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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
25 監獄!災厄!大魔導編!
583/720

583 birthday at 大監獄

 本章を構成する要素を抜き出してまとめると、こんな感じの章タイトルになりました。

 それでは第25章、始まります!

「む......」


 目を、覚ました。

 モゾモゾと動いてうつ伏せとなり、頑丈な繭に指先を突っこみ、無理やり引きちぎる。

 そして生じた隙間から、外に顔を出す。


「............おあ」


 途端に押し寄せる熱気に、思わず声が出る。

 次に空気穴から差し込む光でぼんやり明るい床を見る。

 そう、床を見る。

 私は寝る時は天井の隅に繭を作るから、まず視界に入るのは床だ。


 それは、石造りのゴツゴツした床だ。

 ここはアカシテリカの、事務所じゃない。

 デレネーゾ大監獄にある、囚人が寝起きするための、牢獄の床だ。


 当然、彼女が淹れる紅茶の匂いがしない。


 もしかしたら......もう一生、あれを嗅ぐ機会もないのかもしれない。

 そう考えると寂しくて、チクリと胸が痛むけど、仕方がない。


 私はひとところに留まれない。

 周囲を不幸にするから。


 大丈夫、大丈夫。


 きっと遅かれ早かれ、こうなっていた。


 私は、あるべき姿に、戻っただけなんだから。




<......そう、大丈夫ですよエミー。なんて言ったって、私はいつでもあなたの中にいますから!>


 ぼんやりしていると、目を覚ましたオマケ様が声をかけてきた。

 おはよう、オマケ様。


<はい、おはようございますエミー!そして......お誕生日、おめでとうございます!今日から、12歳ですよ!>


「......は?」


 思わず思考が止まり、繭から逆さまにずるりと落ちる。

 そして左手で床をつき、片腕の力だけで飛び跳ね、くるりと宙返り。

 着地と同時に、【黒触手】を編みあげて衣装を作成。

 今日着るのは、地下を歩いていた時と同じく、全身を薄く覆う潜水服のような衣装だ。

 ヒラヒラしてないから動きやすく、涼しくて快適だ。


 ......いや、衣装のことはどうでも良くて。


「私、12歳になった?」


<はい。思えば、随分と大きくなりました。生まれた時から一緒にいる私としても、感慨深いものがあります>


 ......うん、そうだねぇ。

 大きく、なったよねぇ。

 体つきも、だんだん大人っぽくなってきたし。


 でも、うーん......あれ?


<どうしましたか?>


 いや、その......まあ、良いか。

 この私の肉体が不思議なのは、今に始まったことじゃないし。

 そもそもここ最近、トイレにすら行ってないし。


<現在のエミーの場合、お腹に入れた物は最終的に魔素分解されて魂に吸収されますからね!排泄なんて、非効率的なことはしません!>


 なんか魔素分解とか、難しい単語が出てきた......。


<........................とにかく、食べた全てを無駄なく吸収できるってことです>


 うーん?

 ............?

 なんか、ちょっと、引っかかるんだけど......。


<まあ便利なんですから、難しいことは置いておきましょうよ。それよりも、です。どうしますか、エミー?>


 どうするって?


<もう、いつまで寝ぼけているんですか!どうやって、脱獄しましょうかっていう、相談ですよ!いつまでもこんな牢に、囚われているつもりはないでしょう?>




 オマケ様にそう言われ、気を取り直す。

 確かにそれは、考えなきゃね。


 でも、オマケ様、私は何か罪を犯してここに飛ばされたわけじゃ、ないんだけど?

 大監獄の......看守みたいな人が、私をここに収監したわけじゃ、ないよね?

 昨晩から一度もお目にかかってないけど......看守も、私がここにいたら驚くよね?

 その時に、『手違いで転移させられました』って説明したら、調べて出してくれたりしないかな?


<無理です>


 無理かよ。


<エミー......鉄格子の向こう側の牢を、見てください......誰も、いないでしょう?>


 確かに。

 廊下を挟んで向こう側の牢には、誰も入っていない。

 というか、私が今いるこの階層の牢には、おそらく私以外には、誰も収監されていない。

 だって、私のファンタジー聴覚が、音を拾わないんだもの。

 人が身じろぎして、布がかすれる音すら、しないんだもの。


 聞こえる音と言えば、建物の下の方からたまに響いてくる、ズン、ズンという謎の振動音くらい。

 あれ、何なんだろう?

 まあそれは、ひとまず置いておいて......。


<この階層には、あなた以外に囚人が存在しないという事実。そして、壁に施された結界の異常な強さを鑑みるに、あなたが飛ばされたこの牢は......おそらく『神敵』を収監するために作られた、特別な物です>


 し、『神敵』!?

 神様の、敵ってこと!?

 凄い悪い奴用の牢ってこと!?


<いえ、神々が、殺すまでもないけど気に入らない存在を捨てるためのゴミ箱ってことです。この世界では、その存在の本質の良し悪しは関係なく、神々が気に入らなければ、それは『神敵』です>


 酷い!?


<そしてそんな牢に入れられている時点で、あなたは看守たちから『神敵』と見なされます。このデレネーゾ大監獄は監獄神プロリューズヤンが運営する神造施設であり、ここで働く職員は皆、監獄神の使徒や眷属です。彼らは彼らの神の言葉のみに盲目的に従います。残念ながらこの牢に入っている時点で、エミーの言葉は彼らの心には一切届くことはないでしょう>


 ま、マジかぁ......。

 つまり、かなり無理してでも、なんとか自力でここを出ないといけないってわけね?


<そうなります。囚われている『神敵』は基本的に、無期懲役です!逃げなければ、未来はありません!>


 とは、言ってもなぁ......。


 私は頭をかいてから、軽く牢の石壁を、裏拳で小突いた。

 軽く、と言っても、魔力をこめた一撃だ。

 普通の石壁なら、これで木端微塵だ。

 でも......。


 ガイン!


 昨日と同じく、叩いた石壁から鳴るのは、そんな妙な音。

 そして石壁には、一切ダメージ無し。

 これがオマケ様の言う、『異常な強さの結界』ね?


<はい>


 脱獄するには、この結界か......触るとダメージがある、あの鉄格子をなんとかしないとなぁ。


 そんなことを思いながら、ため息をつきつつ鉄格子を眺める。




<さらには、この牢から出られたとしたら、次に待つのは監獄神の配下共との戦闘です>


 やっぱり、そうなるよねぇ。

 看守にしてみれば、私はただの脱獄囚になるわけだから......まあ、襲いかかってくるよね。

 ......強いのかなぁ。


<確実に。皆、監獄神より力を授けられ、寿命も引き延ばされ、研鑽を積んでいますから。特に注意すべきは......“三大獄卒”と呼ばれる三人の強者です>


 “三大獄卒”......何それ、絶対強いよね......!?

 ごくりと喉を鳴らした私に、オマケ様はゆっくりと、その獄卒たちの名前を告げた!




<一人目の獄卒は......“業火操る灼熱の天使”ネツゾウ!>


 名前だけ酷いな......。




<二人目の獄卒は......“海割る剣鬼”カイザン!>


 名前だけ酷いな......!




<三人目の獄卒は......“慈悲無き大監獄長”エンザイ!>


 やっぱり名前だけ酷いな......!!




<そして、もちろんその他の看守たちも、決して侮れる存在ではありません。厳しい戦いが待っていると考えて良いでしょう......!>


 まあ、名前は酷かったけどね......。

 でも、そっか......。

 戦いかぁ......。


<はい、戦いです。相手は己の神の名のもとに戦います。絶対に、退きません。命を賭けた戦いが、待っています>


 そっか......。

 つまり......。




「皆殺しだ」




 思わずぽつりと、口から漏れ出た独り言。


 その響きは、自分でも驚く程、冷たい響きで。


 ......悲しいけど、凄くしっくりきた。




 全身から、魔力と共に殺意が漏れ出る。

 どす黒い、靄も。

 長く続いた町暮らしで腑抜けた精神が、引き締まっていくのを感じる。


 殺すしかないと、覚悟する。

 相手に大義があろうとなかろうと。

 私が自由になるためには。


 実に、シンプルな考え。

 強者を打ち倒すために必要なのは、こういうバケモノの思考だ。

 今回は......少しでも甘さを見せれば、即座に負ける。

 そういう相手だと、みたのだ。




「皆殺しだ」




 再度、今度は明確な意思のもと、そう口に出して。

 私は【黒触手】を操作し、手元に剣を作り出した。

 【黒大剣】......は狭い室内では振り回せないので、ただの【黒剣】だ。


 そしてその【黒剣】に込める魔力を、徐々に増やしていく。


 より強く。


 より鋭く。


 目の前の鉄格子を、容易く斬り裂く剣を、イメージしながら。




「......らッ!!」




 そして私はその【黒剣】を使い、思いきり鉄格子に向かって、斬りかかった!


 バチバチバチィッ!!


 【黒剣】と鉄格子がぶつかり、激しい稲妻が飛び散る!

 しかし......!


「......無傷」


 さすが、神造施設といったところか。

 この一撃だけでは、鉄格子を破壊することはできなかった。

 でも。


<昨日直接触れた時とは違い、エミーにダメージは、届きませんでしたね?>


 うん。

 ならば。

 何度でも何度でも、繰り返す。

 この鉄格子が壊れるまで、斬り続ける!


 私は全身に闘志をたぎらせながら、手元の【黒剣】に、さらなる魔力をこめ始めた......。




 しかし、その時だった!




 ガアンッ!!




 そんな、思い金属を蹴り飛ばしたような音が、遠くの方から聞こえたのは!


「!?」


 突然のことに驚き、思わず私は鉄格子近くまで駆け寄り......何とかして、音の聞こえた方向を覗こうとした。

 すると次いで、ギイイ、バタンという音も、聞こえてきた。


<なんでしょう?慌てて扉を蹴破って......再度その扉を、閉めた......?>


 そして続いて聞こえて来たのは、複数の人間が私のいる牢の方向に向かって、走って近づいてくる音だ。


「............」


 私は警戒を強めながら、足音の響いてくる方向を睨み続けた。

 すると、少しして、廊下の先の、曲がり角から......三人の男たちが、姿を現した。


 一人は、背中から翼を生やし、燃えるような赤色の長髪をなびかせる、天使。

 一人は、額から二本の角を伸ばし、長い刀をその手に持った、青鬼。

 一人は、それなりに高い廊下の天井に、頭頂部がぶつかりそうな程背が高い、大男。


 皆......白を基調としたお揃いの制服を着ている。




<あッ!!エミー、あれは、先程お伝えした、“三大獄卒”です!以前監獄神の、異世界転生配信で視ました!恐るべき、戦士たちです!>


 オマケ様はそんな彼らの姿を見て、すぐさまその正体を看破し、私に警戒を促した!

 でも......私は思わず、首を傾げてしまった。


 だって、その三人は。




「ひッ、ひッ......はあ、ぜえ......!!」

「あああ......うわあ、あああッ!!」

「ひいいいいいんッ!!ひいいいいいんッ!!」




 ......涙と鼻水を垂れ流しながら、泣きわめき。

 一目で満身創痍だとわかる程、ボロボロの状態で。

 必死に......走り続けていたから。


 その姿は、まるで。


 いや、『まるで』じゃ、ないか。


 ほぼ、間違いなく、彼らは。




 何かから......逃げている途中で、あるようだった。

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もしかしてか、母は来た?
[良い点]  始まった大脱獄への長い道のり!と思わせてたのに今回のシークエンス的にラスボス格が主人公たちが部屋から一歩も出る事すら出来ない最序盤なのに早々に登場!?(^皿^;)毎度の事ながらむらべせん…
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