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刃血鬼  作者: Omsick
五章 [死生朱雀]
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硬きこと鉄の如し

 系糸の投擲した血刃は、威嚇と挑発を兼ねいる。積極的に戦いたくは無いが、こっちに来れば場合によっては一網打尽に出来るという二つの心情によるものだった。

「か、かかって来なよ!」

「あ?上等だよ!」

 一斉に突撃してくる[爆賛會]。

(まだだ…もう少し)

 接近。接近。

(…あと、1秒)

 工鳴七を倒したときと同じ手法。極彩の糸を張り、通過時の勢いによってみじん切りにする。

「やっ…」

(いや、喜んだらダメだ。悟られたら作戦がパーになる)


「止まれ!踏み込んだら切られる!」

「何の刃術だ!?」

「聞いてねえよこんな奴!」

 案の定、[爆賛會]は大混乱に陥った。そして、それを見越していた系糸は、新しく作成した連血糸刃を振り回しながら「ビビってんのか?僕みたいなガキに!」といい再び投擲。

「上等だよコラァ!」

「殺す!沸血ッ!」

 [爆賛會]の内の一人が、血刃を地面に突き刺し、指を鳴らした。

「特殊刃技――」

「させない」

 先程血刃を地面に突き刺した人物から光が溢れ出す。

「うッ!」

「お前は帰れ」

 眩い光に系糸が目を閉じる。

 まともに見えるようになった頃、その者は消えていた。

「…は?」

「系糸。悪い、足止めなんていらなかったな」

 彼が指を鳴らした。足元の血刃は爆炎を上げ、周囲の者達諸共爆散した。


「す…すごい…いや違う」

 系糸は黄田に歩み寄った。

「なんで僕投げられたんですか?」

「君に、僕の力を見せつけるためだ」

 直後、系糸の眼を目掛けて、黄田の血刃が一直線に伸びた。

「…」

 系糸は唾を飲み込んだ。

「僕の刃術を明かそうとは思わないが、行動から予想はつくだろう?」

「…複数刃術持ち、とかですか?」

「正解だ。加えて、僕は君よりも強い。それは君も分かっているはずだ」

「そう…ですね」

 系糸は、無表情で応対していた。

「今、僕は君を脅している。そして、脅すという行為は、解放と引き換えに対価を要求する行為でもある。僕は今から君に要求をする」

 両者は固まったまま動かない。

「僕の傘下に入れ。君は、高い潜在能力を秘めている」

「…」

 系糸は答えない。

「[赤連]は余りにも人数が少ない。血走も中々の強さではあるが、心做のいない今、あれの盟団は無いも同然だ」

「今、なんて言いました?」

 系糸は、拳を握った。

「[赤連]は、無いも同然と言ったんだ。だから、僕のところへ来るべきだとな」

「へぇー、素晴らしい提案ですね」

「そうだろう?何もチャンスを捨てることは――」


「でも断ります」


 系糸は、突き付けられた血刃を弾き飛ばした。

(カリスマ性、刃術複数持ち、で僕より強い。にも関わらずわざわざ律儀に交渉を持ちかけてくるって事は、あまり戦闘が好きな訳では無い。で、雰囲気はかなり落ち着いているから、いきなり激昂して殴りかかってくることは無いだろう。さて、こっからどうしようかな…)

 ほんの少しの間を置き、黄田が口を開いた。

「交渉決裂だ。目撃者は殺す。[爆賛會(用済み共)]のようにな」

「死ぬわけにもいかないし、かといってあの人たちを裏切るわけにもいかない。どう転んだって、僕は不幸から逃れられない」

 息を荒くしつつ、系糸は不敵な笑みを浮かべた。

「なぜ、笑っている?」

「それは僕にも分からない。けど、これだけは言える」

 冷ややかな風が、二人の間に流れた。

「僕は、あなたに立ち向かえる」

 黄田は系糸の腹部を蹴り、ふっ飛ばした。

「僕を逆撫でするような事を吐かすな、新米刃血鬼が」

 間髪入れず追撃を加える黄田。

「立ち向かうだけなら簡単だ!温いんだよお前はッ!」

「違う!「立ち向かう」という行為は、持つ者しか成し得ない特権だ!勇気というチケットを持つ者しか!」

 黄田がもう一度、蹴るために足を伸ばした。


「…狙いは、これか」

 黄田は、系糸の計略を見破り、糸を切り裂いた。

(クソッ!勘付かれた!)

 あえて蹴られることによって口だけのハッタリ野郎と思わせ、油断した隙に、両手の指に開けた傷からタイミングよく糸を繋ぐ。蹴りの勢いで黄田の足をスライスする、という計略だった。

「こんな小細工で僕を倒そうとしたのか?呆れるな。まぁ、その精神だけは褒めてやろう。よくもまぁ、たかが糸ごときでここまで生き残れたものだ」

「派手な技で圧倒するより、弱い能力で四苦八苦するほうが好きなんですよ」

「そうか…しかし、弱い能力を活用するには何が必要か分かるか?頭だ。お前にはそれが足りなかった」


 黄田が、系糸の首を掻っ切ろうとしていた。

(…僕は死なない。根拠のない直感でしかないのに、その確信がある)

 系糸は、黄田より少しだけ、ほんの少しだけ早く自分の首を切断。耐え難い激痛を、戦闘によるアドレナリンで無視し、頭を少し上に持ち上げた。

 首を切断した。それはつまり、首と全く同じ太さの()が出来ているに等しい。

 頭と体を、系糸の糸が繋ぐ。その糸は、普段よりも赤黒く、そして光沢を放っていた。「特殊刃技:凝血糸刃(ぎょうけつしじん)!!」

 首の糸…というより、最早綱と形容すべきそれに当たった黄田の血刃が、音を立てて砕けた。

 系糸は刃術を解除し、頭と首を強引にくっつけた。

「僕はあなたを殺さないし、殺せない。だけど僕は、あなたに殺されることは絶対にない」

「…その潜在能力…もう少し我慢すべきだったかも知れん」

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