572 【美少女探偵アカシテリカ!】旧帝都フロゼンド博物館殺人事件10
ドゴオオオオンッ!!!
背後で、スチール・インデックスが爆発した。
アカシテリカはその爆風に、背を押された。
それまでは全力で......いや、スゲーワの神珠冠により限界を超えた力を引き出され戦っていたが、その実彼女は満身創痍の状態だった。
敵を倒し、神珠の補助が途切れた今、もはや彼女は立っているのもやっとである。
強烈な風圧に押され、ふらりと。
アカシテリカは顔から床に、倒れ......。
「相変わらず、無茶をしなさる......」
少し怒ったような声と共に差し出された大きな手によって、その体を抱きかかえられた。
ラキガター館長だ。
「スゲーワの神珠冠は、諸刃の刃です。使用者に超常の力をもたらしますが、その反動は強い。それが原因で、崩御なされた皇帝もいらっしゃる程です。ご存じでしょう?お父上もお母上も、兄上も心配なさります。もちろん、私もです。あまりご無理は、しないでいただきたく存じます......」
ラキガター館長は片膝をつき、両腕でアカシテリカの体を支えながら、延々とお小言を言った。
「......館長にお説教されるのは、幼い頃以来ですね」
アカシテリカはそのお小言を聞き流し、そう言って微笑んだ。
ラキガター館長はその微笑みを見て怒りの感情が霧散したのか、ぽかんと口を開けてから首を振り。
「まあ......しかしながら」
ふ、と口角をあげてから周囲を見回し、感謝の言葉を口にした。
「アカシテリカ様のおかげで、皆救われました......ぐふふ、ありがとう存じます」
アカシテリカたちの周囲では、外から応援に入ってきた警察官たちが、怪我をした警察官を担架に乗せて運んだり、スチール・インデックスの爆発で生じた炎を水魔法で消火したりしている。
怪我人は多いが、どうやら亡くなった方はいないらしい。
向こう側では、スチール・インデックスの暴走を引き起こしたジミーヤックが、壁から引っこ抜かれていた。
気絶しているが、息はある。
彼にはこれから、厳しい取り調べが待っている。
帝政復古主義者たちは、大きな痛手を被ることになるだろう。
「皆、救われた......?いいえ、まだです......!」
しかしアカシテリカは表情を引き締め、ラキガター館長の腕から離れ、震えながら立ちあがった。
「エミーが......エミーが、いません。私たちをかばい、地下水道に落ちた彼女を......私は、救わなければ、ならない......!」
そうつぶやきながら。
よろめきながら。
アカシテリカは一歩一歩、玄関ホールにあいた大穴に向かって、歩みを進める。
しかし。
「ぐッ......!?」
次の瞬間アカシテリカの全身に、鋭い痛みが走った!
スゲーワの神珠冠を使用した、反動だ!
限界を超えて酷使された彼女の肉体が、悲鳴をあげているのだ!
「これ以上、ご無理はいけませんぞ!後のことは、警察の皆さんに任せましょう!」
再び倒れそうになるアカシテリカの体を抱きとめ、ラキガター館長は叫んだ。
「だめ......だめ、です......私は、理不尽を許さない、正義の使者......」
しかしアカシテリカは、弱々しい力でラキガター館長の拘束から逃れようともがく。
ラキガター館長は、アカシテリカのその様子を見て......つい、大声を出した。
「探偵の矜持など、この際捨ておきなさい!アカシテリカ様のお体は、もう限界なのです!」
アカシテリカは、ラキガター館長からそう強く叱咤され、目を丸くした。
しかし。
しかしアカシテリカは、それでもなお、ラキガター館長から離れ、前へと進もうとした。
「違う......そうだ、違うの......私は、彼女を救いたい。探偵だからじゃなくて、私は......」
そして、涙をこぼしながら。
「私は......エミーの、友達だから......」
最後にそう、つぶやいて。
......ついには気を、失った。
ぐったりと力をなくしたアカシテリカの体を抱き支えながら、ラキガター館長は深く深く、息を吐いた。
前を向くと、すぐそこには大穴。
その底からは轟々と、水の流れる音が響いている。
「............」
ラキガター館長はアカシテリカを抱きかかえて立ちあがり、彼女を治療院に運ぶため、歩きだした。
大穴から、背を向けて。
さて、長かった第24章ですが。
次話から......ついに!
ラストバトル!!!
いやまだ続くのかよエピローグじゃねえのかよと思った皆様には申し訳ありませんが、まだ続くのです。
ただし、ラストバトルと言っても激しいものではないし、あっさりと終わらせる予定です。
引き続きお楽しみいただければ、幸いです。




