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悪役令嬢は有能侯爵夫人と結ばれたいー理解されないと思ったら、あっさり受け入れられましたー  作者: 餅月 響子
第三章

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第6話 エリーサベトの気持ちはどこへ

 オスタワ王国の地下に存在する教会には、大きくて優美な彫刻を施されたパイプオルガンがあった。魂を込めた演奏をしていたのは、ギノノ王国の令嬢であるパトリック・フェリデンだ。フェリシア・リドマン侯爵の婚約者であった。

 楽器演奏も知能も様々なことに優れていて、誰からも好かれる性格で、まさしく有能侯爵夫人と言われるほどだった。


 今は、フェリシア・リドマンとその母であるヴァランティーヌ・リドマンにチクチクとあることないこと責められて、居場所を失ったパトリックは、幼少期からの付き合いである オスタワ王国の令嬢のエリーサベト・モルベリの城に転がり込んだ。エリーサベト・モルベリの父であるオレリアン王は、パトリックがこの城にいることをまだ知らない。ただ、遊びに来ているだけと説明すればいいとエリーサベトは思っていた。

 

 パトリック・フェリデンは、現実から逃れたくて、必死にパイプオルガンという壮大な楽器を演奏することで、今は何もかもを忘れられていた。次第に額からは多量の汗が流れている。


「パトリック様……一度休憩なされてはいかがですか?」


 一緒に見守っていたのは、エリーサベトの家庭教師ザンドラ・ピーロネン。シルクのハンカチを出して、汗を拭くようアドバイスする。


「ありがとう。ザンドラ。でも、大丈夫。この曲を弾き終わるまでは終わらせられないわ」


パトリック・フェリデンは、グレゴリオ聖歌を勢いをつけて弾いた。地下から響くパイプオルガンの音色は城中の者たちの心に強く響いていた。



―――オスタワ王国のオレリアン王とバテドロン王国の令息のフェリシア・リドマン侯爵は、お酒にどっぷりハマり、酔いが深まって、だんだんと本音がぽろぽろと吐き出していた。


「……ひっく、だから、言ってるんですけどねぇ。パトリックには、いつなったら婚姻になるんだと。詰め寄れば詰め寄った分だけ、離れていくんですよ。何が悪いんだか……オレリアン王! パトリックは、いっつも、エリーサベトのところに行って俺のことは眼中にないんです! 全く、俺を誰だと思っているのか……ひっく」


 フェリシアは、顔を赤くして、テーブルの上に伸ばした左腕に顔を預け始めた。


「なんと……それじゃぁ、パトリックは婚約する気がないと? それはエリーサも一因しているのではないか」

「ひっく……ひっく……むにゃむにゃ」


 フェリシアは、眠気が強く出て、喋ることもままならなかった。オレリアンは、返事がないことに呆れながらも、大変な想いをしたなと慰めるように背中をポンポンと撫でた。何かをひらめいたオレリアンは、また眠りはじめたフェリシアをそのままに席を立った。


「あとは見守っていてもらえるか?」

「ええ、かしこまりました」


 側近であるフロレンチノ・カブラルにフェリシアの介抱を任せた。フェリシアの言葉で深く飲んだはずの酔いも一気に醒めていた。父である立場から申し訳ないことをしたと感じていた。


「よりによって、エリーサベトが関係していたとは……仲良く夫婦関係になるんじゃくてお邪魔虫になるんじゃ、顔向けできないではないか……」


 鼻息が荒くなるオレリアンは、着ていた服の裾を翻しながら、エリーサベトの部屋へ向かった。重々しい空気になる気配を感じた執事たちの足取りは早くなっていた。



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