11.決意の時
「これが、イヴァが捕まった経緯だ」
話を終えたアアラに対して、しばらく誰も声を掛けられなかった。
秘密基地の中に重々しい空気が漂っている。リグは罪悪感で胸が詰まるのを感じていた。
「イヴァは……あの場で私を助けたらどうなるか。エルフの力を使ったらどうなるか分かっていたはずだ。それなのに私の為に力を使った。そんなイヴァの覚悟を──あんた達は単なる興味本位で茶化しに行ったんだよ」
アアラは拳を固く握りしめ、目に涙を溜めている。
「そんな事情があったとは……知りませんでした」
バンビがポケットからハンカチを取り出し、アアラへ差し出す。しかしそれは手で押し返された。
「要らない、もういい。言いたい事を言って、スッキリした」
目元を手のひらでぞんざいに拭い、アアラはバンビに背を向ける。
「私は救い出すよ……イヴァを、どんな手を使っても」
「……無茶です。あの塔からエルフを救うことは、恐らく不可能です。あなた一人で何が出来るって言うんですか?」
アアラは歩を止め、背を向けたまま答えた。
「わからない……でも、このままにはしておけない! イヴァが私を助けてくれたんだから、今度は私があの子を守る番なんだよ……死ぬ気ででも!」
そう言うと、アアラは「さようなら」とだけ告げて扉に手を掛けた。
──その瞬間、リグが咄嗟に椅子から立ち上がり、叫んだ。
「待って!」
一同は一瞬で静まり返った。アアラは振り返り、リグに目を向ける。
リグは下を向いたまま、罰が悪そうに話し始めた。
「あのさ、ちょっとオレ……今からとんでもない事言うんだけどさ。みんなに頭おかしいって思われるかもしれないんだけど──」
「やろうぜ」
リグの話が本題に入る前に、サリーが突然割って入った。
「……え?」
間抜けな声を上げるリグを見つめ、サリーは微笑んで続ける。
「救い出すんだろ? あのエルフを。俺も乗ったって言ってんの」
リグは、自分の言いたかったことをサリーが瞬時に察したのを見て感動した。
「お前……なんでわかったんだよ。オレが言いたかった事」
「わかるさ、長い付き合いだしな。というより、俺も気が変わったんだよ。あのエルフには俺らも借りがある。そのまま死なれると性に合わねぇ。なぁ? ディン」
サリーはわざとらしくディンに話を振る。
「ええっ、僕!? えーと、なんかよくわかんないけど……サリーとリグがやるなら僕も乗るよ……友達だし」
サリーがディンの背中をバンと叩く。
「よく言った! 偉いぞディン!」
リグはバンビに問いかける。
「バンビ、お前はどうする?」
バンビはしばらく目を閉じて思考を巡らせた後、ゆっくりと口を開いた。
「言わせて貰いますが……あなた達は馬鹿ですね」
(当然の意見だ……)リグは心内で呟いた。
「わかってるよ。無茶苦茶なこと言ってるのは。だから……バンビはバンビの正しいと思った答えでいい。無理にオレ達に合わせる必要はない」
バンビは深く肩を落とす。
「……僕が言いたいのはそこではないです。いいですか? 計画とは、周到な準備と練りに練った思考の上に成功という名の到達点があるのです。思い付きで『やろうぜ! イェーイ』では、100%失敗します!」
バンビは机にバンッと手を置いた。
「龍神祭まであと六日。明日からここで毎日作戦会議しましょう! そして、絶対にエルフを救い出す! いいですね?」
サリーも立ち上がりガッツポーズをしながら大声で叫ぶ。
「よっしゃー決まり! 全員でやろうぜ! 名付けて、エルフ脱獄大作戦!」
呆気に取られた様子のアアラ。
「あの……正直、こんなに話の分かる人達だとは思わなかった。クズなんて言って悪かったね」
「クズだけではなく、非道、卑劣なども言っていましたよ」
嫌味っぽくバンビが追い打ちをかける。
「それは……本当に申し訳ない」
急にしょんぼりしたアアラを見て、リグが吹き出した。
「ははっ! アアラ、さっきまでの威勢はどこいったんだよ」
サリーが拳を前に突き出す。
「アアラ、一緒にやろうぜ。エルフ脱獄大作戦!」
サリーに合わせて、リグ、バンビ、ディンも拳を前に突き出した。
「みんな、ありがとう……」
アアラも拳を重ねた。
小さな誓いが、ひとつの灯となって空気を震わせる。
サリーが静かに声を上げる。
「せーの!」
「「「「「オー!」」」」」
その声は静寂を破り、未来へと響いた。
こうして──エルフ脱獄大作戦』が幕を開けた。
少年四人、そしてアアラ。
イヴァを白月の塔から救い出す作戦がいよいよ始まります!
第一章を読んで頂き有難う御座います。
(о´∀`о)
明日から脱獄編、スタートです!
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