表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
25 監獄!災厄!大魔導編!
584/720

584 goodbye 三大獄卒

「ひ......あ......あひひ、もう、私は、限界です......」


 さて、そんなほうほうの体で走り続けていた三大獄卒だが、その中の一人......赤髪の天使がついに体力の限界を迎えたのか、徐々にその速度を緩め......ついには膝をついた。

 私の牢の前で。


「ば、馬鹿を言うのではござらん!さ、逃げるでござるよ!」


 そんな天使を気遣い、横に並んで走っていた青鬼が、手を差し伸べる。

 しかし......天使はその手をパシンと叩き、拒絶し、叫んだ!


「逃げる!?どこへ逃げるって言うんですか、カイザン!?もうこの大監獄の入口は、あのバケモノに塞がれているんですよ!?」


 そしてついには、その顔をひきつらせながら......不気味に笑い始めた......!


「あひひひひひ......もう、終わりだ!終わりなんです!監獄神様の移し身すら、あのバケモノには敵わなかった......私たちは皆、あのバケモノに食われて、死ぬんだ!あひ、あひひひひひ!!」


「ネツゾウ......!!」


 そんな天使......ネツゾウの姿を見て、青鬼......カイザンは悲し気に眉を寄せ、悔し気に唇を噛んだ。


「ひいいいいいんッ!!そ、そんなに死にたいなら、貴様が一人で勝手に死んどけッ!!邪魔なんだよッ!!端に寄れッ!!オレが通れないじゃないか、オレが死ぬじゃないか、ひいいいいいんッ!!」


 一方で、そんな二人の後ろにいる大男は、チラチラと忙しなく後ろを振り返りながら、いらだたし気に地団駄を踏んだ!

 この......消去法的に考えるとエンザイであると思しき大男は、体が大きすぎるせいで、一人でも前にうずくまっている人がいると、廊下を前に進めないのだ!

 避けることが、できないのだ!

 というかこいつ、結構クズの匂いするぞ!




「あのーーー......」


 さて、私なんだけど。

 なんだか切羽詰まっているところ悪いんだけど、全く状況が飲みこめない。


「何か、あったの?」


 だから、せっかく目の前で謎ドラマを展開し始めた三大獄卒がいるんだし、事情を聴いてみようと声をかけた。


<何が何やら、ちっともわかりませんものね。情報収集が必要です>




「「「だ、誰だッ!?」」」


 こうやって話しかけて初めて、彼らは私の存在に気づいたらしい。

 一斉に、こちらに振り向いた。

 それだけ、彼らは追いつめられているって、ことなんだけど。


「な、何故この神敵牢に、少女が!?」


「確か現在収監されている神敵は、あの乳のでかい女一人であったはずでござるが!?」


「ひいいいいいんッ!!どうでも良い、早く逃げるぞバカ共がッ!!」


 慌てふためく三大獄卒だが、いち早く動いたのは青鬼の剣士カイザンだった。


「貴様......何者でござるか?」


 刀の切っ先を私に向けて、そう問いかける。




「私は......」


<待ってください、エミー。彼らは、あなたにとってみれば、敵です。正しく自己紹介をして、情報をくれてやる必要はありません>




「............私は......ミョゴミョゴシュゴの......精霊......」


<懐かしいネタですね、それ>


 ネタって言うな。




「「ミョゴミョゴシュゴの精霊!?」」


<驚いていますね>


 そうだね。




「お、おいネツゾウ聞いたでござるか!?ミョゴミョゴシュゴの精霊でござるよ!?」


「ええ、カイザン......!まさか実在するとは......!?」


<信じましたね>


 自分で言っておいてなんだけど、なんで信じるんだよ!




「ひいいいいいんッ!!何、バカやってんだバカーーーッ!!」


 しかし最後尾のエンザイだけは、私との会話に乗ってこなかった。

 顔を真っ赤にして怒り狂いながら、地団駄を踏み続ける!


「このガキが何者か?そんなこと、どうでも良い!調べたきゃ、貴様らが勝手に調べろ!オレを、前に通せ!早く、オレを、逃げさせろ、ひいいいいいんッ!!」


 そして、その言葉が。




 エンザイが放った......最後の、“意味のある”言葉だった。




 何故なら、次の瞬間!


「ひッ!?」


 シュルシュルと......何やら茶色い物が、エンザイの両足に巻きつき。


「おぶッ!?」


 彼のことを......思いきり後方に、引きずり始めたからだ!


「あぐッ、ひ、ひいいいいいんッ!?ぎびゃああああーーーーーーッ!?」


 ズルルルルルッ!!


 顔面を石造りの床に強打し鼻血をまき散らしながら、エンザイは廊下を奥へ奥へと、猛スピードで引きずられていく!


 そして!




 ドポンッ!!




 そんな音を、立てながら。

 引きずられた先にあった“もの”の中に、すっかり飲みこまれてしまった。


 そこにあった、“もの”とは。




 “汚泥”だ。




 汚らしい茶色をした、汚泥だ。

 ブクブクと、何やら気泡を浮かびあがらせては、それを割りながら。

 もぞもぞと、蠢く。


 凄まじい臭気を放つ......汚泥だった。


 その汚泥が、自身の一部を触手のように伸ばしてエンザイを捕まえ、引きずり......自身の中へと、沈めたのだ。


 もはや、エンザイの絶叫は、聞こえない。

 ただ、ブクブクという気泡が弾ける音と、ゴキ、メシャ、という......何かが凄い力で潰されていく音だけが、廊下に響いている。




「バケモノめ、よくも......よくも、よくもおおおーーーーーーッ!!」


 その様を見て、カイザンは涙を流し、いきりたった!


「例え、クズであっても!奴は長年苦楽を共にした、仲間でござるッ!!」


 そう叫び、長い刀を上段に構えると。

 カイザンはそれを......私ですら目にも止まらぬ速さで、汚泥に向かって振りおろした!


「【海割り】ッ!!」


 するとその刀から、斬撃が飛んだ!

 汚泥はその斬撃によって、なんら抵抗することなく、真っ二つに裂けた。


 しかしその汚泥は、汚泥なんだ。

 まるで、泥沼のように......向こう側の廊下を全て覆いつくしている、汚泥なんだ。

 泥沼は、刀で斬られてダメージを受けるだろうか?


 そんなわけ、ない。


 斬られた部分にはすぐに横から汚泥が流れ込み、その隙間を埋めていく。

 何も、効いていない。


「うわああああーーーーーーッ!!」


 狂ったように叫びながら、斬撃を飛ばし続けるカイザン。

 しかしその斬撃は、全てが汚泥を深く斬り裂き、しかしそれでいて、全てが意味をなしていない。

 そんなカイザンに、汚泥はじりじりと近づいて行き......。


「あ」


 一瞬の、ことだった。

 ぴゅん、と伸びた触手が、カイザンの胴に巻きつき。

 そして、彼を汚泥へと、引きずりこんだ。




 ゴキ、メシャ、バキ......。




 再び静かになった廊下に、嫌な音が響き渡る......。




「あひひっ!あひひひひひっ!」


 最後に残された三大獄卒ネツゾウは、もはや正気を保っていられないのか......廊下に座りこんだまま、逃げようともせず、ただただ笑い続けていた。

 しかし、その笑い声が、ふいに止まる。


「甘い、匂い......?」


 そしてネツゾウはきょとんとした顔で、そんなことを言い始めた。


 甘い香り......?

 しないよ、そんなの。


<ただただ、臭いだけですね......>


 しかしネツゾウは、首を傾げる私のことなどすっかり眼中にない。

 彼はゆらりと、立ちあがった。


 すると、次の瞬間だ!


 それまではただ、廊下に広がり続けていただけの、汚泥の一部が、もぞりと球体のような形を作ったかと思うと!

 その球体は、さらにもぞもぞと蠢き......人の形へと変化!

 泥人間が、産まれたのだ!


 そしてその泥人間の姿形は......先ほど汚泥に飲みこまれた、カイザンとうり二つだ!


「カイザン!無事、だったんですね!?」


 そんなおかしな台詞を吐きながら、フラフラと汚泥へ歩み寄っていく、ネツゾウ。


「いや、どう見ても偽物だよ!?」


 さすがに放ってはおけず、牢の中から叫ぶも......私の声は彼の耳には、届いていないようだ。


「あ、あひひ!み、みんなも!そこに、いたんですね!」


 嬉しそうに笑いながら、ネツゾウは汚泥へと近づき続ける。

 気づけば、汚泥の上には......カイザン以外の人間を模した泥人間たちが、立っていた。

 ネツゾウと同じような形の服を着ているのは、彼の部下だろうか。

 ボロボロの服を着て、手首に鎖を巻きつけているのは......ここに収監されていた囚人かもしれない。

 他にも、見たこともないデザインの鎧を着たのとか、普通の村人風の服装をしているのとか......。


 多種多様な泥人間が、そこには立っていた。


 そして、皆、満面の笑顔を浮かべ。


 おいで、おいでと、ネツゾウを手招きしていた。




「幸福......?ああ、そうですか......それが、幸福......!」


 そして、わけのわからないことを、嬉しそうに言ってから。


「私も......一つに......」


 最後にそう、つぶやいて。


 ネツゾウは自ら、汚泥の中に飛びこんだ。




 その後は、カイザンの時と、同じだ。

 廊下には、ただ、押しつぶされていく音だけが、響いた。




<三大獄卒は、こうしていなくなりました!おかげでエミーは無事、デレネーゾ大監獄から逃げることができたのです!おしまい!>


 若干投げやり気味に、オマケ様は冗談を言った。


「はは」


 思わず私も、笑っちゃうよね。

 表情は動かないけど。


 ......笑うしかないよ、本当に。


 牢から、三大獄卒が逃げて来た方向を、覗く。

 するとそちらは、もうすっかり、汚泥で覆われている。

 正体不明の、人食い汚泥に。

 まるで、泥沼のような状態だ。


 しかもさっき、あいつら言ってたな?

 入口が、バケモノに塞がれてるって。

 逃げ道......ないのでは?


 さらに悪いことにこの汚泥、三大獄卒を“食べて”、お腹いっぱい......というわけでは、ないらしい。


 じりじりと......私の方に近づいてきている。


 そして、例の触るとダメージをくらう鉄格子に触れ。

 バチッと弾かれ。

 しかし懲りずに、近づいてくる。

 ......そんなことを、繰り返している。

 体を細くして、鉄格子の隙間から入りこむ......みたいな。

 そういう器用なことはできないらしい、ということが......現状では唯一の救いかな。




 はああ......。

 本当、なんなの、こいつ?


 額から冷や汗が流れ落ちて、ぽたりと床に、小さな円を描いた。


 臭いし、不気味で......やばい。


 正直に言って、戦って勝つビジョンが見えない。

 まず、この汚泥は、生き物なの?

 殺したら死ぬ相手じゃないと、私、勝てないんだけど?

 戦うって......どうやって私は、泥沼と戦えば良いの?


 思わず、頭を抱える。




<エミー......良く、聞いてください>


 ここで。

 そんな私に、オマケ様から声がかかった。


 何?


 この汚泥の正体に、心当たりでもあるの?


<さすがはエミー、良く気づきましたね>


 つきあい長いからね。

 で?

 こいつは......一体なんなのさ?




<本来であれば“戦乱大陸”フォラストにて封じられているはずの、災厄の一柱です。どうしてこのデレネーゾ大監獄に、これがいるのかは......わからないのですが>


 そう前置きした上で。


<蠢き、全てを飲みこみ、広がり続ける。そして生者の精神に干渉し、幸せを囁く......この災厄は>


 オマケ様は、その名を告げた。




<“幸福なる汚泥”コルマリャ>

 三大獄卒、高速退場!

 そして現れた新たなる災厄、“幸福なる汚泥”コルマリャ!


 概ねの災厄は、本領発揮されると現在のエミーでも勝ち目がない相手です。

 自称『史上最弱』の災厄である“大悪霊エンジィ・アルビット”が第一部の大ボスだったんだから、その厄介さもうかがえるというものです。


 ちなみに戦乱大陸フォラストの名前は、第16章序盤にて既出。


 “黄金大陸”ハメジカ。

 “幻想大陸”ニージアル。

 “暗黒大陸”サーディサンヌ。

 “戦乱大陸”フォラスト。


 以上の4つが、本作にて主な舞台となる大陸の名前です。

 ちなみにもう一つだけ、名前が明かされている大陸がありますが......。

 そこはまあ、エミーは行かないから、良いや......。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  いろんなサブストーリーが全部一掃されたような展開に読者も唖然呆然( ̄∀ ̄)牢獄の出るべき先が全てを飲み込む汚泥とかエミーさん脱出不可能???如何なる脱出劇になるのかハラハラしながら読み進…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ