遭遇Ⅱ
(向かうべきなのか…?いや、でも残りの戦力で勝てるわけ無いって言ってたし…)
系糸は、有崇我を倒した後、ひとまず収川達と合流するために走っていた。
系糸は気づいていないが、連戦が続いている関係上、彼の身体は最早満身創痍と言って差し支えないほどに衰弱しきっていた。
興奮と緊張が彼の脳をぐちゃぐちゃにし、疲労が無いように錯覚させているのだ。
(生きて…帰る…一度…)
時刻は4:30。2時間後には日の出が迫っており、日光を防げる服装でなければ悉くが焼け死ぬ状況であった。
[白虎十字軍]を使った非道かつ卑劣なあの大爆発を受けた者達の大半はまだ辛うじて息があり、その中には意識がある者も無数に含まれていた。
「系糸!」
聞き覚えのある声。収川である。
「収川…さん…」
「何が…」
(右腕が千切れている?)
系糸は、声を絞り出す。
「有崇我…じゃなかった、黄田が裏切りました。多分倒したと思うんですけど…ああ、心做さんから一つ忠告がありまして」
「何だそれは」
「“シンジュとは何があっても絶対に戦うな”と…」
「もとよりそのつもりだ。良くて戦闘不能、最悪の場合、余す所なく食われるかもしれかい」
「カニバリズム?」
「いや食鬼行為に問題はない。ただ、自分が吸収された体で仲間に手を出されるのは屈辱というに他無いだろう?」
「問題ない…え?そもそも刃血鬼なら主食は血じゃ…」
「食べるぞ。殺した罪競いの肉とかを剥ぎ取ってな。…お前には言わないほうがよかったか」
「…耐性つけないとな」
系糸は静かに呟いた。
「で、どうするんだここから。本陣にはシンジュ、血走と交河は音信不通。[白虎十字軍]はもれなく自爆で壊滅状態。俺等ほぼ詰んでるぜ?」
「はい…消えた血走さんと交河さんの捜索、まだ生きてる人達の救出を含めたら…待てよ?」
系糸が顎を押さえながら考えていると、ふと何かを閃いたように顔を上げた。
「収川さん、一つ質問があります」
「何だ?どうでもいいことなら後に――」
「刃血鬼って、厚着をすれば日光に当たっても問題ないんですか?」
「え?ああ、とんでもなく暑いが、すぐに焼け死ぬことはない。だが何故藪から棒に…」
「じゃあ血走さんを最優先で探したほうがいいと思います。現状このメンツの中では最速だと思うので、欺偽さんに回復してもらってから他の人を探せば…」
「一考の余地ありだな。だがここで血走を酷使すると、いずれシンジュに潰される可能性がある。考える時間をくれ」
「あ、見つけた」
直後、その場の全員の背筋が凍った。乾いた木の薫りと共に押し寄せるのは、過剰なほどの殺気であった。




