23.エルフ脱獄大作戦_12
ディンは船尾に取り付けられたオールを必死に左右に漕ぐ。
「このままだと追い付かれるよ! どうする!?」
ディンが叫んだ。
「どうしましょうね。この状況……僕のサイコキネシスでも、流石にどうにもなりません」
突如、ナリルが魔動船の船首から魔法弾を放った。
魔法弾はバンビ達が乗る舟を掠めて近くの水面に着弾する。
「うわーっ!」
大きな水柱が上がり、舟が大きく左右に揺れた。
「はっはっは! お前ら、悪運尽きたんじゃないか? いい加減に諦めろよな」
ナリルは笑いながら右手に次の魔法弾を溜める。
「げぇー、揺らさないでよぉ。酔っちゃうだろ!」
ディンはズレた泣き言を漏らす。
──二隻の舟の間隔は徐々に近くなっていく。
「追いつかれるのは時間の問題です……何か策を講じないと……」
バンビが思考を巡らせる時間も与えんと言わんばかりに容赦なく魔法弾が放たれた。
今度は、真正面から小舟へと迫ってくる。
「おらぁっ!」
リグが船尾を蹴って跳躍。空中で体を捻り、足で魔法弾を蹴り返す。
軌道が逸れた魔法弾は、小舟の左後方に着弾。水しぶきが舞い上がった。
リグは反動で小舟へ押し戻され、甲板をゴロゴロと転がる。
「リグ! 大丈夫!?」
イヴァが駆け寄った。
「くっそ! 方向を変えるのが精一杯だ。跳ね返すのは無理だな」
「はっはっは! 無理すんなって。ほら、まだまだいくぞー」
ナリルは一同を嘲笑う。
「やばい……本当に酔いそう……」
ディンは相変わらずズレている。
──二隻の舟は、川に掛かった桟橋の下を潜り抜けた。
サリーが木槌をナリルに向けて投げつける。
木槌は回転しながらナリルに向かったが、ナリルは薙ぎ払う様に魔法弾を木槌に当てて弾き返した。
木槌は明後日の方向へ飛び、着水する。
「おう、サリー。惜しかったなぁ!」
いよいよ追いつかれると思ったその時、通り過ぎた桟橋の上から何かが放たれた。
──それは、矢だった。
放たれた一本の矢が放物線を描いてナリルの乗る魔動船の横っ腹に突き刺さった。
「……あ?」
ナリルは舟に刺さった矢を見つめる。
よく見ると、その矢にはロープがしっかりと結び付けられていた。
視線で辿る。
ロープの根元は桟橋の柱に結びつけられている……そして、舟が前進するにつれて徐々に張り詰める。
「やっべ……」
ナリルがそう漏らした時にはもう遅かった。
ロープがピンと張った瞬間、舟は制御不能となり、まるでコンパスで円を描く様に大きく左回りに蛇行しはじめる。
「うわ、うわああああ!」
そして──魔動船は川面に突き出した岩場へ激突。甲板が裂け、船体は粉々に砕け散った。
ナリルは空中へ投げ出され、岩の上をゴロゴロと転がる。
「………………」
一同は呆然としたまま言葉を失った。
「え? 今、何が起きた?」
「誰かが桟橋から矢を放ったみたいだな……」
リグとサリーが、ぽかんと呟く。
「誰かって……こんな芸当出来るのは一人しか居ませんよ。アアラです」
バンビはへなへなと力が抜ける様にしゃがみ込んだ。
「え? アアラがやったの? 凄い! かっこいい!」
イヴァは興奮して飛び跳ねる。
「ちょっとイヴァ、舟の上で跳ねないでください……揺れる」
「あ、ごめんなさい……」
バンビに叱られて、イヴァはしゅんとなる。
「はははっ! しかし、オレたちがここを通るってよく分かったな、アアラは」
「一応、水路から川を下る計画は伝えてはありました。あのロープも僕がアアラに託したリュックに入っていたものでしょう。しかし、まさか見張っていたとはね。恐ろしい人です……」
「ほんとだな」
リグは楽しそうに笑う。
「はぁー、疲れたぁ! 流石にもう何も起きませんよね?」
バンビは舟の上に仰向けに寝転んだ。
サリーが近づき、バンビの頭を撫でる。
「お疲れさん、やっぱお前は天才だったよ、バンビ」
サリーが微笑みかける。
「ふふふ……だから言ったでしょう。計画とは、周到な準備と練りに練った思考の上に成功という名の到達点が──
「はいはい、分かった分かった」
サリーは苦笑する。
バンビは、しばらく無言で空を見つめる。
そして、満足気に目を閉じた。
胸中は、計画を成し遂げた達成感で一杯になっていた。
【作者より】
リグ達による、イヴァ救出劇を見守って頂き有難う御座いました!
この作品が初めて書いた小説なので、不安しかありませんが……楽しんで頂けたなら幸いです。
次回より 第三章 境界の潮風編 がスタートします。
塔を抜けても、まだ波乱の展開は続きます。
引き続き読んで頂けたら凄く嬉しいです。
(*´꒳`*)




