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刃血鬼  作者: Omsick
五章 [死生朱雀]
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脱出作戦

「迷眼、君の盟団は確か[調査隊]と情報共有していたよな?」

「まぁ、そうだ。この空間においてなら、何よりも刃血鬼の事に詳しい自信がある」

「なら質問させてくれ。刃型(タイプ):事象術(フェノメン)の人物Xがいたとする。そしてXは、ある場所で刃術を発動させて、維持したとする。この鬼神府の出入口にある、すこぶる頑丈な木のように」

 心做はそう前置きした。

「Xが別の場所でダメージを負った際、その刃術は解除、あるいは弱まったりするのか?」

「わっかりにくいわね。もっとちゃんと噛み砕いてくれる?」

 速華が舌打ちしながら心做を睨む。

「早い話、真樹がダメージを負えば、私達をここに閉じ込めているあの木がどうにかなったりしないのか、という話だ」

「…血液が不足して刃術を維持できないなどなら分かるが、能力が弱まることは…すまん、少なくとも俺は知らない」

 迷眼が残念そうに首を振った。

「というか、お前は経験がないのか?その能力で捕らえた敵が、重傷を負って帰ってきたらいなかった等ということは」

「重傷を負った経験が無いから分からん。そもそも、私は事象術ではなく強化術(アルマレ)だ。もしかすると、能力の枠組みそのものが違うかもしれん」

「その可能性もゼロじゃないな…まぁでも幸い」

 迷眼は全員を見てから言った。

「試せるメンツが揃ってる。俺がこの伸びてる谷崎(ボンクラ)に刃術をぶつけるから、天竹が俺を思い切りぶん殴れ」

「殺しても文句言うなよ?」

「言わないさ。“文句”はな」


 迷眼が準備をしている間、心做は系糸と通信していた。

「系糸、今そちらはどうなっている?」

〈本陣にシンジュが襲来、血走さんとは連絡がつきません…[爆賛會]は全滅、[白虎十字軍]は自爆しました〉

「…血走?彼女は滅多なことでは倒れないはずだが…?」

〈血走さん、総指揮官なんです。多分シンジュにやられたんじゃ…〉

「待て、眩奈は?本来なら奴が総指揮官のはずだろう?」

〈血走さんが「眩奈さんのからの推薦〜!」みたいなこと言ってたので、多分その人は血走さんに仕事を投げてます〉

「…分かった。後できつく言っておこうか」

 心做は、鉄塊を持たせたら限界まで小さく潰れそうなほど拳を握りしめた。とはいえ心做の怒り方はこれが普通である。

「で、眩奈はどこに行った?」

〈確か血走さんが、「円火とやるんですか!?」みたいなことを話していました。僕は二人の強さを知らないので分かりませんが、互角とか言ってたので危ないかも〉

「分かった…ああ、一つ言っておかなければ」

〈何ですか?〉

 走っているのか、短い呼吸を繰り返しながら、通信先の系糸が聞き返した。

「真樹と会っても絶対に戦うな。[四柱]内の序列は上から育月真樹、水の松海(まつうみ)潤波(じゅんは)、雷の音絶(ねだ)神御(しんご)、火の茜亡円火。真樹に関しては、私がある程度本気を出さなければ勝てない。現状の戦力ではまず全滅だ」

〈…分かりました〉

 通信は切れた。


「…ねえ、何の滞りも無く事態が進んじゃったから言えなかったんだけど」

 速華が言いかけた。

「どうした?」

「いや…さっき心做さんが谷崎を殴ったでしょ?暴力行為解禁みたいなことを言って」

「そうだな」

 迷眼が相槌を打つ。

「私達は知らなかったけど、心做さんには鬼神府に関する何かしらの権限があるんでしょ?」

「ある」

 会話の途中から、心做が割って入ってきた。

「ただ、伝える必要がどこにもなかった。普段鬼神府内で戦うことなど無いだろう?今回は谷崎から仕掛けてきたから解放したまでだ」

「じゃあさ、それなら刃術を鬼神府内で使えるようにもできるわけ?」

「できるが、()()の破壊は恐らく無理だろうな」

「えっ?」

 心做は、側頭部をポリポリと搔く。

「先程[調査隊]の斑鳩(いかるが)がアレに攻撃を加えた。だが、単発火力では上澄みに入る斑鳩の攻撃でも傷一つつかない程頑丈だったそうだ」

「じゃ、じゃああんたの特殊刃技で――」

「喜怒哀楽は使い捨てだ。使えばその分ストックが減り、弱体化する。予想だが、あれは怒りをストックの七割以上注ぎ込んで爆破しないと破壊できないと見える」

「じゃーどうすればいいのよ!!」

「それを考えた末、今から実験するという結論に至ったんだろう?パニックになるのも分かるが一度落ち着いてくれ」

 心做は、子供に話しかけるように優しく言った。

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