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唄うは愛の魔法  作者: 三化月
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白色の仮面を被り

 喧嘩とも言えない不意打ちをしたにも関わらず、無様にも負傷してしまった僕は、疼く傷に薬を塗りつけてマスクを被る。

 顔の上の方は髪にワックスをつけて整えれば隠せるし、夏の学生服も長袖だ。ちっぽけな勇気は誰にも分からないし、誰も知る必要はない。もしバレて傷害罪とでも決まった日には自害さえしてしまえるだろう。それほどに僕の生活に色は無いし、求めてすらいない。


 ワックスをつけてるからか、朝から視線が飛んできては消えていく。まともに話したこともない人間に気安く話しかける奴なんているはずがないから、気にしないでいいのが救いか。

 もし話しかけてくる人が居るなら、僕はその人を無礼を承知で異邦人と呼ばせてもらう。




 「・・・その頭どうしたの?」


 異邦人がここに居た。よりにもよって生徒会長だ。僕は何も言いたくないけど、答えないわけにはいかない。

 開けて入ってきたドアを閉じてから僕は言った。


 「気分ですよ」


 生徒会長の感嘆の声を聞き流しながら、少しサビ臭い、空いている席に腰を下ろした。

 生徒会室は言わば自習室だ。ロの字に机と椅子が並び、その上には学校行事予定表やら学校誌なんかが積んである。

 それらを生徒会長と僕との間を隔てるように置き直して、鞄から単語帳とノート、筆箱を取り出す。


 「へぇ、似合ってるじゃないか。クラスの女子からモテモテだろ」


 鬱陶しい。そんな感情を出すことは許されない。僕は人畜無害な生徒なんだから。

 生徒会長もどうして今日に限って僕に話しかけるのか。他にも話す相手はいるのに。


 「マスクつけてますから・・・、多分、上の素材はいいんですよ。それよりも先輩、勉強しなくていいんですか?」


 僕の会話を終わらせようとする頑張りも、先輩の「ハハハ」という笑い声に霧へと消えた。もう話すことは無いじゃないですか。話すことで何か意味があるんですか?

 そして会長は触れてほしくないところに触る。


 「じゃあ、マスクとってみろよ。案外、イケメンかもよ」


 それを聞いた僕は慌てて首を振った。まさか、とんでもないですよ。そんな僕の言も虚しく、会長がにじり寄ってくる。

 他の先輩方もそれを止めようとはせず、どこか微笑ましいものを見ているような雰囲気さえ感じさせた。


 そうして会長の手から逃れているにうちに、会長は髪で隠れた痣を見つけたのだろう。冗談だと周囲に笑いを振りまきながら、その視線だけは「後で残れよ」と強く物語っていた。

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