470 解き放たれた妖精
『ホホホホホホ!味方ガ増えたようですね、侵入者!しかし、既ニ何モかもガ遅い!』
さて、制御室内でグダグダ展開を繰り返すエミーやタカタカたちを見て、混乱の最中にあるアトモは彼らを味方であるのだと判断した。
しかし、発言を聞けばわかる通り、彼らは全くの赤の他人である。
それがわからない程に、アトモの思考能力は減衰していた。
『......それでハ、ホホホ、廃園、廃園廃園ニ向けまして、もう一作業いたしましょう!ホホホホホホ!』
そしてアトモは高笑いしながら、次なる一手を打つ!
ピンポロパロロン、ポンピーン!
遊園地時代のネバーフォールのテーマ曲を編曲して作られたオルゴール調のジングルが、ネバーフォール天空王国全域に響きわたった!
◇ ◇ ◇
ピンポロパロロン、ポンピーン!
その聞き慣れない調べが国中に響きわたったその時、反宰相派のリーダーであるヘクトパ青年は、簀巻きにして拘束したナボコリスを、仲間と共に担ぎながら裏通りを進んでいる最中であった。
「なんだ......?」
「何、この曲......?」
「さっきの揺れと言い、一体何が起こっているのよ......!?」
口々に不安をつぶやく、反宰相派の面々。
『......本日ご来場いただいております、皆様ニお知らせいたします』
「「「「「!?」」」」」
しかし彼らは、ジングルの次に聞こえ始めた女性の声のアナウンスに驚き、すぐに口を止めた。
『これよりおおよそ1時間後、当園ハ、エネルギー不足ヲ原因トして......ホホホ、墜落、墜落墜落、いたします!ホホホホホホ!』
アナウンスの声は、初めは抑揚の少ない平坦な声であったが、すぐにその調子は崩れ出し、大声で笑い始めた!
「ひっ!?」
「な、なんだって!?」
その内容、そして狂気に気圧され、反宰相派の面々は大いに動揺した!
「はひッ!?......ぐえッ!?」
その結果、担がれていた簀巻きナボコリスは思わず地面に落とされ、その顔面を強打した!
『さらニ、ホホホ!長年ノご愛顧、ご愛顧ご愛顧ニ感謝し、更なる絶望ヲ、プレゼントいたします!』
そしてアナウンス音声がそう告げた、次の瞬間だった!
バシュンッ!
突然ヘクトパたちの目の前の地面に大きな穴が開き、そこから巨大な何かが、勢いよく飛び出して来た!
ドシンッ!
そしてその何かは、重量を感じる音を響かせながら地面に着地し......にっこり不気味に笑いながら、ヘクトパたちのことを見つめた。
それは......巨人のような、何者かであった。
大人が見上げる程の、背丈。
しかしながらその体は、非常に頭部が大きく四頭身程で、アンバランスだ。
さらに言えば手足もかなり大きい。
白手袋をつけたその手のひらなど、おそらく子どもを容易く握り潰せるほどに大きい。
そして本来は愉快であるはずの道化風の衣装と道化風の化粧が......得体の知れなさも相まって、非常に不気味な印象を与える。
『やあ、ボク、ネバッフォくん!入園チケットを、見せてね!』
そしてその巨人道化は、笑みを浮かべたまま、口を動かさずにそう声を発した。
「に、入園チケット......?」
「なんの、ことだ......?」
『入園チケットを、見せてね!』
「きょ、巨人殿?我々には、貴殿の仰る言葉の意味が、よくわからないのだが......?」
『入園チケットを、見せてね!」
ネバッフォくんはヘクトパたちに、執拗に“入園チケット”なる物の提示を求めるが、ヘクトパたちには意味がわからない。
ヘクトパたちは何とか意思の疎通ができないか言葉をかけ続けるが、ネバッフォくんの言葉は一方通行であり、会話が成立しない。
そして彼らの会話が数回、繰り返された後のことであった。
『キミたちは、入園チケットを、持っていないのかな?』
......ネバッフォくんの、雰囲気が変わった。
「あ、ああ......」
「そもそも、入園チケット、とは......?」
逆光を浴びて顔に影を作る巨大なネバッフォ君は、実に恐ろしい。
思わずヘクトパたちは、その威圧的な容姿に怯え、そう答えた。
答えて......しまった。
すると次の瞬間......ネバッフォくんがその大きな手のひらを、天に掲げた!
『不法入園者、発見!不法入園者、発見!不法入園者とダフ屋は、排除対象だよ!』
そしてその手のひらを、ヘクトパたちに向かって振りおろしたのだ!
「ひえッ!?」
「うわーーーッ!」
「避けろッ!」
彼らはその手のひらを、間一髪回避した。
しかし......ナボコリスは。
簀巻きにされていたナボコリスだけは、そうはいかなかった......!
「はひぃーーーーーーッ!?」
ネバッフォくんの大きな手のひらに掴まれて、ナボコリスの体は天に掲げられた。
そして......。
『排除!排除!不法入園者は、お空に、ぽーーーいっ!』
「何だと!?お空にぽい!?や、やめろ、やめろ離せ!いくら欲しい!?離せええーーーッ!!」
ナボコリスを捕まえたネバッフォくんは、ズシンズシンと足音を響かせ楽しそうに歌いながら、どこかへと去って行った......。
「い、一体何なんだ、あのバケモノは......!?」
呆然とそれを見送ることしかできなかったヘクトパたち。
しかし彼らも、呆けるには、まだ早い。
何故なら。
『やあ、ボク、ネバッフォくん!入園チケットを、見せてね!』
『やあ、ボク、ネバッフォくん!入園チケットを、見せてね!』
『やあ、ボク、ネバッフォくん!入園チケットを、見せてね!』
彼ら目がけて周囲から、さらに複数体のネバッフォくんが、駆け寄って来たからだ!
「に......逃げろーーーーーーッ!!」
それを見て反宰相派の面々は、一目散に逃走を開始した!
追う、ネバッフォくん。
逃げ惑う、王国民。
そんな光景がこの時、ネバーフォール天空王国全域で、繰り広げられていた......!




