リドマンの馬に跨って、後ろを着いていた。


「ダリウス。一体、私はどこをどう間違えてしまったのか……人生は難しいものよ」


 フェリシアは、ぐったりと手綱の持つ手は弱まっていたが、相棒である馬のジャックスは心中を察して、ゆっくり進んでいた。


「兄さん……それは、遠い昔のあの頃から決まっていたかもしれないよ。幼少期に四人で遊んだあの頃に……」


 ダリウスは、短い時間だったが、エリーサベトと共に過ごして気づいたことがあった。彼女と過ごす空気感はとても柔らかくて優しくて居心地が良かったということ。それは、幼少の頃から感じていたことだった。パトリックとエリーサベトとリドマン兄弟の四人で笑い合って楽しく過ごしていたあの瞬間は、エリーサベトが作り上げた空間だったことを改めて思い出す。フェリシアが好きだと言うパトリックへの想いは勘違いから生まれていたかもしれないとダリウスは考察する。


「そ、そうか……あの頃か。私は何をどう感じていたのか。大きな穴があったら入りたいものよ……なぁ、ダリウス」


 フェリシアはやっと自分の気持ちとパトリックの気持ちに気づいて、顔半分を覆うように目を右手で隠して、声を殺して泣いた。おんおん泣いているフェリシアの望みを叶えようと、牡馬のジャックスは後ろ足で何度も土を蹴り飛ばして、少し大きな穴を作った。土はてんこ盛りに山が出来上がった。鼻息をあげて、どうだと言わんばかりの顔をした。


「あー……ジャックスよ。お前は良い相棒だ。穴を作ってくれたのだな。その前に私を丁寧におろしてくれないか。お前が穴を掘る際に豪快に地面にたたきつけるのはやめてもらいたい!! 穴も小さすぎるわ!!」


「おいおいおい! 馬に八つ当たりするんじゃないよ、兄さん」

「ひひーーん!!」


 ジャックスは、そのフェリシアの言葉に鼻を大きくさせて、てんこ盛りの土をフェリシアの顔に吹き飛ばした。見事に顔が土だらけになる。


「あーあ。馬も人間並みに大事にしないと痛い目を見るんだぞ!」

「そんなの分かってるわ!! ちくしょーーーー」


 フェリシアは、土だらけの顔で叫ぶ。パトリックだけじゃなく、ジャックスにまで嫌われてしまう始末だった。

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