501 巨大ユムシと三人の女4
シメマガモが発する黄金色の光。
その光を認識した時、グランドアーマードユムシが感じたのは、“畏怖”であった。
「ユギャ......」
そして彼は気づく。
現在彼がいる地点は、始まりの大草原の中では例外的な、荒れ地とでも言うべき場所だ。
何故なら以前、そして今回、ここで彼が暴れているからだ。
とにかく、岩石や土砂が露出しており、周囲と比較すると植物の数が少ない。
そんな場所。
......で、あるはずだったのに。
「ユギャッ!?」
いつの間にか......彼の周囲が......いや、シメガマモを中心として!
辺り一面が、すっかり植物で覆われている!
先ほど彼が【土砂降り】で降らせたはずの瓦礫も、土砂も!
その全てが覆われているのだ!
そして、その植物たちは脈打つように、まるで水面に石を投げ入れて生じた波紋......その逆再生映像の如く。
シメガマモに向かって......黄金色の光を、送りこみ続けていた。
つまり、シメガマモの黄金色の光は、大草原の力だ。
いや、より正確に言うのならば。
かの光は、この始まりの大草原に残された。
大いなる存在の、力の残滓。
その存在とは。
即ち。
「ユ、ユ、ユ、ユギャアアアアッ!!」
ここで、グランドアーマードユムシは本能的に、これ以上考察することを拒否した!
とにかく彼がやるべきことは、全力であの黄金色の小さな生き物を、葬り去ることだ!
そしてそう結論を下し、魔力を溜め、激しく口内を発光させ始めた!
それは即ち、ビーム攻撃の予兆である!
◇ ◇ ◇
「......こちらに気づかれましたけど、“溜め”とやらは、お済みかしら?」
その予兆を察知し、シメガマモの隣に立っていた聖女アドは、そう問いかけながらタバコを口にくわえた。
まとめて、三本も。
......どう見ても、薬剤の過剰摂取だ。
煙を吸うたびに彼女の体内には多くの魔力が蓄えられていくが、その代償として、彼女の体調は目に見えて悪化していく。
顔色は蒼白になり、目は真っ赤に充血。
鼻血も流れ始めた。
しかし、彼女はそれをやった。
ここが踏ん張りどころだと、理解したからだ。
「......まだ、だ」
一方、全身を黄金色の光に包まれたシメガマモは、だらだらと汗を流しながら、端的にそう答えた。
彼女が両手で持っているのは、これまでも彼女が獲物として使い続けてきた、大鉈。
しかしその様相は、一変している。
シメガマモと同じく黄金色に光り輝く蔦によって覆われているのだ。
そしてその蔦は大鉈をただ覆うだけではなく、その切っ先から宙へと飛び出し、刻一刻とその“刀身”を伸ばし続けている。
「逃げないのか......侵入者」
「あなたこそ。逃げたらよろしいのではなくて?」
「バカにするな。一族の掟があるのだ」
「テメエこそバカにすんなコラ。ワタクシにだって、矜持がありますの」
シメガマモは、大鉈を構えながら。
聖女アドは、タバコを携帯灰皿にねじりこみながら。
目もあわせずに、二人の女が、端的な会話を行った。
その、次の瞬間。
「ユギャアアアアーーーーーーッ!!!」
グランドアーマードユムシが、彼女たちに向かって、紫色のビームを発射した!
「【結界・盾】十層ッ!!」
それと同時に聖女アドはシメガマモの前に踊り出て、両手を前へと突き出し、大量の結界を展開した!
......パリンッ!
仄かに光り輝く第一の結界は紫色の光の奔流を叩きつけられ、数秒間の時間を稼いで消滅した。
......パリンッ!
第二の結界も、同じく数秒。
......パリンッ!
第三の結界も、同じく。
「はあああああッ!!なめんなあああああーーーーーーッ!!」
ここで聖女アドが、目を血走らせながら気合を入れる!
ミシッ......ミシミシ、ミシッ!!
第四の結界は軋んだ音を鳴らしながらも......耐える!
十秒を超え......耐える!
まだ、耐える!
しかし......!
「ゲホッ......!?」
ここで聖女アドは、血反吐を吐きながら咳きこみ、体勢を崩した。
彼女の魔力コントロールが、乱れる!
パリンッ!
パパパリンッ!
その結果として......第四の、そして第五から第七の結界が、まとめて貫かれてしまった!
残る結界は、三枚である!
「ま、だ、ま......だあああああーーーーーーッ!!」
しかし聖女アド、再度踏ん張った!
よろめいた後に何とか姿勢を立て直し、腰を落として必死の形相で、残りの結界に魔力を注ぎこむ!
パリンッ!
第八の結界が割れ!
パリンッ!
第九の結界が割れ!
残り、後一枚!
「ああああああーーーーーーッ!!!」
ミシミシミシミシ、ミシミシミシミシッ!!
最後の結界は軋み、軋み、軋み、軋み!
もはや、割れる寸前!
そのタイミングで!
「......“溜まった”ッ!!」
黄金色に光り輝くシメガマモが、叫んだ!
そしてブンと振り回し、天高く掲げたるは!
......蔦と苔、草で作りあげられた、超巨大な大鉈だ!
そして、それと同時に!
「ユ、ユギャ、ア......!?」
情けない声を出しながら、グランドアーマードユムシがビームの放出をとりやめた。
息切れしたのだ。
つまり!
「守りきり......ましたわッ!!」
つまりは、そういうことだ!
「最後に、もう一つだけ......サービスして、さしあげますわッ!!」
聖女アドは地面に向かってドサリとうつぶせに倒れこんだが、震えながらもなんとか顔をあげ、パチンと指を鳴らした。
すると、シメガマモの眼前に、まっすぐグランドアーマードユムシへと続く、光り輝く結界の道が生み出された。
「うおおおおおーーーーーーッ!!!」
シメガマモはすぐさまその光の道の上を、大草原に吹く風のような速さで駆け抜け始めた!
グランドアーマードユムシが、気づいた時には!
シメガマモは彼に向かって、跳躍しており!
「【大草原の大鉈】あああああーーーーーーッ!!!」
その手に持った、植物で編みあげられた、黄金色に光り輝く超巨大な大鉈を!
まっすぐに!
彼に向かって......振りおろしたところだった!
グランドアーマードユムシは。
どう見ても斬れ味の悪そうな、その大鉈によって。
「ユギャアアアアーーーーーーッ!?」
断末魔の叫び声をあげながら。
......真っ二つに、斬り裂かれた!




