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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
25 監獄!災厄!大魔導編!
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596 come up with 別解答

「休憩の度に、机が小さくなっているのは何故なのじゃ......?」


 ブツブツとつぶやき、私の隣で巨大魔石に右手のひらを当て、先生は魔力を吸う。


 学びの時間だ。

 私はぐうぐうとうるさい腹の虫から一旦意識を外して、先生の手元を【魔力視】で注視する。

 先生の手のひらから感じられる魔力圧が、ふっと消え去る。

 それとほぼ同時に、巨大魔石から魔力が流れ込む。

 で、数秒待たずに手を離し、それで【アブソープション】は完了だ。

 いつも、見ている通りの光景。

 ちなみに数秒で【アブソープション】をやめるのは、それ以上やると魔力を『吸い過ぎるから』。

 魔力を吸い過ぎると、魂が風船のように破裂して、死ぬらしい。

 それを、魔力中りと言う。


 この魔力中りという現象が起きるから、例えば魔力をたくさん含んでいる竜の肉なんかは、適切な処置をしてからじゃないと、食べちゃだめということになっているらしい。

 私は気にしたことないけど。


<............エミーの魂は、ちょっと特殊ですから>


 ......私の魂は特殊らしい。

 なんか、においも臭いらしいし......。

 色も汚いし......。


<誰だって、体質は違います。魂の質......魂質だって、同じです。それがいわば、あなたの個性なのです。気にする必要はありませんよ!誰が何と言おうと、あなたは素晴らしい存在です、エミー!>


 ありがとうオマケ様。

 オマケ様がいつもほめてくれるから、私はいつだって頑張れるよ。


<頑張って生き延びて、外に出たらいっぱい殺して、いっぱい食べましょうね!>


 でもたまに、多分神様的立場由来の猟奇的な発言が漏れるのは、ちょっと怖いよオマケ様!

 そして、やめて。

 『食べましょう』とか、言うのやめて。


 飲食にまつわるワードに反応して。


 お腹が、お腹が絶叫する。


 ああ、ああ。


 ねじ切れるぐらいに、お腹が空いた......。




「......【アブソープション】習得実験......進捗はどうなのじゃ?」


 お腹を押さえてうつむいた私の顔を、先生は心配そうにのぞきこんだ。


「......成果無し」


 私は声を絞り出して、端的に現在の状況を報告する。

 私が【アブソープション】の習得を目指し、修行を開始してから半月が経った。

 日夜体内の魔力をこねくりまわし、何とか自らの異能......魔導として魔力吸収を修めようとしているものの、芳しい成果は得られていない。

 その間にも非常食の机や椅子は、どんどんその質量を減らしている。

 食べきってしまう未来が、見えてきた。

 かなり、まずい。




「............」


 と、ここで。

 私は......無表情であるはず、だけど。

 かなり落ちこんでいる雰囲気が、伝わったらしい。


 先生が私のことを、ぎゅっと抱きしめた。


 先生の義体は、柔らかくて、暖かくて......。




 凄く、おいしそうだ。




「やめて」


 私は慌てて先生の腕をほどき、体を離す。


「カカカ......エミーは恥ずかしがり屋なのじゃ」


 先生は勘違いして、そう笑い飛ばしてくれた。


 私は目を閉じてそっぽを向き、怒っているフリをする。

 その間に、雑念を振り払う。




 だめ。

 だめだから。

 先生は、お肉じゃないから。


 もとはエロジジイでも、優しい人であることは間違いないし。

 割と人に好かれる性格をしていて、優秀。

 きっと、いろんな人から慕われていた、素晴らしい人なんだろう。

 食べちゃだめだ。


 それにその体は、魔導義体だって言うし。

 きっと本当は、普通のお肉みたいに、おいしくないんだ。

 先生を、そういう目で見てはいけない。


 それに、やるなら、一撃でしとめなければならない。

 どれだけの魔導......隠し玉を持っているのか、わからない相手だ。

 弱り切った私では、リスクが高い。

 頭部を殴り潰せるだけの【魔撃】を、今の私が放てるか?

 そもそも頭部を潰すだけで、リビングドールとなった先生は死ぬのか?

 それすらも、わからない。


 だめ。

 とにかく、だめ。


「ふーーー............」


 私は大きく息を吐いて、何とか気持ちを落ち着かせた。


「先生の方は?」


 そして意識をそらすために、別の話題を振る。




「五割、といったところなのじゃ」


 先生は大きく伸びをしてから、描きかけの魔法陣を眺めた。

 五割、と言うだけあって、現在の魔法陣は半月の形をしている。

 なにやら小難しい文字やら図形やらで満たされた、半月だ。

 見ているだけで、目が回る。


「この魔導義体のスペックは、設計時の想定以上に、良い。少なからず、工期も削減できるはずなのじゃ。ワシも急ぐ故、希望を捨ててはならないのじゃ」


 先生は私の瞳をじっと見つめて、力強く、励ますようにそう言った。




 五割。

 半月で、五割。

 なら、転移魔方陣の完成まで、あと半月?


<そう簡単な話では、ありません。いかに工期削減できると言っても、もともと完成まで一か月半と見込まれていた作業です。もう少し、かかるでしょう>


 非常食が大変心もとなくなってきた、この現状で。

 あと、一月。


 【アブソープション】を習得できれば、それで良い。

 でも、できなかったら?

 一月私は、空腹に耐えられる?


「............」


 気持ちばかりが、焦る。




 ......例えば。

 他に、脱出の方法はないの?

 転移魔方陣の完成を待つ、以外の。


「............」


 私はじっと、巨大魔石を見る。

 私は、【アブソープション】は、今は使えないけど。

 石だろうがなんだろうが、食べれば魔力を吸収できる。


 そしてこの巨大魔石は、デレネーゾ大監獄の動力源。

 施設の壁や床を結界的に守っているのも、この動力源あってこそ。


 つまり。




「............!」




 私はここで、ふと、思いついた。

 私が汚泥に包まれた現在のデレネーゾ大監獄から、無理やり脱出する方法を。

 別解答を。


 でも、それは、だめだ。


 何故ならそれは、先生を。


 見捨てることになるから。




「............」


 私は首を振って、すぐにその考えを棄却した。

 そして少しよろめいてから、手を伸ばし。

 巨大魔石に、再び手を当て。


 【アブソープション】習得のための試行錯誤を、再開した。

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― 新着の感想 ―
[一言]  なんか不穏な状況の中で「自分だけは助かる」可能性に気がついてしまったエミーさん(・Д・)カルネアデスの板じゃないけどヤバい展開は読者の弱々メンタルがもたないのでふたり一緒に助かって美味しい…
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