↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
19 最後のコブダイ戦争編!
429/746

429 コブダローズの奮戦

<<<うおおおおおーーーッ!!!>>>


 野太い叫び声をあげながら、コブダローズはバケモノに向かって突進する!

 凄まじいスピードだ!

 薄い霧を裂き泳ぐ彼のことを離れて見たならば、きっとその姿は“弾丸”と形容できるに違いない!


「............」


 もちろんバケモノとてこの突進、指をくわえて見ているだけではない。

 彼女は肩から伸ばした触手をゆらりと動かしたかと思うと、コブダローズに向けて、それを槍のように射出した!


<<<どりゃあッ!!>>>


 しかしその動き、コブダローズには見えている!

 彼は現在、極度の集中状態にあるのだ!

 バケモノの動きが。

 そしてバケモノが放つ触手の軌道が!

 ヒレにとるように、わかる!!

 彼はかすかに体を反らし、最小限の動きでもって、触手の槍をかわした!




「............」


 その様を見せられても、バケモノは無表情のままだ。

 ただただ冷徹に、二射目、三射目の触手を射出する。


<<<ぜあッ!!あああッ!!>>>


 それをコブダローズは避ける、避ける!

 小さくぶれるように左右に揺れながら、間一髪触手をかわしていく!


 だが、しかし!


「............」


 次にバケモノは、複数本の触手を一斉に、コブダローズに向け射出したのだ!

 面による制圧!

 かわすための隙間など見当たらない密度の触手攻撃が、コブダローズを襲う!

 万事休すか!?




<<<あああああああーーーッ!!!>>>




 しかし、その時だった。

 一際大きな絶叫をあげたコブダローズの全身が、まぶしいほどの赤い光に包まれたのは!




 この光。


 それは、全力を超えた【身体強化】を施していることの、証!


 今、この時コブダローズは。

 “妹分”を。

 族長コブダリオンを守るため、限界を超えた!


 誰に教えられるでもなく。

 ただ......本能の赴くままに!

 魂を削って魔力に変換し、その力を後先考えず全身に巡らせたのだ!


 だがこれは、危険な行いだ。

 そんな無理な強化に肉体は耐え続けることができるわけもなく、全身の骨や筋肉が悲鳴をあげる。

 すり減り続ける魂だって、問題だ。


 しかし、今のコブダローズは、そんなことを気にしない!

 戦いが終わった後のことなど、考えずに!

 ただ、敵を倒すために!

 まっすぐ、まっすぐに泳ぎ続ける!




 ガキインッ!!




 ついにはコブダローズのコブと衝突したバケモノの触手が、そんな金属質な音を鳴らしながら、はじかれた!


 ガキインッ!!

 ガキキキインッ!!


 それに続く別の触手たちもことごとくコブダローズの肉体にはじかれ、彼を貫くことができない!

 コブダローズの体表には無数の切り傷が生まれていくが、そのどれもが致命傷には程遠い。

 彼は、生きている!




<<<うおおおおおーーーッ!!>>>


 横殴りの雨の如き触手の一斉攻撃を潜り抜け、霧を貫き、コブダローズが躍り出たのはバケモノの目の前だ。


「!!」


 自らの触手で視界がふさがれていたバケモノは、それを突破してきたコブダローズへの対応に、遅れが生じた。

 しかし、まだ多少の時間的余裕はある。

 バケモノはこの勇敢なる戦士に敬意を払い一撃で殴り殺すため、その小さな拳に膨大な魔力を注ぎ、必殺の一撃......【魔撃】の準備を行った。

 彼女はこの攻撃方法に熟達しており、この準備のための時間には1秒も必要としない。

 そして彼女はコブダローズを迎え撃つため、殴りやすい姿勢をとろうと、右足を静かに後ろへとひいた。




 この時。


 そう、この時だ。




 天が、コブダローズに......味方したのだ!




 このエセレム大霧海の底は、湿っている。

 霧で満たされた土地なのだから、当然である。


 故に、その地面はいつも濡れている。

 岩盤も、つるつると滑る。


 だから。


「!?」


 バケモノが、ちょうどこの時、思わず足を滑らせて。

 バランスを崩してしまったとしても......何も、おかしなことはないのだ!




<<<おおおおおおらああああああーーーッ!!>>>


 その隙を、戦士コブダローズは決して見逃さない!

 彼はバランスを崩し、片膝をつきかけたバケモノの腹目がけて!

 全力を超えた、彼の魚生最速最強の突進を!

 ......ぶちかましたッ!!


 突進は、彼の得意技だ。

 彼は立ちふさがるいかなる敵も、その頑丈なコブを突進してぶつけ、粉砕してきた。

 故に彼は、“粉砕のコブダローズ”。

 そんな彼の、全力を超えた突進である。

 いかにバケモノとは言え......それをくらい、無傷というわけにはいかないのだ!


「ごッおッ......!?」


 衝突の瞬間、バケモノの口からは、そんな苦悶の声が漏れ出たのを、コブダローズは確かに聞いた。

 そしてその声と共に、おそらく胃液か何かであろう液体がコブダローズの背びれに降りかかり、じゅうじゅうと音を立ててそれを溶かしていく。

 痛みが走る。


<<<あああああああーーーッ!!>>>


 しかしコブダローズは止まらない!

 何故ならバケモノは、まだ生きているからだ!

 コブダローズは、敵を粉砕するまでは止まらない!

 何故なら彼は、戦士だからだ!

 “粉砕のコブダローズ”だからだ!


 コブダローズはバケモノの腹に額のコブをめりこませた状態で、さらに突進を続けた。

 バケモノの軽い体がふわりと浮き、くの字の形になって、赤く光り輝く弾丸によって霧の海を運ばれていく。

 そして、その突進の先にあるものは。

 ......切り立った、崖である!




 ズガアアアアンッ!!




 次の瞬間、コブダローズはバケモノごと、崖に衝突していた。




 ズガッ!

 ズガガガガガガッ!!




 そして、それだけではない。

 崖に衝突した後もコブダローズは、突進を続けた。

 コブダローズとバケモノの体が崖を粉砕し、奥へ奥へとめりこんでいく!




 ガガガッ!!

 ガガガガガガガーーーッ!!!




 そして、その結果。

 その崖は、崩れた。


 次々と上から岩石が崩落し、コブダローズとバケモノがめりこんだあたりを埋めつくしていく。




<<<お、お姉ちゃん......!コブダロオオオオオーーーズッ!!>>>




 ガラガラと音を立てて崩れ、コブダローズたちの上に降り注ぐ岩石を前に、族長コブダリオンは無力だった。

 彼はただ、叫ぶことしかできなかった。


 落石が収まったころには周囲の霧は再び濃くなっており、彼の瞳には辛うじて、すっかり崩れて形の変わった崖の影が、ぼんやりと映るのみ。




<<<あああ......あああああああーーーッ!!>>>




 “強き族長”として、決して里の戦士たちには見せることのできない彼の慟哭する姿は。

 その悲痛な叫び声は。


 全て......深い霧が、覆い隠してくれた。




<<<ああああああッ!ああああああッ!!>>>




 コブダリオンは、しばらく泣き叫んだ後に。


<<<ああッ!!>>>


 近くに転がっていた大岩に、額のコブを思いきり叩きつけ、それを粉々にして吹き飛ばした!

 そして。




<<<......ふーーーーーッ............>>>




 深く、息を吐き。




<<<おお、我らが神、ゴッドコブ!勇敢なる戦士の御霊を、母なるウミへと導きたまえ......!>>>




 崩れた崖に向かって、震える声で弔いの言葉を告げ、目をつむった。


 そして、黙祷した。


 深い、祈りを捧げた。




 しかし、長い時間を祈りに費やすわけにはいかない。

 彼は、族長だ。

 今は、行軍中だ。

 すぐに戦士たちの群れに追いついて、彼らを指揮しなくてはならない。




<<<......行ってくるぞ>>>




 次に目を開いた時、コブダリオンの声は、もはや震えてはいなかった。




<<<強き族長“猛炎のコブダリオン”は、必ずや邪悪な敵を、討ち滅ぼすッ!!母なるウミで、待っていてくれ、コブダローズッ!!>>>




 彼はそう宣言すると、崖に向かって厳かに一礼してからくるりとその体を反転させて、先行した戦士たちを目指して泳ぎ始めた。


 その全身には気迫がみなぎり......その瞳には、闘志の炎が燃えていた。


 漏れ出す魔力は火の粉と化してパチパチと弾け、周囲の霧を明るく照らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
例えば聖獣とのバトル描写が皆無なせいで、「難なく聖獣を狩れる主人公」の像が際限なく膨れ上がって、「なんで◯◯なんかにやられてるの?」になっちゃってる自分がいる。 不自然な特別扱いに見えてしまってる。…
[一言] この主人公毎度毎度パワーアップする時の説明は大仰なくせに弱すぎだろ
[良い点]  熱いバトルにドキドキ♪ [気になる点]  勇者コブダローズの生死は? [一言]  ( ̄∀ ̄)あれ?主人公だれ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。