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唄うは愛の魔法  作者: 三化月
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引き裂かれる痛みで

 驚くことに少女は僕と同じ年齢、同じ高校だった。会長に聞くと、学校ではそこそこ有名らしい。そうなのか、僕は知らないな。隣のクラスらしいけど。

 そういえば同じクラスのイケメンくんが彼女のことが好きだとか何とか言ってた気がする。彼は実質的な支配者だからなぁ。僕に彼女は無理かなぁ。

 頬を染める少女と、それを眺める会長。


 「・・・それで、どこかで会いました?」


 僕の言葉でこの空間の時間が止まった。額に手を当てて宙を仰ぎみる会長。前髪を揺らしながら顔を下げる少女。彼等の母親だけはしっかりと機能していて、事情を話してくれた。

 なんでも、昨日助けた女性がこの少女だとか。僕は暗くて何も見えなかったから何とも言えない。


 お爺さんからコーヒーを頂いて、その日は帰宅した。

 時折振り返りながら帰り道を歩く僕の目には、可憐な少女が映っていた。


 翌日。僕は人目のつかない所で(なぶ)られていた。相手は昨日言っていたクラスのイケメンくん。名前は覚えていない。覚える必要が無い。

 こうなった原因は明白で、お昼休みに少女が僕を呼びに来たから。彼にしてみれば面白くないだろう。もちろん、僕にとっても。

 空気で過ごしてきたというのに、僕が余計な事をしたせいでこうなってしまった。本当に面白くない。

 (うず)く腹部を抑えながら、立ち上がる。そんな僕に彼のつま先が刺さった。醜く地を這い、せり上がってきた胃液を吐き出す。

 イケメンくんは僕を一瞥すると、「もう2度と近づくな」。そう言って去っていった。


 僕だって好きで近づいたわけじゃない。殴られたわけでもないのに無性に響く、頭痛に頭を抑え、覚束無い足取りで帰路を急ぐ。

 ある程度歩けば後ろを確認し、また歩き出す。これだから太陽は嫌いなんだ。父さんも、会長も、イケメンくんも。周囲を照らす人間というのは他の人間を分かってない。自分が中心だと。自分が1番だと信じて疑わない。


 ようやく僕の家が見えた時、何処かで聞いたことのある声が僕の脚を止めた。その声を聞くだけで周囲に花畑があるかのように錯覚してしまう---事は無いけれど、綺麗な声だった。


 後ろを振り向けば、簡単に答えが分かっただろう。だけど僕は、そんなものに興味は無いとでも言うかのように歩を進める。

 運良く1発で入ってくれた鍵を回し、扉を開け、閉めようとしたところ。ズイっと割り込んできた綺麗な手を見て扉から手を離した。


 「なんで無視するんですか!?」


 酷くなってきた頭痛を誤魔化すように、おでこを掌の付け根で叩き、靴を脱いで家へと上がる。彼女は勝手に上がってくるだろう。今もまた声を張り上げている。

 「唇が切れてるじゃないですか!」違う。傷が開いたんだ。僕の家に救急箱は無いよ。

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