表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刃血鬼  作者: Omsick
五章 [死生朱雀]
50/69

悲惨の追撃戦

 ――[死生朱雀]、本陣。

「いいか。さっきの大爆発は、あの連合軍によるものだ。さて、お前らはどうするべきだと思うか?」

 [爆賛會]のメンバーが、少年たちに問いかけた。

「刃血鬼が感情で覚醒するように、お前らも感情を解放すれば強くなれる。やるべきことは奴らを倒すことじゃない、憎むことだ。憎めば憎むほど、力は強まる」

 ―――

「…[白虎十字軍]に変化が見えるっす」

 軽装でショートヘアの女性に、収川が問いかけた。

「具体的には?」

「目が血走ってるし…なんか、全体的に、“淀んでる”んすよね」

 名前は査繰(さぐり) 調(しらべ)。[調査隊]の大半がそうであるように、戦いではなく斥候としての役割が強い。

「そういや、見立てでは敵戦力300人のはずだが、現状は?」

「[死生朱雀]としての人数っすか?それなら…ざっと100人っすね。[爆賛會]と[白虎十字軍]の比率が1:4くらいと思うっす」

「で、その淀んだ集団が目ェ血走らせてこっち向かってきてんのか?バケモノの俺らが言うことじゃねえが、軽くホラーだな」

 収川は銀の剣を取り出し、査繰に渡す。

「…え?」

「お前も戦え。人数が足りん」

「待つっす!あたし[調査隊]非戦闘員っすよ!?」

「そーか、そーか。じゃ報酬の1000万円は無しだな」

 ピクッと、調の身体が反応した。

「今、なんて言いました?」

「1000――」

「さてと…行くっすよ収川さん。[爆賛會]、全員ぶち殺してやるっす!!」

「その意気だ」

 収川は続いて、系糸の方を向く。

「なあ、系糸。どうだ?銀剣を持ってみた感想は」

「めっちゃ軽いですね」

「それは刃血鬼だからだな。お前の血刃は投擲メインだし、銀剣をメインウェポンとして使ってみてもいいかもしれねえ」

「かっこいいですけど、僕の戦闘スタイルに合わないんで無理ですね…」

 

 両軍衝突、一分前。

「いいか、俺ら連合軍の目的は殺戮じゃねえ。[死生朱雀]の瓦解、[白虎十字軍]の無力化、[爆賛會]の壊滅だ。最悪、[白虎十字軍]は無視してもいい。とにかくその奥、[爆賛會]を追撃する」

 30秒前。

「…行くぞ」

 10秒前。

「突撃!!」

「捕縛血糸!」

 系糸はまず左手の人差し指からの糸で一人を捕らえ、「次ィ!」と言いつつ右手の薬指から更に別の糸を伸ばし、数人の足に引っ掛けて転倒させた。

「まだ子供だってのに、銃なんて持たせないでよ。僕も大概だけどさ」

 血刃と銀剣を見比べながら自嘲し、転倒させたうちの一人が持っていた拳銃を取ろうとした。

「やめろ!」

 系糸の手が止まる。

「お前ら罪競いは…僕の親だけじゃなく、抵抗する手段まで奪うのか!?」

 涙で顔をグシャグシャにしながら言う。その目には憎悪が籠もっていた。

「いや…そもそも僕ら罪競いじゃ――」

「嘘を付くな!…僕はお前らを倒せなくていい。皆で倒せれば、それでいいんだ!」

 彼は系糸から銀剣を奪い取り、振りかざした。

「…やめろ」

「皆、」

「やめろォォォォ!!!」

「罪競いを、倒してね」


「「我らの心は、シンジュ様と共にあり」」

 一緒に捕まっていた者達が一斉に何かを唱え、彼はそのまま、自らの心臓を貫いた。

(クソッ!どういう刃術か知らないけど、現代で子供に集団自決させるとか正気じゃない!しかもこの子ら、爆弾持ちだろ!?[爆賛會]はどういう思考で動いてるんだ?)

 系糸は沸血を発動し、全力で範囲外へと逃走した。しかし、系糸の逃走方向は後ろではない。

(…いや、むしろチャンスだ。思うところは山ほどあるけど、これで[白虎十字軍]の意識は少しだけ爆発の方へ向く)

「収川さん、今からこっちに呼び出せる人はいますか?」

〈悪い、今んとこ黄田しかいねえ〉

「分かりました。なるべく急いでお願いします」

 前方、[爆賛會]を目掛けて走っていた。

「…これで仕掛けは完了」

 彼の特殊刃技は、沸血の習得時期に反し未だ判明していない。だが、この《《仕掛け》》のように、頭脳によってそれを補っていた。

「…上から行ったほうが速いか?」

 系糸は数棟先のビルの屋上に血刃を投げ、ジャンプ。屋上に着地し、再び走り出した。

「なんか、忍者になった気分」

 軽快にビルからビルへと飛び移りながら、先回りする方法を系糸は模索していた。

「あー…ダメだ。年季と、単純に大人と子供の能力差で追いつけない」

「系糸!」

 ビルの下、後方より、系糸を呼ぶ声。

「えー…と」


「あれは黄田おうだれん。本人は強くもないけど、なんかカリスマ性がある」


 カリスマ、民衆を惹きつける能力。彼の姿は特別個性が際立ったものでも無いが、会う者の心に強く刻まれる。

 刃術では無い「彼が持つ何か」に、系糸も嵌まっていた。

「黄田さん!」

「加勢した。一旦降りて、私の手を掴め」

「はい!」

 系糸は言われるがまま飛び降り、「うっわ全然痛くない」と刃血鬼の丈夫さに感心しながら、黄田の手を掴んだ。

「行くぞ」

 黄田は血刃を背後に投げ、巨大化させた。

(巨大化?大宮のとは別物か?)

 二車線分のサイズに巨大化した血刃を両足で蹴り、爆発的に加速。

「うわッ!」

「その反応だと、血走と飛行したことは無いようだな」

「共闘してないんで…ちょ速い速い!」

 黄田はそのまま敵陣へ突っ込み、再び血刃を巨大化させ、水平に振るった。

「ぶった斬る」

 10人ほどの身体が切り裂かれて上下に分離し、下半身からは血が噴水のように舞い上がっていた。

「突っ切るぞ」

「はい!…って、待って、これって…」

 系糸の心配は当たった。

 噴水ならぬ噴血を突っ切り、真っ赤になりながら系糸は遥か前方へ放り出されたのだ。

「挟み撃ちするぞ」

「言うのが遅いんですけど!?それに――」

 何度か回転しながら、逃走する[爆賛會]の上を飛び越え、地面に叩きつけられた。メガネのレンズが、片方割れている。

「痛った…あーもう!何なんだあの人、雑だし荒いし」

 こぼしながら系糸は、大通りの左右のビルに血刃を投げつけた。

「…一対多、それもド初心者とかほんとに運が悪いな…はぁ」

 連血糸刃を作り出し、系糸は立ち上がる。

「いや、そもそも何で投げ飛ばされた?仕掛けも無駄になったし…」

 残る[爆賛會]残党の前に、一人で立ちはだかる系糸。

「黄田さん、多分僕より百倍くらいは強い…決めた。無理そうなら逃げる逃げる一択!やれるだけやってやろうじゃんか!」

 投石器の要領で、系糸は回している最中に連血糸刃を解除し、血刃を投げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ