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悪役令嬢は有能侯爵夫人と結ばれたいー理解されないと思ったら、あっさり受け入れられましたー  作者: 餅月 響子
第三章

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第5話 流れを変えたい父に楽しいことしか考えない娘

 オスタワ王国の玉座の間で、王であるオレリアン・モルベリとバテドロン王国のフェリシア・リドマン侯爵は、希少価値の高い魚介類のオードブルを前に最高級のワインを飲んでいた。お酒は弱いオレリアンだったが、ついつい昔話に花開いて、いつも以上に飲むペースが早かった。ひゃっくりをしながら、顔を真っ赤にさせてワインをぐびぐびと口に入れていた。


「オレリアン王様~? 飲みすぎじゃないですか? 大丈夫です?」


 そう聞くのは、フェリシア・リドマン。さっきまで闘いを挑みに来た者とは思えないほどのリラックスムードだ。フェリシアの顔もお猿のように真っ赤にして、体はふらふら状態だ。側近であるフロレンチノ・カブラルは、二人の体を支えながら、体勢を整える。


「フェリシア? それはそうと、結婚はどうするんだぁ? 最近、婚約間近だと言われているパトリックとの関係はどうなんだ。なかなか、結婚しないから、もう別れたんじゃないかと思っていたよ! ……ハハハハ」


 酔っ払いついでにどんどん聞き込みをするオレリアン王は、フェリシアの肩にがっちり腕を回し込んだ。フェリシアの顔は一気に赤い顔から青くなるのが分かった。


「え……ええ。そりゃぁ、もう。お互いに愛し愛されておりますよ、ねぇ。ハハハ……」


 冷や汗をかいて、ごまかすフェリシアの顔が不自然に思えた。オレリアンはさらに続ける。


「ほぉー……それは本物なのかえ? ヒック……」

「……ほ、本物?!」

「うちの娘はどうなんだ。昔からずっと一緒に過ごしてきて、眼中にないのかぁ? 可愛い可愛い娘なんだよ。なかなか相手を見つけてくれなくてなぁ! ヒック……どうだ? 私の娘と結婚するのは? いいぞぉ~、そうだなぁ。嫁ぐ形にはなるが、結婚した暁には鉱山をプレゼントしよう! 最近、ザクザクと宝石が出てきているからなぁ。オスタワ王国の鉱山がバテドロン王国のものになるのだぞ! いいアイデアじゃないか? 私にしては? なぁ、どうだ。フロレンチノ!」


 フェリシアに腕を回していたかと思うと、隣にいた酔っ払い相手担当の側近フロレンチノは、苦笑いをして適当に交わした。酔った勢いの契約は偽物だと思っている。


「……オレリアン王、それは良い考えではないですか! 素晴らしい。その鉱山は金はとれるのですか?」

「んあ?! どう、だったかなぁ……確か、金と、ダイヤモンド。あとは、アウイナイトだ、そうだ。あれが一番摂れたはずだ。すごい綺麗なんだぞ。ネオンブルーの幻の宝石なんて言われている鉱物品だ」

「おぉ! なんて、素晴らしい! すごいじゃないですか、オレリアン王。ぜひとも、我が国の鉱山にしたいですね」


 目をキラキラさせながら、酔いも醒めはじめたフェリシアがいた。オレリアンは、こんなに食いつくとは思わずにバシバシと背中を叩く。


「さぁ、さぁ。もっと飲み明かそう。『グルートビール』なんてどうだ。今朝仕入れたものらしい。飲むぞ! ガハハハハ」

「はい、ぜひともご一緒させてください!」


 上機嫌になるオレリアン王にそれにつられてお酒を飲むことになるフェリシア。二人の夜は長くなりそうだった。


―― エリーサベトはというと……


 シャワーを終えて、鎧から洋服に着替えてきたダリウスがしばし緊張しながら、エリーサベトの部屋に入る。横には不思議そうな顔をしたキュリアクスの姿があった。


「何をなさっているのですか?」

「いーや、その……エリーサが着替えていたら大変だろ? レディの部屋に入るのはどうぞと言われてからに決まっているからなぁ!」

「礼儀正しくて構いませんが、今は着替えておりませんから大丈夫ですよ?」


 キュリアクスは、何ともないかのようにそっと部屋の扉を開けて案内する。


(心配しすぎて損したな……)

「悪かったな」

「いえ、とんでもございません。ごゆっくりとお楽しみくださいませ」

 

 キュリアクスは笑顔で送り込む。エリーサの相手をしてくれるだけでもすごく助かると内心感じていたからだ。ガードマンの休息時間が増える。


「あ、ダリウス! シャワーしてきたのね。やっぱり、鎧よりそっちの方がいいわ。若返るじゃない!」

「五月蠅いなぁ……」

「ふふふ……ほら、スイーツでも召し上がれ。これはパトリックもお気に入りのものよ……あ、あれ。そういえば、パトリックはどこに行っちゃったのかしら」

「いただきます」


 ダリウスは、もう、パトリックのことなど頭にない。ここにいること自体が恥ずかしくなってきて、居たたまれないからだ。できることなら、すぐにでも帰りたい。だが、出されたスイーツはありがたく口に頬張る。甘いものに目がないのも事実だ。


「ダリウス様、ぜひエリーサ様とトランプでもなさってくださいな。私では飽きてらっしゃいますから」


 横でお皿にマカロンとクッキーを取り分けていた侍女のマーナが話す。ゲーム相手も変われば、楽しめるということだ。


「そうよ! 久しぶりにやりましょう。子供の時は何回もやって負けていた記憶しかないわ、あの時のダリウスは強かったわね」

「いつの話だよ。何年前だ……今は違うって。さらに強くなっているはずだ」

 

 トランプゲームに火がついたダリウスは嫌な気持ちも吹っ飛んで、エリーサベトと大いに楽しむことになった。

 

 まさか、大の大人がトランプゲームに夢中になるとは誰も予想しなかっただろう。

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