432 罠
<<<罠......だと!?>>>
<<<そうだな、その通りなのだな!若造、貴様はこのオレ様のヒレの上で踊っていただけに過ぎんというわけだな!グホホッ!!>>>
激しい【威圧】を放ちつつ、コブダリオンはコブダロックを睨みつける。
しかしコブダロックはその【威圧】を、まるでそよ風のように受け流し、にんまりとその目を細めた。
<<<貴様らがこのヒュミダファイ発掘現場まで無事たどり着くことができたのは、ひとえにオレ様がそれを望んだからよな!疑問に思わなかったかな?谷の警備兵が弱すぎるとな!奴らは全員、死んでも困らぬ落ちこぼれの雑魚共よな!グホホッ!!>>>
<<<グホホホホーーーッ!!>>>
この時、コブダロックの笑い声をまねて、周囲の黒コブ戦士たちも一斉に笑い声をあげた!
<<<貴様らッ......!!>>>
己の仲間を落ちこぼれと嘲り、捨て駒にする黒コブ族!
その様を見てコブダリオンを始めとする赤コブ族たちは憤慨し、怒りに包まれた!
<<<おお、怖い、怖いな!そう真っ赤になるな!ん?もともと真っ赤だったか?グホホッ!>>>
しかし赤コブ戦士たちの怒りをその一身に受けてなお、コブダロックに一切の動揺はない!
それもそのはず、“冷酷な策謀家”という評価を受けることもあるが、断じて彼は口先だけの男ではないのだ。
コブダロックというこのコブダイの本質は......その巨体とパワーを存分に活かして戦う、超一流の戦士である。
数えきれない戦いを経て鍛えあげたその胆力は、尋常ではない......!
<<<そうだ若造、おもしろい物を見せてやろうかな?......おいッ!!>>>
<<<はッ!!>>>
コブダロックはここで、黒コブ戦士たちに顎を使って何かを指図した。
すると彼らは後方から、ベリーの蔦を編んで作った籠を使って、何かを運んできて......ドサドサとそれを、コブダリオンたちの目の前に放り投げた。
それは、生きたままヒレをもがれ......身動きの取れなくなった、陽動隊の赤コブ戦士たちの姿だった......!
<<<き、き、き......貴様あああーーーーーーッ!!>>>
もうこれではあの赤コブ戦士たちは、自由に宙を泳ぐことなど、できはしない!
なんと惨いことをするのか!?
もはや、コブダリオンはこれ以上、我慢することができなかった!
激しい怒りが闘志を燃やし、体中から魔力があふれ出し炎に変わる!
<<<許さんぞ、コブダロオオーーーック!!>>>
燃え盛る炎を身にまとう魔コブダイと化したコブダリオンは、怒りのままにコブダロックに向かって、突進をしかけようとした!
しかし!!
ザクリ。
そんな音が、した。
そんな音と共に、彼の炎の鎧は冷たく鋭い何かによって斬り裂かれた。
コブダロックに向けて泳ぎ出す前に、コブダリオンは。
何かによって。
何者かによって。
その鱗......どころか、その身を深く深く斬りつけられ、大きな傷を負った。
バシュッ......バシュッ。
コブダリオンから発せられる炎が、瞬く間に消えていく。
そして、ドサリと。
彼は音を立てて、地面に横たわった。
<<<ぐ、ぬうッ......>>>
しかし彼は、死んではいない。
痛みを堪え、必死で再度炎を生み出しては傷口を焼きながらビチビチと跳ね、襲撃者の正体を確かめようとした。
<<<ふむ......不意打ちではあったが......我が異能【水爪】は、貴殿の【猛炎】を貫けるらしいな>>>
<<<なッ!?>>>
そしてその襲撃者の姿を視認した時。
襲撃者の声を、聞いた時。
コブダリオンは驚きのあまり、口を大きく開け放ち、言葉を失った!
何故なら、そこにいたのは!
襲撃者の、正体は!
両胸ビレの先から3本ずつ、水で形成された鋭い爪を伸ばした......青い鱗のコブダイ!
即ち!
青コブ族族長......“智慧のコブダクレバ”であったからだ!!
<<<コブダ......クレバッ!?>>>
コブダリオンはよろよろと宙に浮かびあがりながら、強烈な殺意を放つ同盟相手であったはずのコブダイと向かいあった。
それと同時に、周囲をちらりと眺める。
大穴の底では、戦いが始まっていた。
数の少ない赤コブ戦士に対して、黒コブ戦士が。
それだけではなく......行軍を共にした青コブ戦士までもが。
一斉に、襲いかかっていた。
<<<裏切った......いや、オレたちをはめていたのか!?何故ッ!?>>>
<<<は!『何故』と、きたか>>>
コブダクレバは慌てふためくコブダリオンのことを鼻で笑いながら。
<<<“族長”として、述べるならば>>>
淡々と、話し始めた。
<<<冷静に戦力を分析すれば、我々は赤コブ族と組んでも、黒コブ族には敵わないことくらい、すぐにわかった。ならば、黒コブ族に従属するのが賢い選択だ。それが、理由だ>>>
そう言ってから、コブダクレバはニュッと、【水爪】を伸ばした。
そして、コブダリオンに対して、まっすぐに己のコブを向けた。
戦闘態勢を、とったということだ。
<<<さらに、“智慧のコブダリオン”個魚として、述べるならば>>>
続いてコブダクレバは、今度は吐き捨てるように、言った。
<<<これは、復讐なのだよ、コブダリオン殿......>>>
そしてこのコブダイは、憎しみのこもった瞳で、コブダリオンを睨みつけながら!
<<<私から......貴殿に対する、なあああああーーーッ!!>>>
コブダリオンに対して......突進を開始した!!




