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唄うは愛の魔法  作者: 三化月
13/14

題名回収→魔術詠唱開始

 指定された座標には簡単についた。山の中にある廃校舎だったのだが、魔術が使えればバカ正直に登山なんてする必要は無い。今の時間は午前6時。約束の時間まであと6時間はある。本当なら魔力を回復させるために休んだりとした方がいいけど、彼女に何かあってからでは遅すぎる。早いに越したことは無い。


 魔術で強化した足で施錠された扉を蹴飛ばし、堂々と校舎内に入っていく。随分と使われていなかったのか、僕が1歩踏み出す度に靴の跡が残る。つまりは、まだ、彼女はここには来ていない。もしくは、ここ以外の入口から入ったことになる。

 ここは見た感じ正面玄関だから、まだ来ていないのだろう。僕は教室を1つ1つしらみつぶしに開けていく。


 ・・・12時になった。約束の時間だ。

 教室を全て探したけど彼女は影も形も無かった。それに、今も誰かがこの校舎に足を踏み入れたような気配も無い。

 その時だ。グラウンドの方から魔術の気配を感じる。念のために結界を張っておいてよかった。僕は風をきって魔術師へと向かった。


 僕をここに呼びつけた魔術師。その人を僕は見たことが無い。父さんの知り合いだろうか。


 「誰ですか」


 それなりに大きな声で呼びかける。彼の隣には両手首を縛られた彼女が。焦る気持ちを抑えて彼の返答を待つ。


 彼は表情を変えずにこう答えた。「魔術学校で校長をしている者だ」。さらに続ける。「君のお父さんに色々と言われてたんだが・・・、よもや彼を閉じ込めるとは思ってもみなかった」。

 僕を学校に入れたいのだろう。だけど、それは叶うことはないだろ。僕は自分の魔術の正体について分かってしまった。


 「君がその気なら仕方がない。なら、こうしよう。私が勝てば君は学校に入りたまえ。私が負ければ君の好きなようにすればいい」


 「もちろん」。それが僕の答えだ。

 彼が彼女を後退させるのを待ってから詠唱を開始。


 魔術師どうしの勝負において、勝敗は一瞬で決まる。完璧な一手で決まる事もあれば、負ける事もある。 全てはその時の運と実力次第。


 月光を纏う 夜空を纏う

 我が名は『魔なき魔術』

 視認できず空気に溶ける

 力なく地へと還る

 白色の仮面を被り

 黒をその身に宿す

 引き裂かれる痛みで

 萌える魔術師

 引き抜かれる恐怖で

 映える魔術師

 夜を駆け抜け

 鎌を握る


 さらば唄おう『我は愛ある魔術師』と


 グラウンドを闇が支配し、その闇は僕を着飾っていく。

 僕の輪郭はうっすらと曖昧なものとなり、今にも空気に溶けていきそうだ。

 彼から飛んでくる魔術が塵と消える。

 白の無地の仮面を被り、息を吐く毎に、闇がより深く濁る。


 自分の魔術が無効化された事に彼は薄く笑う。


 ここまでくるのに随分と時間がかかった気がする。色んな苦労をした。痛みを負った。

 だからこそ僕は愛を知り、魔術に目覚めた。

 だからこそ今の僕が、こうして自分で誇れる存在でいられる。


 僕は夜を駆け、手に出現した鎌を振った。

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