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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
25 監獄!災厄!大魔導編!
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592 there is a 大問題

「............」


 抱擁は、それほど長くは続かなかった。

 私が気恥ずかしくなって、マジュローグの体を押して、離れたからだ。


<エミー、気をつけてください。現在の見た目は爆乳美女でも、これの本性はエロジジイです。きっとエミーを抱きながら、邪な思いを抱いていたに違いありません>


 オマケ様はなんか嫉妬していたので、無視した。




「さて」


「これから、どうする?」


 立ちあがったマジュローグに、私は目線をあわせずに質問した。

 どうにも恥ずかしい。

 顔は......赤くなっていないと思う。

 多分。

 私の顔面は、感情を表現する機能を持ちあわせていないようだから。


「もちろん早速、転移魔方陣の制作に着手するのじゃ!」


 マジュローグは楽しそうに声を弾ませながら歩きだし、部屋の隅へ。

 良く分からない機械と機械に挟まれた木箱を開け、中から黄色い宝石をとりだした。


「これは、ダーケーヤロン魔石。かつてダーケーヤロン川上流に多く転がっていたため、ダーケーヤロン魔石じゃ。まあ、この制御室中央の巨大魔石の小さい版と考えて良いのじゃ。いくつかの魔道具の動力源として、用意されておったらしいのう。この魔石を砕き、魔水と混ぜ、魔法陣を描く」


「魔水?」


「魔力をこめた水なのじゃ。幸いこの部屋、貯水庫も併設されており、蛇口をひねれば水が出る。その飲料水を利用して作成するのじゃ」


 私にそう説明を続けながら、マジュローグはテキパキと準備を進める。


「......私は、どうすれば?」


「すまんが、やることはないのう」


「お手伝い、しなくて良い?」


「......エミーちゃん、ありがとうのう」


 ここでマジュローグは振り返り、手持無沙汰でたたずむ私を見つめて、にっこりと微笑んだ。


「しかし魔方陣の作成には、コツがいるのじゃ。こればかりは、経験が物を言う作業なのじゃ。素人のお主を関わらせるわけには、いかん」


 そしてそう言って、私の手伝いをやんわりと拒絶した。

 まあ、それは良い。

 難しい作業は、プロに任せるのが一番だ。

 退屈だろうが何だろうが、私は黙って待つよ。


 でも......マジュローグが放った次の言葉。

 それが、大問題だった。




「故に......少なくとも一か月半ほど、じっとしておるのじゃ」


「一か月半!?」




 思わず、声を荒げる。

 なんでそんなに、時間かかるの!?


<......マジュローグは先ほど、魔石と魔水を混ぜると言っていましたね?おそらくその作業に、時間がかかるのでしょう。かつて超古代魔導文明においては、工業的に大量生産されていましたが、なるほど、言われてみれば、それを手作業でとなると......半月ほどかかるというのも、無理のない話ですね......>


 オマケ様は冷静に補足の解説をしてくれたけど......その声は震えている。


 だって。

 だって、ね?

 ......まずい、よね?


<まずいですね。ものすごく、まずいです>


「子どもを退屈させるのは忍びないがのう......ここは一つ、我慢してくれんかのう?」


 マジュローグは可愛らしく手を合わせ、舌を少し出しながらあざといお願いポーズをした。


 いや、うん。

 かつてのエロジジイのあざとさについては、置いておいて。


 周りは、危険な汚泥に囲まれて。

 普通ならば、ここで、意義を挟む筋合いなど、どこにもない。


 でも。


 でも、さあ......!




「......?エミーちゃん......?」




 ここで。


 マジュローグは、思わず挙動不審気味に、チラチラと“とある場所”に視線を送る私の様子に、気づいた。


 そして私の視線の先に、マジュローグも目をやる。


 そこにあったのは、扉。


 ......食糧庫の、扉。




「......え、まさかッ!?」


 おそらく......とある可能性に、マジュローグは気づいたんだろう。

 すぐさま食糧庫へと駆けだした!

 そして、思いきりその扉を開け!

 絶叫した!




「はあああああーーーーーーッ!?」




 それは!


 何故かと......言えば!




 食糧庫の中身は......ほとんど、食べ物を食いつくされ、すっからかんになってしまって......いたから!!




「いや、だって、そんな、一か月半も脱出に時間かかるって、思わなかったから......」


 食糧庫の入口でプルプルと震えているマジュローグの背中に向かって、私は頬をかきながら言い訳をした。


 もちろんこの惨状、原因は私だ。

 だってさっき汚泥から逃げている内に、お腹空いていたし。

 備蓄された保存食も、様々に趣向が凝らされて、凄くおいしかったし。

 さすが、神が関わる神造施設は違うもんだと、ついつい、ね?

 手が、止まらなくて、ね?


<おいしかったですよね......>


 ね?

 おいしかったよね......?




「ぜ、全部......全部、食べてしまったのかのう......?三か月分は、余裕であったかと、思ったのじゃが......」


 マジュローグは震えながら、青くなった顔をこちらに向けた。


「お腹、空いてて......」


 いや、本当に、申し訳ない。

 私と、空になった食糧庫。

 何度も何度も視線を行ったり来たりさせながら見比べるマジュローグのアホみたいな姿を見ると、本当に罪悪感でいっぱいになる。

 でも、マジュローグのお話も、長かったし。

 つい、口寂しくなるのは、しょうがないことだと思う。

 うん。

 うん......。




「ワシが......話している途中、長いこと食糧庫に入っている時間......あったのう、そう言えば......何を食べるか、選んでいるのかと、思ったのじゃが......」


「私は、選ばない。食べたいと思ったら、全て食べる」


「あの......わずかな時間で......?」


「全部食べた」


 それはもう、胸をはってそう答える。

 私、早食いも大食いも、得意だから。


 麺料理はお湯を入れて待つタイプの保存食だったから、持って行って話を聞きながら食べたけどね。

 ちなみにお湯は、食糧庫に魔道具のポットが備えつけてあって、それで沸かしました。




「お腹も......膨れては、おらんようじゃが......?」


「不思議だよね......?」


 マジュローグは、今度は私のお腹をじっと見つめて、首を傾げた。

 食糧庫に詰まっていた保存食が、今や全て私の腹の中にあるわけだからね。

 それなのに体型が微塵も変わらない私の体、凄く不思議だよね。

 私も思わず、首を傾げちゃうよね。




「ど、どどど、どうするつもりなのじゃーーーッ!?」


 マジュローグはここで頭を抱えて、再び絶叫した!




「どうしよう......」


 私も腕を組み、首をひねった......!

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― 新着の感想 ―
深刻な食料不足…!!!
[一言] 1か月半の何が問題かって、全読者が一致したはず。
[良い点]  せっかく決まった脱出のプロセスを自分で台無しにする展開(^皿^;)エミーさんらしいワwww。 [気になる点]  しかし3ヶ月分の貯蓄をオヤツ感覚でペロリ(・Д・)その上お腹にはこれっぽっ…
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