566 【美少女探偵アカシテリカ!】旧帝都フロゼンド博物館殺人事件4
「ケッケケケッ!ケケケケケケッ!」
不気味に笑いながら博物館の廊下を走り抜けるジミーヤック!
彼の目指す先は......明らかに、玄関ホール!
「逃げる気かッ!?」
全身の筋肉を、スーツがはちきれそうな程に膨らませたラキガター館長が、怒声をあげる!
「はッ、はひぃッ、はふぅッ......それは、無理、だよぉッ!なんたって、この博物館はぁ......!」
その後ろを必死の形相で走るムノーデス刑事は、息をきらしながら汗まみれの顔で、叫んだ!
「包囲、されているんだからぁ......!」
ムノーデス刑事がその言葉を言い終わるのと、ジミーヤックが玄関ホールに飛びこんだのは、ほぼ同時のことだった。
「............」
ジミーヤックはホール中央でその足を止め、その大部分がガラス張りとなっている玄関周辺の壁面越しに、外の様子を伺った。
闇夜の旧帝都。
そこを照らすのは、蛍のように揺らめく、いくつもの赤い魔灯。
その光が館内にもさしこんで......ジミーヤックの肌や、玄関ホール内の展示物を赤く染めている。
アカシテリカはムノーデス刑事に依頼し、ガーイシャー副館長が窃盗事件の犯人であると目星をつけた時点で、万が一の逃亡を防ぐために、警察の応援を呼んでいたのだ!
「もうッ、にッ、はあッ、はあッ、逃げ場は、ぜえッ、ぜえッ!」
「......もう逃げ場はありませんよ。大人しく、投降してください」
あまりにも息が荒く、もはやまともに喋れないムノーデス刑事に代わり、アカシテリカはジミーヤックに対し、冷徹にそう告げた。
いかにジミーヤックが手練れと言えど、これだけの数の警察官たちを突破するのは不可能だ。
......もはや抵抗は、不可能であるはずなのだ。
通常ならば。
しかし。
「......ケケケ」
ジミーヤックはゆっくりとアカシテリカたちに向き直ると、その指に『マーダーディスク』をはめてクルクルと回しながら弄び、不気味に笑った。
その顔に、諦めの色は浮かんでいない。
自棄の色も。
余裕の表情である。
「答えあわせを、してやろうッ!」
ジミーヤックの意図を読めず警戒を強めるアカシテリカたちに、ジミーヤックはまるで舞台上の役者のように、朗々とした声でそう語りかけた。
「答えあわせ?」
「そうッ!このテオダルテスの皿の......正体について、教えてやろうと言うのだッ!」
チュイイイイイーーー......。
甲高い音を鳴らしながら、『マーダーディスク』はジミーヤックの人差し指を軸に、高速回転を始めた。
「ある時、我ら“帝政復古研究会”は、極めて重大な文書を発見したッ!それは残念ながら体制派の失点を証明する政治文書ではなかったが......実に興味深い、古文書であった」
コツ、コツと靴音を鳴らしながら、玄関ホール内をゆっくりと移動しつつ、ジミーヤックは語り続ける。
「手のひらに収まる程小さく、しかし分厚い......悠久の時を経ていることを全くうかがわせない真っ白な装丁のそれには......とある古代兵器の起動法が、事細かに記されていたのだッ!!」
そしてジミーヤックはそう言いながら、高速回転を続ける虹色殺人円盤を、投げ放った!
アカシテリカたちに対して......ではない!
彼が円盤を向かわせた先は、玄関ホール中央に鎮座する、巨大な展示物だ!
即ち、それは!
槍を構えたまま静止し、その姿勢のまま遥かなる時を過ごしてきた、鋼鉄の巨人!
「そして、その古代兵器を起動させる、キーアイテム......それこそが、テオダルテスの皿こと、『マーダーディスク』であったのだッ!!」
芝居じみて両腕を広げ悪魔のような笑みを浮かべるジミーヤックの背後で、『マーダーディスク』は宙を滑るように飛んでいき......。
まっすぐに。
鋼鉄の巨人の、ちょうど人間で言えば口にあたる部分に開いた細長い隙間に、吸いこまれるようにして入りこんだ。
すると、次の瞬間だ!
ガクン、と。
巨人が、震えた!
そしてその体内で、ガチャガチャ、チュイイーーーと、何かしらの駆動音が鳴り始め......。
「ブシュウウウウウッ!!」
次に勢いよく、腰から伸びた筒状の構造物から、大量の蒸気を放出した!
「さあッ!!目覚めの時だッ!!」
ジミーヤックはそれを確認し、爛々と目を輝かせながら......鋼鉄の巨人の名を、叫んだ!
「スチィィィーーール・インデェェェーーーックス!!!」
すると、その叫びに呼応するがごとく!
その顔面に刻まれたスリットの奥がカッと光ったかと思うと、そこに瞳を模していると思しき赤色の発光体が2つ出現!
さらに......ブン、と!
スチール・インデックスは、その手に持っていた巨大な槍を......無造作に振り回した!
その、たった一振りで発生した強烈な突風は、瞬く間に玄関ホール内を吹き抜け......。
そこに設置されていた展示物をなぎ倒した!
そしてさらには、スチール・インデックスの背中にブドウの房のようにくっついていたたくさんの球体が、次々とそこから離れ、宙に浮かぶ。
無数の球体は、スチール・インデックスの周囲を旋回しながら、チカ、チカと......断続的に赤色の光を発しながら、アカシテリカたちを威嚇し始めた......!




