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唄うは愛の魔法  作者: 三化月
12/14

鎌を握る

 午前2時。そんな時間に目覚めた僕は、フラリ、フラリと夜道を歩く。月には雲がかかり、僕を着飾ってはくれないけれど、逃避行の夜には持ってこいの天気だ。一生懸命に光を反射しているというのに誰もそれを見てくれない。月に自我があったとして、今日みたいな天気だと何を思うのだろう。

 何気なく見上げた、濃い灰色の空。そこには空中を優雅に舞うフクロウが居て―――僕は咄嗟に物陰に身を隠した。僕の勝手な推測だが、普通のフクロウはあんなふうに飛ばない。餌を見つけるまで飛ばないイメージが先行しているけど、あれは使い魔だ。間違いない。


 フクロウは口に何かを咥えていたみたいだ。何かが宙を落ちていく。僕の場所が分かっている?でなければこんなことはしないのでは?いや、ヤマを張ってるだけかもしれない。

 何故かその時だけは風が吹かなかった。完全な無風。そうして司会の中に落ちてきたのは、どうやら手紙のようだった。それを確認しているうちにフクロウは忽然と姿を消していて、僕の目線は落ちきた手紙に注がれる。


 物陰から姿を出した僕は恐る恐る手紙を手に取った。もちろんだけど、差出人は不明。

 小刻みに震える手で封を破れば、中から出てきたのは驚くべき事が書かれた紙。


 お前が助けた少女を預かっている。

 返して欲しければ本日の正午にコチラが指定した座標にまで来る事だ。

 早めに来る事だ。命の保証は無い。


 膝は狂ってしまったかのように震え、アスファルトの地面と激しく打ち合う。

 寒くも無いのに顎は震え、骨が笑うかのように不協和音を奏でる。

 力なく空を見上げる僕の心の中は大荒れ。巻き込んでしまった。最後に喫茶店に寄らなければ。そんなどうしようもない思いが嵐のように心を切り刻む。


 行かなくちゃ。指定されて座標に何が待ち受けているのかは分からない。けど、行かなくちゃ行けない。

 自然現象とほぼ一体化した僕は、行きよりも格段に速いスピードで街を駆ける。

 何処からそんな力が湧き上がってくるのか。そう聞かれれば、僕はきっとこう答えるに違いない。


 愛の力、だと。

 色々後悔する事は多いけど、今の僕は彼女を助けた事を後悔してはいなかった。

 何よりも早く。何よりも速く。いつの間にか痛む頭を抑え、僕は行く。

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