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唄うは愛の魔法  作者: 三化月
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視認出来ず空気に溶ける

 僕はクラスの中では空気だ。中学時代は親と過ごしていた事もあり、魔術が使えない分をどうにか補填しようとクラスカーストの上位に居た。生徒会長に学級委員。それはもう手広くやった。自分のキャラを壊すこと無く、役割を演じる。その結果が一人暮らしなのだからお察しだ。


 親も知り合いも居ない高校生活で出しゃばる必要は無い。就職のために生徒会に入りはしたけど、中学の頃と比べると余裕がある。

 他人と関わる必要が無い。勉強は1人で。食事は1人で。生活は1人で。必要性が無いのだ。

 だから僕には1年の1学期も終わろうというのに友達1人居ない。生徒会も自分の仕事をしていれば何も文句は言われないし、無駄に会話をする必要も無い。

 僕は最初の自己紹介以外で自分の名前を言った覚えはないし、教師以外で名前を呼ばれたことも無い。

 これでいいんだ。これが僕が望んだことだ。なんの(しがらみ)もなく、なんの関わりもなく、極力無害で過ごす。これが望みだ。


 授業終了の鐘の音を聞きながら、急いで手元のノートに黒板の内容を写していく。起立の号令が掛かったところで一旦手を止め、礼とともにペンを走らせる。

 生徒達が席を立った。走って何処かに行く者。友達の元へ向かう者。携帯を触る者。他者多用だが、僕はひたすらにペンを動かす。

 無情にも日直によって黒板は消されたけれど、大切な事は書くことができた。数種のペンと消しゴムを音を立てながら筆箱に落として、消しゴムのカスを叩き落とす。教科書、ノートを畳んで揃え、机へと戻した。


 教室へと戻ってきた生徒達の手にペットボトルが握られていたのを見ると、無性に喉が渇いてきた。僕も何か飲み物を買ってこようか。

 喧騒の中を数人の列の最後尾に並び、財布の中を確認。手持ちに小銭が無かったので小銭入れのチャックを閉めた。いつの間にか空いていた列を前に進み、千円札を取り出して、もう一度小銭入れのチャックを開ける。財布を斜めに構えれば、5円玉と1円玉が寂しく転がった。

 親からお金は振り込まれるとはいえ、好き勝手に動いていれば無くなるのは必須。使える額を決めてコツコツと貯めてはいるが、所詮は親の金だ。親に頼りたくない、バイトをしたくない僕にとって、これは大きな問題になりえた。

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