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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
25 監獄!災厄!大魔導編!
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591 girl and 大人

「......答えられる範囲で、答えるからのう!」


 最後にそう、質問することを許可して。

 目の前の美女は......回想を語るため必要だったのか、閉じていたまぶたを開いた。

 紫色の瞳が、部屋中央の巨大な宝石の光を浴びて、キラキラと輝く。

 その柔らかな唇は、優しく弧を描いている。


「『本人かどうか、証明はできない』......それは私にとっては、どうでも良い」


 私はそれまで啜っていた“麺料理”を食べきり、その皿を机に置いてから挙手をして......まずは質問の前に、言っておくべきことを言った。


「あなたは、私の命の恩人。本物のマジュローグかどうかなんて、些細な問題。助けてくれて、ありがとう」


「カカカ......どういたしまして」


 マジュローグは頬杖をつきながら紅茶で口を潤してから、にっこりと微笑んだ。


「質問も......して良い?気になること、いくつかある」


「何でも、聞くが良いのじゃ!」


「この、汚泥に包囲された大監獄から、どうやって脱出するつもり?」


 まず私が気になっているのは......当然これ。

 だって、私が逃げこんだこの制御室......逃げて来た経路から考えると、明らかにデレネーゾ大監獄の中央部に配置されている。

 でも、周囲はあの汚泥に、囲まれている......。


<結界的処置の施された隔壁のおかげで、しばらくは汚泥からの攻撃を防げますが......確かに逃げ出すことを考えると、なかなか難しい場所ですよね>




「カカカ......その答えは......これなのじゃ!」


 するとマジュローグはそう言って笑いながら、マジュローグは私の質問に答えるために......何かが描かれたメモ用紙を取り出した。

 ......胸の谷間から。


「なんで、そこから出した」


「せっかく爆乳になったので、やってみたかったのじゃ」


 そして冗談めかしてそう言いながら、そのメモ用紙を机の上に置く。

 見ればそこには、何やら模様が描かれている。

 円の中に......何やら難しい文字だの図形だのが描かれた模様だ。

 どこかで......見たことがあるような......。


<あッ!これ、転移魔方陣ですよ!>


「転移魔方陣?」


 オマケ様の驚いた声に返す形で、思わずぽつりと、つぶやく。


「ふむ、エミーちゃん、知っておるのか」


 それを聞いてマジュローグの大きな目が、すっと細められる。

 しかしその口元は、楽しそうだ。


「ならば、話が早いのう。確かにこのデレネーゾ大監獄は脱獄を防止するための備えが幾重にも張り巡らされ、しかも現在はあの汚泥に満たされておる。普通であれば、脱出は不可能なのじゃ。しかし!」


「転移魔方陣があれば、逃げ出すことができる......でも......転移魔方陣って、作れるの?」


 私は首を傾げた。

 だって前にオマケ様、転移魔方陣のこと、『現在の人間の技術で作成することは、ほぼ不可能』って言ってなかったっけ?


<言いました>


 しかし私のこの疑問を、マジュローグは体を揺らしながら笑い飛ばした!


「カカカ......もちろん、作れる!だってワシは天才......“大魔導”マジュローグなのじゃ!」


「............」


 その様をじっと見つめる私の様子から不安を感じとったのか、マジュローグは真面目な顔をして追加で説明を始めた。


「そう心配するでないのじゃ!この転移魔方陣......ワシが学院にいる頃から秘密裏に実験を繰り返しており、問題なく起動することは確認済みなのじゃ!この制御室の巨大魔石......あの中央の、大きな宝石じゃが、あれを動力源とする転移魔方陣を作成し、ワシの隠れ家へと、避難する!実にシンプルでスマートな、脱獄計画じゃろう?カカカ!」


 その言葉は淀みなく、自身に満ちあふれている。

 まさか......これで嘘をついているってことは、ないのかな。

 まあ、本当に転移魔方陣をこの場に作れるのなら、それは確かに大助かりだけど。

 本当に......本当に作れるのかな?


<転移魔方陣は、魔方陣を描くための触媒の作成が非常に難しいのですが......本人の言が正しければ、魂の移植すら成功させたのが、目の前の人物です。本人が自称する通り、まさしく天才です。その程度、容易くやってのけるのかもしれませんね>


 わあ、オマケ様のおすみつきだ。


<ただしエミー、気をつけてください>


 と、ここで。

 オマケ様は、声を落として忠告した。


<魂移植も転移魔方陣も、神々にしてみれば禁忌の技術です。ここからの脱出成功後は、この人物とは少し距離を置いた方が良いです>


 その言葉に、思わずゴクリと唾を飲みこむ。


 ......禁忌なの?

 魂うんぬんはともかく......転移魔方陣も?

 冒険者ギルドとか、霧の森の中にも設置してあったじゃない?


<神々が設置したり、古代から残っている分は、良いのです。新しく増やすのが、まずいのです。何故なら......>


 ......何故なら?




<運送神や行商神などの神々の既得権益を、犯す可能性があるからです!>


 思ったより生臭い理由だった!?




<......しかし、このマジュローグとやらは転移魔方陣の実験を『秘密裏』に行ったと言いました。もしかすると......>


「さあさあ、エミーちゃん!他に質問は、ないかのう?」


 と、ここで。

 オマケ様が何やらごちゃごちゃと言っていたけど、それにかぶせる形で、マジュローグが次なる質問を求めた。


「............」


 そりゃあ、聞きたいこと、まだあるよ。

 さっきの質問に比べたら、些細なことかもしれないけど。


 それは。




「なんで......義体が、女の体なの?」


 これだよ。


 もともと大魔導は、男性だったんでしょ?

 なんでわざわざ性別を変えたのさ?


<......確かに同性のままの方が、色々とやりやすいことが多いように思いますよね>




「カカカ!なんじゃ、そんなことか!」


 マジュローグは私の質問を聞いて、豪快に笑った。

 そして豊かな紫色の髪をかきあげてから、愉快そうに答えた。


「先ほど伝えたように、ワシにはかつて五人の妻たちと、数えきれない程の恋人たちがいた」


「うん、エロジジイだったんだよね?」


「恋多き男なのじゃ。エロジジイではないのじゃ......何度も何度も恋をして、素晴らしい女性たちに出会って......彼女たちの思い出は、今でもワシの中で宝石のように美しく輝いているのじゃ」


「はあ」


「しかし、その結果として、困ったことになったのじゃ」


「困ったこと?」


 そう言ってマジュローグは再び机に頬杖をつき、ため息を吐く。

 その様は......外には囚人服をまとい、中にはエロジジイの魂が入っているのだとわかっていても、どうしようもなく妖艶だ。


「思い出が、美しすぎるのじゃよ」


「はあ?」


「つまりのう、ワシはもはや、思い出の中で美化された彼女たち以上に素晴らしい女性に......出会える気がしないのじゃ!」


 ここでマジュローグは姿勢を正し、その大きな胸を押しあげるように腕を組み!


「故に......ワシは、思ったのじゃ!」


 今まで以上に、真剣な表情で!




「『今度は女になって、男と、恋愛をしてみたい』......と!!」


 わけのわからないことを......言った!




「何言ってんの?」


 本当に何を言ってるのかわからなかったので、私はついつい思っていることをそのまま口から出した!

 しかしマジュローグはそんな私の困惑など気にも留めず、にっこりと微笑んで、つけ加えた!




「ちなみに、この魔導義体のおっぱいが大きいのは、ワシはおっぱいが好きだからじゃ!」


「やっぱりエロジジイじゃねえか!」


<エロジジイですね>


 はい、結論。

 マジュローグは、エロジジイ!




「おい、エロジジイ。もう一つ質問したいんだけど」


 さて、もう一つ。

 私には、今の内に、聞いておきたいことがある。

 ......あんまり聞きたくは、ないけど。

 挙手して、問いかける。


「......なんか突然に、ワシへの態度がぞんざいじゃのう。もっと、敬意を払ってくれんかのう」


「敬意は、取っ払ってる」


「ちょっとうまいこと、言うのう。カカカ......で、その質問とは?」




「どうして、私を助けた」




 その質問に......マジュローグはきょとんと目を見開き、首を傾げた。


「そういう、演技はいらないから」


 若干の【威圧】を放ちつつ、言葉を続ける。




「何が目的?」




 だって私は、このデレネーゾ大監獄の牢に入れられていたんだよ?

 自分で言うのもなんだけど......得体が知れないこと、この上ないでしょ。


 それなのに、この美女エロジジイは、私を助けた。

 まず間違いなく、何らかの目的がある。


 ......私は、マジュローグに感謝している。

 命を救われたのは、事実だ。

 明るくて親しみやすい性格に好感も抱いている。

 エロジジイだけど。

 悪い人ではないと、感じている。


 でも。


 それ。


 演技かもしれない。


 世の中は、いつだって私に厳しい。

 最後の最後で裏切られるとか、嫌だよ、私は。


 ならば、今のうちに全部、さらけ出してもらわないと困る。


 私を利用するつもりなら、最初からそれを、言っておいてもらいたい。

 ある程度の理不尽、不利益ならば、飲む。

 それをもって、命を助けてもらった恩義に、報いるから。




「............」


 マジュローグは、私の問いかけに対して、表情を消してたっぷりと沈黙した後。


「はあーーー......」


 大きくため息をつきながら、立ちあがった。

 そしてゆっくりと、私に近づき。




「子どもが、そういう気配を、出すものではないのじゃ」


 そう言って、私の頭をポンポンと叩いた。




「ごまかすな」


「ごまかしてなど、いないのじゃ......良いか、良く聞け」


 そしてしゃがんで、私に目線をあわせた。

 マジュローグは両手のひらで私の頬を包み、固定して。

 私のどす黒い瞳を、まっすぐに見つめた。


 そして。




「子どもを助けるのに、理由などいらないのじゃ!」




 そう言って優しく微笑んでから......マジュローグは私のことを、ぎゅっと抱きしめた。


「............」


 私は、とっさに、声を出せなかった。

 抵抗できなかった。

 ただ......なされるがままに、なってしまった。


 マジュローグの大きな胸は、柔らかくて。

 マジュローグの体は......義体だというのに、ポカポカと暖かくて。


 私の中の、弱っちい部分が。

 マジュローグのことを......もう、信じちゃって、いたから。




「......嘘なら」


 私は。


「八つ裂きにして......殺す」


 何とかそう、言葉を絞り出して、言った。


 震える声で。




「嘘では、ないのじゃよ」


 マジュローグは、怯える様子もなく。


 ただぎゅっと、私のことを、抱きしめ続けた。

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― 新着の感想 ―
[一言] かーちゃん発狂案件
[良い点]  言葉ではなく体でぶつかる(´ω`)現世からこっち口のうまい連中に罵られて来たエミーさんにとってはクリティカルなマジュローグの100点満点な対応、これで裏切られたとしてもしゃーないっすな。…
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