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唄うは愛の魔法  作者: 三化月
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夜を駆け抜け

 僕の頭上を何かが通り過ぎた。月光に照らされたそのシルエットを目を細めて見てみれば、すぐにフクロウであると考えが至る。

 十中八九、使い魔。父さんは閉じ込めたから、他の誰かのものだ。考えられるのは僕の家系の誰か。フクロウを使う人は珍しくないから、誰かを特定なんては出来やしないだろう。

 一先ず魔術はここまで。月明かりで出来た影に降り立つように着地して走り始める。


 魔術の行使により自然現象に近くなったとはいえ、それで騙されるのはせいぜいが一般人だけ。魔術師なら空間の歪みとして見えたり、異様な違和感を感じたりする。動かなければ短時間なら誤魔化すことも出来るかもしれない。けど、僕にその選択肢はない。

 一般人を撒くには魔術を。

 魔術師を撒くには日常生活を。

 なんとも不思議なものだと思う。魔術を覚えたって人間は人間でしかない。そのことを実感出来る日がくるとは。


 僕が降り立ったのは、水族館が併設された大きな公園。この辺には初めて来た。車だと何分ぐらいかかるんだろうか。

 たっ、たっ。(かかと)で地面を叩きながら、視線を周囲に巡らせる。幸い、今の季節は夏。仮眠をとったって風邪なんか引きやしない。

 風が植え込みを揺らし、僕は反射的に背後を振り返った。何も無い、誰も居ない。そりゃそうだよね。使い魔を見かけたからといって、ソレが僕を完全に捉えているとは考えられない。人間以外の動物は基本的に魔術適正が無いのだから。それも術者の実力でいくらでも変わってくるというのは卑怯だ。


 結局、良さげな場所を見つけることは出来なかった。ネカフェに行ってもいいけど、閉鎖空間というのは魔術行使に最適だからはばかられる。こんな状況だし仕方ない。ベンチで寝ることした。これなら何かあっても直ぐに行動に移すことができる。

 古ぼけたベンチに腰を下ろして、木々の合間から覗く星空を見た。大きい公園だけあって比較的綺麗に輝くそれは、宝箱と言っても過言ではない。星座のことなんて全く分からない僕でも、十分に引き込んで離さない。夜の公園はこんなにも静かなのにどうして僕は逃げ回っているのだろうか。魔術が使えるようになったのに結果がこれじゃあ面白くない。

 思い出すのは、魔術が使えて嬉しくて、思わず抱きしめてしまった彼女の温もり。心配性な彼女が僕を探してなきゃいいけど。

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