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刃血鬼  作者: Omsick
五章 [死生朱雀]
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撤退戦:2

「逃げ回るばかりじゃん。君だけが撤退してどうするつもり?」

(答えるな…私が…最低でも三人は…)

「疲労困憊満身創痍の様子だけど、正気?」

「刃血鬼になったときから…正気なんてとっくに捨ててるよ!」

「…なんか、ウザくなってきたな。もうちょっと甚振りたいところだったけど、いいや。まとめて葬ってやる」

(ッ…やば!)

 シンジュの毒牙が向けられたのは、系糸含む戦闘不能になった連合軍のメンバーだった。

「今だ!震奮さん!」

 涙混じりの声で血走が叫ぶ。

「これで…最後だ…共鳴慄震!!!」

 応えたのは、大爆発によって倒れたはずの震奮だった。地面が強く揺れ、転倒するシンジュ。

「誰だよお前は…!」

「後は…頼んだ…」

 震奮は近くにあったリングに触れ、シンジュに向かって飛び出した。

(…地震によって僕を転倒させたのは分かるが、死にかけのこいつが何で僕に向かって…)

 震奮は紋傷ではなく、懐からナイフを取り出して自分に刺した。

(…あいつの刃術か…!)

 まだ生きていた[白虎十字軍]のメンバーから引き抜いた[爆賛會]の血刃。刺さっている者の死亡時に爆発を起こす刃術。

(こいつの傷は火傷痕、つまりこいつのダメージの主要因はあの爆発のはずだ!さっきの場所から震奮を持ってきた後、[白虎十字軍]から血刃を回収し、仕込みまでさせた!?いくらなんでも無理があるだろ!?)

 シンジュの脳裏に浮かぶ敗北。自尊心の強い彼にとっては恥辱の極みである。

(仕掛けは完成した。後はここに放り込めば…)


 彼女は吹っ飛ばされた後、療病と震奮、それから残った連合軍のうち最も屈強な者を回収し、[赤連]拠点前に配置。道中に幾つもリングを仕掛けておき、療病が震奮をある程度回復させたと同時にシンジュの近くに配置。収川から例の血刃を受け取って震奮に渡し、シンジュに血刃を放った。

 彼女の「仕掛け」はシンジュを倒すためのものではない。窮地の罪狩り達を安全に輸送するためのものだ。

(優先すべきは赤亡くんと収川さん。最初に使うべきリングは覚えてる。後は誘導しさえすれば…っ)

 突然の目眩に襲われる。彼女の身体は、負傷状態で沸血を発動し続けたうえに、特殊刃技をも維持していたことで既にボロボロであった。

(お願い…あと少し持って…)

 系糸と、隣にいた収川を掴み、即座にそこでリングを生成。「仕掛け」の起点となるリングに射出した。

「行っけぇぇぇぇ!!」

「させな…チッ、速すぎる!」

 空中で作った輸送路を猛スピードで駆け抜ける系糸と収川を見届け、血走は辺りを見回した。

(…あと一人…交河さんか)

 血走は輸送路を経由して本陣に引き返した。

「僕を出し抜いただと?」

 どんどん小さくなっていく血走を尻目に、シンジュは歯ぎしりをした。

「次に会ったら、確実に仕留めてやる」

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