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白月のエルフ  作者: 鳥部 本太郎
第二章 禁忌に抗う者たち

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22.エルフ脱獄大作戦_11


 ──バンビは、水で満たされた貯水槽の中に浮かぶ小舟を目指して駆け抜けた。


最初に小舟へ飛び乗ると、全員に向かって叫ぶ。


「皆さん! 急いで乗って乗って下さい!」


 リグとイヴァが続き、その後ろからサリーとディンが飛び乗った。

 ディンが着地した瞬間、小舟が大きく揺れる。


「おいディン! もうちょい静かに乗れって! 体重を考えろ!」

 サリーが文句を飛ばす。


「ごめんごめん! でも全員乗れたじゃん!」

 ディンは悪びれもせず、何故か楽しそうに笑う。


 バンビはポケットを探り、捻られた紙の塊を取り出した。


 それを甲板に置き、火打石を取り出してカチンと火花を散らと、メラメラと紙が燃え始めた。


 立ち上がり、両の掌を紙へ向けてサイコキネシスを発動する。燃える紙片がふわりと宙に浮かび、ゆらゆらと漂った。


「さぁ! 脱出劇の超メインクライマックスです! 皆さん、耳を塞いでください!」


 燃える紙はゆらめきながら、水門の木板──水の出口を塞ぐ巨大な板へと進んでいく。


 ──そのとき、広間の扉の方から怒鳴り声が響いた。


「な、何をしている貴様ら!」


 一人の兵士が慌てて駆け寄ってくる。

 サリーはバッグから樹脂製の木槌を取り出した。


「チッ……盛り上がってる時に、水差すんじゃねぇ!」


 サリーは小舟から飛び出し、兵士の鉄兜めがけて木槌を振り下ろす。

 

 ドゴッ! と鈍い音が響き、兵士は「ぐおお……」と呻きながら仰向けに倒れた。


「ナイスですサリー! 点火します!」


「おう、ちょい待て!」

 水に落ちたサリーを、ディンが慌てて引き上げる。


 バンビの操る火の塊は、ゆらゆらと水門の板の裏側へと降下していった。


「ふふん……なんとそこには……大量の火薬が……!」

 バンビが実況するように呟く。


「脱出劇のフィナーレといえば、もちろんこれでしょう! 爆破します! 3……2……1……!」


 ──ドオオオーーーン!


 爆発の衝撃が塔全体を揺るがした。


 風圧が肌を打ち、木板がミシミシと音を立てて真っ二つに割れる。


 その瞬間、水圧に押し出された水が「ドドドドオオォォ……!」と轟音を立てて水路へ流れ出した。


 小舟はその流れに乗り、勢いよく水路へと進み始める。


「うおおーーっ! 最高だぁぁ!!」

 サリーが歓喜の雄叫びを上げる。


 ディンはオールを握り、「行け行けーっ!」と叫びながら進路を調整する。


 小舟が水路へ差しかかると、急激に速度を上げて坂を滑り落ちた。


「きゃああーーーっ!」

イヴァが恐怖の悲鳴を上げる。


「はははっ! すっげぇな、これ!」

 リグが笑い声を上げた。


 小舟は勢いよく水路を駆け抜け、裏口を突き抜けると、そのまま川へと飛び出した。

 水飛沫が上がり、小舟は水面れ着水する。



 ──陽の光が水面に反射し、きらきらと輝く。


 小鳥のさえずりが聞こえ、先ほどまでの騒動が嘘のように穏やかな風が吹いていた。


「……これは、大成功と言っていいですよね?」


 船首に座るバンビが振り返って一同に問い掛ける。


「ああ! もちろん!」

 リグが笑って答えた。


「っしゃーーー!!」


 一同は歓喜の声を上げた。


 ──その中で、イヴァが心配そうにリグへ近づいた。


「腕を見せて!」

 促され、リグは苦笑いしながら両腕を差し出す。


「ひどい火傷……痛むでしょう?」

 イヴァは声を震わせた。


「げっ、なんだその腕!」

 サリーが眉をひそめた。


「ナリル先生の魔法弾がちょっと強力でさ……まぁ平気だよ、こんなの」

 リグは虚勢を張るが、腕はじんじんと痛んでいた。


 イヴァはリグの腕にそっと手を翳す。

 すると、手のひらからポゥ……と柔らかな緑の光が溢れ出した。


「リグ……ごめんなさい。私がモタモタしてたから……本当にごめんなさい」

 イヴァの瞳に涙が滲む。


 だがリグは、別のことに心を奪われていた。


(うおお! イヴァに、初めて名前を呼ばれたっ……!)


 火傷の跡はみるみるうちに消え、皮膚が元通りになっていく。


「あっ……すげぇ! もう全然痛くない! イヴァ、すげぇな!」

 リグは無駄に腕をぶんぶん振り回す。


「よかった!」

 涙目で笑うイヴァを見て、リグは思わず赤面した。


「な〜にデレデレしてんすか……」

 バンビがじっとりとした目を二人に向けながら茶化す。


「はっ!? してねぇよデレデレなんか!」

 リグは慌てて取り繕う。


「いやしかし、素晴らしい能力ですね。イヴァの治癒能力は」


「あ、ありがとう。私にはこれくらいしか出来ないけど」

 バンビに褒められ、イヴァは控えめに笑った。


「うーん……いよいよ不可解ですね。なぜこの島の連中はそこまでエルフを忌み嫌うのでしょう。害があるどころか、こんなに凄い能力があるのに」


「それは俺も思った。まぁ、俺らも初めは厄災って固定概念に囚われてたけどな、なんか……変だよな? この島って」

 サリーもバンビに同意する。


 その時、『塔の()(がみ)』が小舟の近くまで飛んで来て並走した。


「あっ、鷹さん!」

イヴァが声を上げる。


 鷹はイヴァを見つめて、「クアー」と鳴いて去っていった。


「さっきはあの鷹に助けられたんだ」

 リグはしみじみと語る。


 しかし、イヴァは何故か不安そうな表情を浮かべると、後方に振り返る。


「ん? イヴァ、どうしました?」


「まだ来てるって……後ろから」


「……え?」

 バンビは小舟の後方に視線を移した。


 一隻の舟がこちらの小舟を目指して水上を走っている。乗っているのは、兵士とナリルだ。


「いやいや、ナリル先生、流石に執拗(しつこ)過ぎますって……」

 バンビは呆れ返った。


「兵士はさっき俺が倒したよな? いや違うか。そーいや、もう一人居たわ」

 サリーが呟く。


「ねぇねぇ……なんかあの舟さ、速くない?」

 ディンが青ざめながら舟を指さした。


 言われてみれば、ナリルの乗るその舟は明らかにこちらの小舟よりも速く水上を走っている。

よく見ると舟の後方からは魔法の霧が噴射されていた。


「うぅ。魔動車の次は……“魔動船”ってところでしょうか。この状況は何と言うか……最悪ですね」


 バンビは頭を抱えた。


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