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刃血鬼  作者: Omsick
六章 [四柱]血戦
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吸血…ではなく飲血

 生き残った系糸達は、いつシンジュに遭遇するか分かったものではない以上、このマンションから出るには危険過ぎる。かといって5人を詰めるには狭いため、それぞれが別の部屋でしばらく過ごすことになった。

「まず血走と系糸は同室。俺と交河も同室。療病はそもそもここに住んでたわけだし一人でいいだろ」

 収川が部屋を独断で振り分けたところで、系糸から横槍が入る。

「“まず”って何ですか?」

「血走と同室は嫌か?」

「そういうわけじゃ…ない、ですけど」

「…あー!なるほど!そうかそうか…系糸、そういやお前高校生だったな!はいはい…」

 今度は更に療病が乱入。

(よからぬことを察知された気がする…)

「血走は、性格はアレだが――」

「はぁ!?」

「見た目はかなり美人だ」

 血走の容姿について言及したことは無かったため説明しておく。一言で言うなら、「ミディアムボブの大人顔スレンダー」。かといって「お姉さん」というよりは「ボーイッシュ」のほうが雰囲気としては近い。

「オエッ…冗談でしょ?ちょっと吐いてくる」

「まぁ待て、単純な話だ。赤亡、お前は照れているんだろ?」

「は?」

 普段の敬語を忘れ、思わず言葉が荒くなる系糸。

「よし療病、決めた。私があんたと寝るから、赤亡くんを一人にしよう。そしたらいつでもあんたをボコボコに出来るから」

「俺が寝込みを襲っても構わねえってのか?」

「…やっぱやめとく。赤亡くんに委ねたほうが早いや」

「えーと…じゃ、じゃあ…血走さんの部屋で…」

「おっけい。というわけで、解散っ!」

 ―――

 一夜明け、昼。

「刃血鬼は日焼け対策しっかりしとけば焼けないよ。吸血鬼なら余程のことが無い限り確実に死ぬからね」

 思い返せば、怨野は常に厚着をしていた。なぜ体育祭に出ようと思ったのかは分からないが、ともかく、練習中も常にジャージと帽子を外さなかった。

 徐々に、ピースがはまっていく。軌跡を辿るようにして、系糸は考えていた。

「…怨野の目的は何だ?何で僕が…」

 ふと思い浮かんだのは幸辛の顔だった。

「そういえば、僕は五亡家だったな…」

 刃血鬼の名門とやらの血を引いている以上、確かに系糸には何らかの才能があるかもしれない。

(けど…)

 だったらなぜもっと早く刃血鬼化させなかったのか。それこそ、知り合ったその日の夜に襲えば良かっただろうに。

「ああもう知ったこっちゃない。強くなれば会ってくれるわけだし…作戦を成功させないと、成長すらできない。目の前のことに…」

 突如、系糸の視界が歪んだ。

「あ…何これ…」

「さーてと…って、赤亡くん!?」

 いざ外に出ようとした血走が振り向くと、系糸が青い顔で倒れていた。

「…さては」

 血走はドアを乱暴にこじ開けて外に出ていった。数分後、戻って来た血走は、2Lボトルに大量の赤い何かを詰め込んでいた。

「ひとまずこれでいいかな。ほい、飲んで」

 そのボトルに入っているのが何かを悟った赤亡は冷や汗をかく。


「…え?血?」

「うん。忘れたの?赤亡くんも今は立派な刃血鬼だよ?普通は血刃から注射みたいに摂取するんだけど…短時間で満腹になりたいなら、こういうふうにボトル詰めで飲ませたほうが早いんだ」

「そ、そうなんですか…もごっ!」

 口に血液のボトルをねじ込まれた。

「ゲホッゲホッ!…久しぶりに、口に物を入れた気がします」

「なんなら血液を飲んだのも初めてでしょ?前は寝てる間に、私が取ってきたやつを摂取させてたんだけど…」

「だからか…」

 三ヶ月前。刃血鬼になりたての系糸は、よく食べ物の夢を見ていた。「美味そう」という感情こそあったものの、起きてから口寂しくなることなどは特に無かったのでスルーしていたが。

「つまり血液の味を感じるのはこれが初めてって事になるね。どう?味は」

「…鉄じゃない。ぶどうジュースみたいだけど…何ですかこれ」

「知らないよ、飲む人によって味が変わるんだから。ぶどうジュースだと思うならそうなんじゃない?」

「せめて吸血鬼らしくワイン味とかが良かったな…」

「…あれ、赤亡くん高校生だよね?ばんばん罪競い殺してる私が言うことでもないけど、未成年飲酒?」

「酒なんて飲んだことないですし、そういうのってビールとかじゃないんですか?」

「知らないよ今の人間の文化は。私が刃血鬼になったの五十年前だし」

「五じゅっ…ああ、そもそも人外だった」

「そうそう。赤亡くんも慣れたほうがいいよ」

「慣れたほうが…」


(慣れたら。もし慣れてしまったら…その時が、本当の、人間としての終わりじゃないのか。僕は…)

 系糸は、瞬沢との戦いを思い出していた。終わった後の恍惚感は、既に人間をやめているという証ではないのか。

 精神が、既に慣れ始めている証拠では無いのか。

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