571 【美少女探偵アカシテリカ!】旧帝都フロゼンド博物館殺人事件9
「ブシュウウウウウッ!!」
お互いに向かって駆けだしたアカシテリカとスチール・インデックスだが、まずは先手を打ったのはスチール・インデックスだ。
蒸気まき散らし地響き鳴らしながら走る古代兵器は、その上半身をグルリと回して力をためると、横薙ぎに巨大な槍を振り回した!
「はッ!」
アカシテリカはその一撃を、スライディングで前進しながら回避!
その勢いでスチール・インデックスの真下へと滑りこんだアカシテリカは、白銀の光に包まれたその長い脚をめいいっぱい伸ばし......。
「【皇帝寝相で満月を描く】ッ!!」
床スレスレに、水平方向の一回転!
スチール・インデックスの踵を、蹴り飛ばした!
「ブシュウッ!?」
スチール・インデックスは、巨体を誇る魔導ロボットだ。
本来であれば、少女に蹴られた程度では、その重量が故にこの機体はびくともしないはずだ。
しかし今のアカシテリカは、スゲーワの神珠冠による強化を受けている。
彼女の蹴りは何の問題もなくスチール・インデックスの足を弾き、バランスを崩したスチール・インデックスは勢い良く......。
ズッ......シイイイイインッ!!
そんな轟音を鳴らし埃をまきあげながら、仰向けに倒れた!
大きな隙が生じた!
「たッ!!」
素早くスチール・インデックスの体の下から抜け出していたアカシテリカは、ここで高く跳んだ。
高高度からの、スゲーワの神珠冠の補助を受けた一撃で、スチール・インデックスの頭部を踏みつぶすつもりなのだ!
しかし......!
相手が人間であれば、この攻撃は決まっていただろう。
しかしスチール・インデックスは、魔導ロボットだ。
痛覚は存在しないので倒れたところで痛みは感じず、一瞬たりとて気を失うこともない。
さらに、その身体構造は......外見は人間の構造を模してはいるが、その実、全く違う!
「ブシュッ!ブシュウウウウウッ!!」
次の瞬間だ!
スチール・インデックスの槍を持たない左腕が......突如として動いた!
その腕は動きが速いだけではなく......いかなる機構か、長さが若干伸びている!
巨大な鋼鉄の拳が......人体では不可能な鞭のような軌道を描きつつ、空中にいるアカシテリカに向かって......砲弾のごとき速度で襲いかかったのだ!
「えッ!?きゃあッ!?」
仰向けに倒れているはずの相手に真横から殴られたアカシテリカは、玄関ホールの床を何度か跳ね転びながら、壁際まで吹き飛んだ。
スゲーワの神珠冠は強い衝撃を受けるたび彼女の周囲に球状の膜のような白銀の結界を展開し、彼女へのダメージを軽減させていたが......全てを防げるわけではない。
跳ね転がりながらもなんとか体勢を整え、体をひねって回転し、最後は腕を組みながら両足で床に着地したアカシテリカの額に、たらりと血が流れる。
頭のどこかを、切ったようだ。
「はッ......ふッ......」
息も荒い。
スゲーワの神珠冠による強化があるとは言え、彼女の消耗は激しい。
長期戦は、望ましくない。
「ブシュッ!!」
そんなアカシテリカに向かい、ゆっくりと起きあがったスチール・インデックスは次なる攻撃を行う。
それは、生き残りの魔導ドローンによる襲撃だ。
宙を浮かぶ複数の球体が、鋭い丸鋸を展開、回転させながら、一斉にアカシテリカへと向かう!
「くッ!」
鋭い刃物により、己の四肢が切断される......そんな想像が、アカシテリカの頭の中を過り、彼女は顔を青くしながら歯を食いしばった......!
だがここで、助けが入る!
「死力を......尽くすでやす!!」
「さすがに、これで、打ち止めでがす!!」
未だに動ける警察官たちによる、魔法攻撃だ!
火球、雷球、氷の礫......それらが魔導ドローンたちに襲いかかり、何体かを床に墜落させた!
「......【皇帝の砲弾蹴鞠】ッ!!」
アカシテリカは素早く状況を判断し、墜落した魔導ドローンに駆け寄り、それを......思いきり、蹴とばした!
蹴とばされた魔導ドローンは風を切って飛び、未だ飛行を続ける機体に直撃!
さらにそこから跳ね返り、別機に直撃!
一蹴りで、二体が戦闘不能!
「【皇帝の砲弾蹴鞠】ッ!!【皇帝の砲弾蹴鞠】ッ!!」
アカシテリカは必死になって故障した魔導ドローンをボールに見立てて蹴り飛ばし、宙に浮かぶ機体を撃ち落としていく!
百発百中!
探偵としての活動で高めた集中力が、彼女の狙撃キックの精度を、極端なまでに高めているのだ!
しかし......アカシテリカのその行動、集中力が、彼女の仇となった。
彼女は魔導ドローンの処理に、集中しすぎたのだ。
スチール・インデックス本体の接近に......致命的なまで、気づくのが遅れる程に!
「ブシュウウウウウッ!!」
「あ......」
アカシテリカが、気づいた時には。
スチール・インデックスの槍は、彼女の体に向かって、突き出されていた。
まっすぐに伸びるその槍を、避けるだけの時間はない。
遅延化する主観的な時間の中で。
アカシテリカは徐々に己の頭部目がけて近づく槍の穂先を、眺めることしか、できなかった。
もはや、万事休す!
アカシテリカは冷や汗を浮かべ、歯を食いしばった。
しかし......その時だ!
何か、大きなものが飛んできて......それが槍に、直撃した。
進路をずらされたスチール・インデックスの槍は、アカシテリカの耳をかすめながら、虚空を突いた。
飛んできたものとは......大剣だ。
それを投げたのは、当然、ラキガター館長だ!
「ぐ、ぐふふ......」
気絶状態から復帰していたラキガター館長は、肩で息をしながらよろめき、しかしながら不敵に笑い......。
「さあ、今ですぞアカシテリカ様ッ!!」
叫んだ!
そして、その声と同時に!
アカシテリカは、跳ねとんだ!
「はあああああッ!!」
そして横方向に、体をひねり!
「【世界は皇帝を中心に回る】ッ!!」
スチール・インデックスの分厚い鋼鉄の胸板目がけて鋭い回し蹴りを放った!
「ブシュッ!?」
その蹴りの衝撃によって、思わず後ろに押されるスチール・インデックス。
しかしアカシテリカの攻撃は、その一撃では終わらなかった!
「ああああああーーーーーーッ!!!」
絶叫するアカシテリカの体を、一際強い白銀の光が包みこみ、そして!
彼女の回転速度が......どんどん速くなっていく!
さらに、彼女の体が......何故か床に落ちない!
「ブシュウウウウウッ!?」
そして宙に浮いたまま白銀の超高速回転体と化したアカシテリカは、スゲーワの神珠冠により威力を増強された回し蹴りを、連続でスチール・インデックスに叩きこんだ!
「ブッ、シュッ、ブシュウッ!?」
一撃蹴られるたびに、その衝撃でスチール・インデックスの関節部分からは火花が散り、回路が焼き切れていく!
「ブシュウウウウウッ!!」
この連続回転蹴りを食らい続けるのは、まずい!
そう判断したスチール・インデックスは無理やり跳躍し、後退!
何とかアカシテリカの攻撃範囲から離脱した!
しかし、もはや装甲はボロボロだ。
いくつもの不具合も発生し、体がうまく動かない。
「ブシュッ......」
スチール・インデックスはまるで血反吐のように蒸気を吐き出し、片膝をついた。
......その隙を、アカシテリカは見逃さなかった!
「【皇帝の意思は全てを貫く】ッ!!」
アカシテリカは全力でスチール・インデックスへと走り、跳ね、飛び蹴りを放った!
「ああああああーーーーーーッ!!!」
彼女の全身が再び、白銀の光に包まれる!
「ブシュッ!ブシュッ!ブシュッ!」
スチール・インデックスはその白銀の砲弾を回避しようと、全身から火花を散らしながら、その場から逃れようとした。
しかし、もはや。
動かない。
体が、動かない!
故に、次の、瞬間には!
スチール・インデックスの、超古代魔導文明の技術により鍛えられた、頑強な機体は!
「ああああああーーーーーーッ!!!」
アカシテリカの飛び蹴りによって、貫かれ!
彼女が、スチール・インデックスの背後に着地したと、同時に!
「ブシュウウウウウーーーーーーッ!!!」
まるで、断末魔の叫びであるかのごとく、スチール・インデックスは蒸気を噴き出してから!
ドゴオオオオンッ!!!
轟音、爆炎まき散らしながら爆ぜとび、その機能を停止したのだった!




