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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
30 森の中の素敵なおうち編!
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723 支え合い立つ

 ダラケルスは、フレットが嫌いだ。

 出会った瞬間から嫌いだ。


 より正確に言えば、ダラケルスはフレットのようなタイプの人間が嫌いなのだ。


 頭が良さそうで、偉そう。

 頭の悪い自分には見えない何かが見えていて、自分のことを小馬鹿にしてくる。


 そういう人間が、大嫌いなのだ。




 しかしそれでも、共感できる部分もあったりする。




 それは、フレットの言動の端々からにじみ出る、弟へのコンプレックスだ。




 ......ダラケルスにも、“弟がいる”。

 戸籍的に言えば、“かつては、いた”と表現した方が良いか。


 ダラケルスは成人前に籍を抜かれ、家から放逐されているのだ。


 彼は、その実......商業都市ゼナーリニから遠く離れた地の、領主の嫡男だった。




 幼少期から、ダラケルスの性根は変わらない。

 面倒くさがりで視野が狭く、無計画で素行が悪かった。

 幼少期には、地方領主の嫡男らしく教育をつけられていたが......不真面目なこの男はそのありがたさも理解せず、教育にあてられた時間をほぼドブに捨てた。

 居眠りをしたり、授業から逃げ出したり。

 彼が身に着けたことと言えば、文字の読み書きに簡単な計算、それと下級魔法の使い方くらいである。

 地方領主の嫡男としては、間違いなく実力が足りていなかった。


 一方で、彼の二歳下の弟は、優秀だった。

 真面目で勤勉で、頭が良かった。

 あと、顔も良かったし、魔力量も多かった。

 弟の実力はあっという間にダラケルスの遥か上まで伸び、誰もが弟を褒めたたえた。


 その様子を見て、幼いダラケルスは、すねてぐれた。

 素行は、さらに悪くなった。

 周囲の評価は、さらに下がった。


 結果として、彼は生家から放逐され、底辺冒険者としての今に至る。


 詳細について、長々とここで描写するつもりはない。

 そこにあるのは、自業自得で転げ落ちていくだけの......ただ愚かしいだけの人生だ。


 だから、ここで描写されるのは。




「た、ただみじめに、弟の咬ませ犬として生きてッ!!それで、終わりかよッ......!!」




 そんなフレットの慟哭を聞いて跳ねた、ダラケルスの心臓の音だ。


 ドキリ、と。


 それは、痛いほどに鳴った。


 ダラケルスは、共感性に乏しい。

 他人のことに、興味がない。

 社会性がない。


 しかし目の前に立つ、この嫌味で不快で口の悪い......ほんの少しだけ、自分と共通点を持つ小男の魂の叫びは。




 『みじめに生きて、それで終わり』という運命への、無念は。




 ダラケルスの、ヘドロが積もりきった彼の魂の奥底に隠れた何かに、届いた!




「ぐ......はぁ......」


 ダラケルスは、何かを考える前に立ち上がった。

 疲労と空腹と魔力切れで悲鳴をあげる重たい肉体に鞭を打ち、何とか重力に打ち勝つ。


 よろめきながら、一歩、二歩。


 嫌味な男に近づく。


 見ればこの小男、魔導銃で隠れ家が変形したバケモノを、撃とうとしている。

 目が悪いくせに。


 ふと、近くに小男の眼鏡が落ちていることに気づく。


 レンズを無遠慮に掴み、拾う。


 そしてそれを......小男の耳にかける。

 上から。

 ダラケルスは、背が高いのだ。




「......撃て」


 驚いて振り向いたフレットに、ダラケルスは短く言った。


「早く、しろ」


 体が、しんどい。

 正直、もはやしゃべるのも億劫である。

 できることなら、今の厄介な状況を、早く終わらせてほしい。


 それなのに。




「くッ......!!」


 フレットは、なかなか撃たない。

 眼鏡をかけられてすぐに、隠れ家の、なんだか光っている部分に銃口を向けはしたものの。

 撃たない。


 手が震えて、狙いが定まらないのだ。


「なんだお前......撃ったことないのか」




「仕方ないだろうッ!!私は商人だぞッ!!」


 ため息をつくダラケルスに、フレットは怒鳴り返した。


「おう......調子、出てきたじゃねぇか」


 ダラケルスは偉そうに怒鳴るフレットを鼻で笑うと、彼の後ろから腕を回し、魔導銃を持つフレットの腕をがっしりと掴んだ。


「これで、震えねぇ」


「......貴様、魔導銃を、撃ったことがあるのかッ!?」


「そんな高級なもん、触れたことすらねぇよ。オレは底辺冒険者だぞ......」




 だが、しかし。

 ダラケルスの大きな手は。


 支えは。


 フレットの震えをしっかりと抑えていた。




「......撃つぞッ!!」


「ああ」


 フレットは、大きく深呼吸してから。


「......撃つッ!!」


「ああ」


 ヒドゥン・インヘリターの魔力貯蔵器に、魔導銃の照準を合わせて。


 息を、止めた。




「ま、なんとかなんだろ」




 極度に集中したフレットの耳に、そんなダラケルスのつぶやきが届いた。


 ちょうど、その瞬間。




「75点ッ!!!」




 エミーが、叫んだ。

 すると、ヒドゥン・インヘリターの突き出したドリルが......彼女の拳で音もなく弾かれ、地面に突き刺さる。

 今までよりも、明らかに深く。

 機械の馬力でも、容易くは抜くことができない程に、深く!


 ヒドゥン・インヘリターはその瞬間、身動きを封じられた。


 誰から見ても明らかな......大きな、隙だった。




 パアンッ!!




 その瞬間、乾いた音と共に、フレットの魔力が弾丸となって放たれた!

【一言解説】

 お話の最後に掲載される、作中の用語等を解説する短い文章。

 第30章には、全話に一言解説をつけようと作者は考えていたが、ここに来てネタが尽きた。

 その用語の出てくる章番号が記載されていることも多いので、本当に暇な人は読み返してもらえたら嬉しいです。


 さて本章も、残すところあと1話。

 どうぞ皆様、お付き合いの程よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
やめろーーーーー!馬鹿野郎!ころはエミの食べ物だ!(笑
登場人物の背景に人間味を出して来るのはホント好き そして、後書きワロタ
正直過ぎる後書きに草生えてしまう あと二回というところで力尽きるとは
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