494 三人目の女、エミー・ルーン2
「ね、楽にして?私は旅人。エミー・ルーン。お前は?」
シメガマモに好感を持ったエミーは、彼女の前に足を延ばして座り、自己紹介をした。
一方のシメガマモは、エミーのことを完全に上位存在であると認識している。
故に守るべき矜持を侵さなければその言葉には従わざるを得ないと考えており、緊張で体を固くしながらぎこちなく動いてあぐらを組み。
「シメガマモ......この始まりの大草原を守る一族の、最後の一人です」
と、自己紹介を返した。
エミーはその自己紹介を聞いて。
「うるさい」
と、不機嫌な声を出した。
「ええ......!?」
あまりにも、理不尽な反応!
シメガマモは思わず身構えるが、エミーはため息をついてから軽く頭を下げ。
「ごめん。シメガマモは、うるさくない......今のは独り言」
そう、よくわからない言い訳をしながら、謝った。
そしてエミーは、座ったまま肩から触手を長く伸ばし、後方の草むらをガサガサと探り始めた。
「ピィッ!?」
すると数秒後には石頭兎が触手に捕獲され、エミーとシメガマモの前へと運ばれてきた。
「............」
エミーはその兎を手早く締めると、異能を使って雑に丸焼きにして、雑に内臓をかきだしてから、シメガマモの前に差し出した。
「はい、お近づきの印」
......だ、そうである。
「............」
シメガマモはその兎をじっと見つめて、冷や汗を流した。
外は黒焦げ、だけど中はどう見ても生焼けである。
こんなもの、どう考えても、食えたもんではない......。
「畏れ多い、ことでございます......」
シメガマモはそう言って頭を下げ、決して黒焦げ生焼け兎肉には手を出さなかった。
「そう?」
エミーはその様子に特に気を悪くすることもなく、だけどお肉を残すともったいないので、シメガマモの代わりにそれを骨ごとバリバリと食べた。
「じゃあ、これ......はい、どうぞ」
次にエミーは、その辺に生える草花をブチブチと千切り集めて、シメガマモの前に差し出した。
「............」
シメガマモはその草花をじっと見つめて、冷や汗を流した。
この大草原に生きる者として、彼女は豊富な植物に関する知識を持っている。
その知識が、ガンガンと警鐘を鳴らしている。
これ、全部、毒だぞ、と......。
「畏れ多い、ことでございます......」
シメガマモはそう言って頭を下げ、決して採れたて毒草サラダには手を出さなかった。
「そう?」
エミーはその様子に特に気を悪くすることもなく、だけどサラダを残すともったいないので、シメガマモの代わりにそれをムシャムシャと食べた。
さて、このようなやりとりを続けながらも、密かにシメガマモは焦っていた。
この間にも、カラマーリュ率いる調査隊が、禁足地を進んでいるからだ。
その先にあるのは、一族が命じられて代々守ってきた秘密。
そして......。
「力ある方よッ!!」
焦燥のあまりいてもたってもいられなくなったシメガマモは、再び土下座の姿勢をとって、大声で叫んだ。
突然のことなのでエミーはびっくりして、きょとんとしたままシメガマモを見つめ、無言で毒草をムシャムシャした。
「畏れながら、この席、ただ今より失礼させていただきたく存じますッ!!」
「え、なんで?」
エミーはシメガマモがお近づきの印を受け取ってくれないので、『次は草の根を齧っている虫(焼くと甘い)でも掘るかぁ』くらいに考えていたところに、退席の申し出をされたのだから、そこそこの不満を感じたのだ。
だから、少しだけトゲのある口調で、そう問いかけた。
少しだけ、【威圧】も漏らした。
しかし、シメガマモは引かなかった。
「一族の掟を守り......使命を果たすためにございますッ!!」
シメガマモはまっすぐにエミーを見つめて、【威圧】に負けることなく、堂々とそう言い放った。
「ふーん」
エミーは、そう言われて。
......ただ素直に、頷く気はなかった。
「一族の掟って、何?使命って、何?」
何故なら、エミーは。
そして“とある理由”があり、さっきからずっとエミーの脳内で騒いでいる、オマケ様も。
シメガマモの抱える事情に、興味関心を抱いたからだ。




