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唄うは愛の魔法  作者: 三化月
2/14

我が名は『魔なき魔術師』

 僕は泣きながら魔術詠唱をしていた。もう既に喉はカラカラで、立っているのもやっと。

 空から照りつける太陽は痛い程に容赦なく僕を焼く。それでも唄うことを辞めないのは、辞められないのは、僕の後ろに父親が居るから。

 ・・・もう何度目の失敗かも分からない。失敗する度に木刀で背中を押され、ふらつきながらバランスを取る。

 父さんは僕に何を言うでもなく、失敗するとこうして背中を押す。父さんは太陽だ。何も語ることは無いけど、ジリジリと僕を蝕む。


 とうとう地面に膝をついた。その衝撃で汗が無数に飛び散り、地面に丸い染みを幾数も作る。

 体を支えるのも精一杯な僕は額を地面に付け、気付けでもするかのように砂を刷り込んでいく。

 呼吸がようやく整い始めた頃、父さんが口を開いた。


 「30分の休憩だ」

 「--っ、はい・・・!」


 僕が動けたのは、それから3分後。水を飲んだのは10分後だった。

 僕の思いとは別に身体が勝手に動き、あっちに行ったり、こっちに行ったりと(せわ)しくて仕方が無い。

 そんな情けない僕を見て周囲は会話に花を咲かせる。御両親は立派なのに。魔術が使えない悪魔の子。折角の魔術師の血が勿体ない。

 思考が纏まらない頭で、「確かにそうだな」と思った。


 魔術。それは古来から存在する。

 伝承。神話。それらを眺めてみれば、何度も超常の力というのは出てくる。

 それらの中で魔術とは選ばれた人間が扱うものだが、今の考え方は違う。設備、知識が揃い、鍛錬次第で一般人でも使えるものとなったのだ。だがそれは危険なモノに変わりはなく、秘匿されているのだが。


 じゃあ、僕はどうして魔術が使えないのか。調べてみても何ら問題は無く、魔術を使うに適した体をしている。幼い頃から魔術を学び、魔術に触れてきた。僕の今までがこの体を作っている。

 が、それは魔術が使えれば適しているというだけの話し。自他共に認める認識としては、生まれる時に頭のネジでも落としたのだということ。


 魔術が使えない僕を皆はこう呼んだ。

 『魔なき魔術師』、と。

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