567 【美少女探偵アカシテリカ!】旧帝都フロゼンド博物館殺人事件5
古代兵器、スチール・インデックスが動き出した!
事ここに至り、以前スチール・ファイブシリーズの兄弟機と戦ったことのあるエミーには、もはや手加減や遠慮をする理由はなくなっていた。
あの鋼鉄の巨人は、強い。
力をふるうことをためらっていては、エミーはともかく、周囲の人間に被害が及ぶことは確実だからだ。
スチール・インデックスの背中からたくさんの球体......魔導ドローンが放出され展開され始めた時点で、エミーはこの鋼鉄の巨人を完膚なきまでに叩き潰すことを決めた。
ジミーヤックは、後回しだ。
『マーダーディスク』を手放している現状、あの男の脅威度は低い。
エミーは無言のまま、スチール・インデックスに向かって駆けだそうと、足に力をこめ......。
「おっと、今はそこを、動かない方が良いぜサングラスのガキッ!!」
脅威ではないとみなしたそのジミーヤックの言葉によって機先を制され、行動を封じられてしまった!
ジミーヤックはエミーから強烈な【威圧】を向けられても、一切怯むことなく......また、余裕の態度を崩すことなく、ニヤリと笑い。
そして!
「ケケケ......お前は強い!間違いなく、オレ様よりも強いッ!!お前にとってみればこのオレ様程度、羽虫と同じよッ!!スチール・インデックスの相手をする片手間に、容易く叩き潰してしまえるだろうッ!!正直言って、めっちゃ怖いッ!!」
......なんか、凄く情けないことを言った!
「何言ってんの、お前」
「だがしかしオレ様は、大貴族トモイキヤ侯爵ッ!!大貴族の本懐とは即ち、謀略戦よッ!!」
しかし、情けない言葉を吐きつつも、彼に降伏の意思はないらしい。
ジミーヤックはなんか偏見があるように感じられる思いこみを口走った後、右手を高く掲げて人差し指を伸ばし、それをクルリと回した。
それを見たスチール・インデックスは一旦ピタリと動きを止め、瞳を模した赤色発光体をチカチカと点滅させた。
お行儀よく、待機している。
どうやらその動作は、この鋼鉄の巨人に命令を発する際の合図であるらしい。
「さあ、スチール・インデックスッ!!サングラスのガキは無視して良いッ!!橙色の髪の、キャスケット帽をかぶったガキを、狙えッ!!」
そしてジミーヤックがそう叫んだ、次の瞬間!
スチール・インデックスの周囲を旋回していた魔導ドローンたちが、短い砲身を一斉に展開し、アカシテリカに狙いを定めた!
「......【黒腕】!!」
エミーはすぐさまアカシテリカを魔導ドローンの射線からかばう形で立ちふさがり、その肩から異形の巨腕を展開!
そしてそれを盾のように構えた!
「一斉射撃、開始ぃぃぃーーーーーーッ!!!」
ジミーヤックが攻撃命令をくだしたのは、その直後のことだった。
ダダダダダダッ!!
ピュンッ!
ピュピュンッ!!
数えきれない銃弾、そして色とりどりの魔導光線が、アカシテリカをかばうエミーに殺到する!
「らあああああーーーーーーッ!!」
エミーは【黒腕】の盾に必死で魔力を注ぎつつそれらを防ぐも、あまりにも攻撃の密度が高い!
【黒腕】は銃弾に削られ光線に抉られ、瞬く間に黒い靄となって空気中に溶け去っていく......!
「ケケケッ、勝機が見えたぞッ!スチール・インデックス、とどめの一発をくれてやれッ!!」
それを見たジミーヤックは哄笑し、人差し指をくるりと回しながら、次なる指示を出した。
するとその指示を受けたスチール・インデックスの胸部がパカリと開いたかと思うと、そこから砲身が伸び、そして......。
ボンッ!!
一際大きな発射音と共に、そこから黒光りするバレーボール程度の大きさの砲弾が射出された!
その砲弾は狙い過たず、ボロボロになった【黒腕】の盾に飛んでいき、着弾。
そして!
ドオオオオオンッ!!
凄まじい轟音を鳴らしながら、爆発した!
「きゃあああああッ!?」
その爆発による衝撃は大きく、エミーにかばわれていたアカシテリカ、そしてラキガター館長や警察官たちも、爆風によって吹き飛ばされてしまった!
そして爆発に伴う黒煙が急速に広がり、玄関ホールを満たし視界を遮っていく......。
「い、いたた......ケホッ」
さて、吹き飛ばされたアカシテリカだが、彼女はその衝撃で一瞬気を失っていた。
慌てて床からその身を起こし、未だに宙を漂う煙を吸わぬようハンカチで口をおさえたアカシテリカは瞬時に周囲を見回し、状況を確認する。
そんな彼女の視界にまず飛びこんできたもの。
......それは。
ちょうど、エミーが立っていた場所。
彼女がその身を挺して皆をかばっていた地点にあいた、深く大きな穴だ。
「............!!」
アカシテリカは顔を青くして、再度周囲を見回した。
だが、しかし。
エミーの姿は......どこにも、見当たらなかった。




