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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
25 監獄!災厄!大魔導編!
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588 お茶 time

「私は旅人。エミー・ルーン」


 “大魔導”マジュローグ......そう自称する胸の大きなお姉さんに、私はそう言って名を告げた。

 そして、首を傾げる。


「......本当に、マジュローグ?」


「おや、お嬢ちゃん......エミーちゃん、ワシのこと、知っておるのじゃな?カカカッ!まあワシは、あまねく世界に名を知られた、生ける偉人であるが故にな!それも当然......」


「マジュローグは、エロジジイだって聞いた。お前はどう見ても、ジジイには見えない」


 調子よく自分の自慢を語り始めた自称マジュローグに、私は言葉をかぶせて疑問を呈した。

 だって、目の前にいる自称マジュローグは、どう見ても美人のお姉さんだ。

 うん、ジジイには見えない。


「『エロジジイ』、か......カカカ、その言い方には、語弊があるのう」


「語弊?」


 そう言いながら自称マジュローグは、クスクスと可愛らしく苦笑し。


「ワシは、『エロ』ではないのじゃ......いくつになっても、恋多き男であった......ただ、それだけなのじゃ」


 パチンと、なんだかちょっと軽薄な感じで、ウィンクした。




「......多分どこにも語弊はなく、お前は正真正銘の『エロジジイ』であった気はするけど、それはどうでも良い」


 私はそんな自称マジュローグの言い分にため息をつき、質問を言い換えようと口を開いた。

 しかし、自称マジュローグはその細くて長い人差し指を私の上唇にあてて、私の言葉を遮り、そして。


「“問題は、ワシが本当にマジュローグであるならば......どうして死んだと言われておるワシが、この大監獄で、しかも女の体となり、生きておるのか”......かの?」


 いたずらっぽく、そして優しく微笑みながら、私の聞きたかったことを一文にまとめ、私に聞き返してきた。


「............」


「それについて語ると、長くなるのじゃ......エミーちゃん、あちらにおかけなさい」


 私が無言のまま頷くと、自称マジュローグは横を振り向いて、そこにあった丸椅子と机を指さした。


「幸い、十分な量の食料の備蓄はある故......お茶の時間と、するのじゃ!エミーちゃん、紅茶はお好きかの?」


「............好き」


「では、ワシが淹れる故、楽しみにするのじゃ!いやはや、嬉しいのう!ワシはかわいい女の子とお茶をするのが、大好きなのじゃ!カカカッ!」


 自称マジュローグは冗談めかして楽し気に笑うと、私の腰に手を当てて、飲食用のスペースに向かってエスコートを行った。

 その動きは、実に自然で洗練されていて......私は全くもって無意識の内にそのエスコートを受け入れ、気づけば丸椅子の上に腰かけていた。




「さて、しばし待つのじゃ」


 そして、どうやらこの部屋の隣には食糧庫があるらしく......自称マジュローグはそこからお皿の上に乗ったお菓子と、お茶の葉、ガラス製のティーポットにティーカップ、ソーサーを持ってきた。

 しかし、その“持ってくる方法”が、驚きだった。

 この、自称マジュローグは、手を使わずに。

 それらをフワフワと、宙に浮かばせながら、運んできたのだ。

 特に魔法の詠唱は、聞こえてこなかったのにも、関わらず。


「......異能?」


「“魔導”なのじゃ」


 自称マジュローグはパチンと、指を鳴らした。

 すると空中に突然、水球が出現する。


「まあ、現象としては、異能も魔導も同じものなのじゃ。即ち、魔力を用いて引き起こされる、何か」


 そして自称マジュローグがその水球に手のひらをかざすと、その水球の中にふつふつと、気泡が生まれ始めた。

 沸騰している。


「では、両者の違いとは、何か?」


 そんなことを言いながら、次いで自称マジュローグはお茶の葉をティーポットに入れて、そこに空中に浮かんでいたお湯を注いだ。


「異能とは、使用者が才能頼りで行使する、奇跡じゃ。その奇跡の理を解き明かし、意識的に魔力を操作し、再現する。それが魔導。かつて世界を、支えていた技術」


 コポコポと音を立てながら、透明なティーポットにお湯が満たされていく。

 お茶の葉からゆらりと、煙のように赤色が染み出す。


「そう......魔導とは、技術。“魔力を導き”、目的を達するための技術。そして魔導の技を磨き、神秘を解き明かす者......それこそが、魔導士。今やこの世から、ほぼ駆逐“されてしまった”存在」


 美しい紅茶が、完成した。

 トトトトトト......。

 私の目の前に置かれたティーカップに注がれたそれは、甘く爽やかな香りを放ちながら、ゆらゆらと水面を揺らし、輝いた。


「ワシの目的は、人の世における魔導技術の復権。それが為に、生涯を賭した。故にワシは、“大魔導”を名乗った。ワシこそが、変革の象徴となり、全ての矢面に立つと......そう決めた故に」


 自称マジュローグは、最後にそう言ってから。

 自分の分の紅茶を、一啜り、口に含んだ。

 そして鼻に抜ける香りをゆっくりと楽しみ。

 美しく......にっこりと微笑んだ。


 私は、そんな自称マジュローグを、じっと見つめて。


 言った。




「お菓子、おかわり」




 ......と!!




「いや、エミーちゃん、ちょっとそれは、酷いのじゃ!ワシ、せっかく恰好良く意味深な感じで、色々語ったのじゃ!もっとそっちの方に対するリアクションが、欲しいのじゃーーー!」


「ごめんなさい。私、無表情だから......食べつくしたので、はやくお菓子のおかわりください」


「無表情がどうとか、今は関係ないのじゃ!ワシの話、難しかったかの......?」


「そんなことないです。お菓子おかわりください」


 自称マジュローグは困った顔でため息をついてから、指をパチンと鳴らした。

 すると食糧庫の方から、フワフワと追加のお菓子が飛んできて、お皿の上に山盛りに積まれた。

 やった!

 このお菓子......なんか、モチモチしたクッキーみたいなお菓子なんだけど、凄くおいしいんだ!


<いや、エミー......確かにこのお菓子はおいしいですけど、目の前の自称マジュローグ、割と大事なことを言っていましたよ?>


 あ、やっぱりそうなの?

 異能とか、魔導とか......。

 オマケ様が聞いても、この人の言っていることは、正しい?


<はい、正しいです。そして魔導について語れる人間は、現在ほとんど“いないはず”なのです。つまり>


 目の前のこのお姉さんは、“大魔導”を名乗るだけある人間って、こと?

 本物の、マジュローグであるってこと?


<......見た目の性別や年齢が何故か異なるようですし、何とも言えません。しかしその知識については、本物であると言えるでしょう>




「......さてと、じゃ」


 再び静かにお菓子を貪り始めた私を見て、クスリと苦笑した後に。


「そろそろ質問に、答えるとするのじゃ」


 自称マジュローグは笑みを消し、真面目な表情を作って、語り始めた。


「ワシが何故、まだ生きているのか。何故、女の体なのか......聞いてもらおうかの」


 目をつむり、ゆっくりと。

 正確に、過去にあった出来事を、思い出しながら。


「......お菓子、足りなかったら......食糧庫から持ってきて、食べても良いからの」


 そんな、嬉しい配慮も、つけ加えて。

 ようやく、本作における“魔導”の定義が語られました。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  真面目に物語の根幹を語ろうとしているマジュローグとアカシテリカのとこで口が贅沢に慣れたのかお菓子の無心が強いエミーさんの構図(^皿^;)笑える♪ [気になる点]  では“異能”を術理とし…
[一言] 師匠イベントか!?
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