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オマケの転生者  作者: むらべ むらさき
18 さらば黄金大陸!霧の森の秘密編!
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406 霧中決死のバケモノ退治

 むちっ、むちっ、むちっ......。


 青く深い霧が満ちる森、その中心部に響くのは、そんな音だ。

 つまりそれは、エミーが巨大タコの肉を、貪り食う音だ。


 あまりに巨大なタコの亡骸、その腕も、既に8本中5本が食らいつくされた。

 それでもエミーは、空腹だ。

 食べても食べても、満たされない。

 肉を噛みちぎった後は、ほとんど丸のみのような形で、彼女は一心不乱に巨大タコを腹の中に収め続けていた。


 なおこの周辺、エミー以外に動物は存在しない。

 こんな大物の肉が横たわっているのだ。

 小魚たちが集まって、ちょんちょんとつつき始めるのが普通だろう。


 しかし、今この時に限っては、この場所にはエミー以外の捕食者は存在しない。

 何故ならエミーは、巨大タコを食らいつつも周囲に【威圧】を放ち続け、タコ肉泥棒たちを追い払っているからだ。


 つまりは。




「............」


 エミーがこの瞬間にその存在を感知した、集団は。

 エミーの【威圧】も意に介さずに、こちらにまっすぐに向かってくる集団は。

 よほど、強いか。

 もしくはよほど、覚悟を決めた、集団であるということだ。


「............」


 エミーは6本目のタコ足をちょうど食らいつくすと、ごしごしと口の周りを手の甲でふき、霧の森を睨みつけながらゆっくりと拳を構えた。

 相手が、近寄ってくる集団が、一体何者かはわからない。

 しかし、これだけの【威圧】に歯向かい、こちらに向かってくるのだ。


 敵だ。

 つまりそれは、敵なのだ。

 皆殺しだ。


 エミーの頭が再び戦闘モードに切り替わり、魂が殺意に満ちる。


 殴り飛ばして。

 引きちぎって。

 踏みつぶして。


 ......殺す!




 しかし、エミーは。

 肉体と精神を、しっかりと臨戦態勢に整えていたにも関わらず。

 霧の奥からその姿を現した集団を見て。


 ......少なからず、動揺したのだ。


 何故か?




 エミーのもとへとたどり着いた、その集団は。

 数えるのも嫌になるほど、無数の。

 小さな、タコたちであったからだ。


 先ほど殺した巨大なタコと、本当によく似た。

 子ダコたちで、あったからだ。




◇ ◇ ◇




 そんなバカな!

 いくらタコが、頭の良い生き物であるとは言え!

 母の死を検知し、その復讐のため、向かってくる!?

 そんなことが、現実的にあり得るわけがない!


 ......そう、思われる方も、いらっしゃることだろう。

 実際、エミーとオマケ様も、ちらりとそんなことを、思った。


 だがしかし、現実として、子ダコたちはここに来た。

 怒りに燃える彼ら彼女らの瞳が、タコの知能に対する侮りへの、完璧なる反証だ!


 もしそれでも納得できない方には、『そもそもタコは地上で活動したり空を飛んだりしない』という言葉を贈らざるを得ないが、それはさておき。




 とにかく、確かにエミーはこの時、少しだけ動揺した。

 子ダコたちの怒りに満ちた瞳に射抜かれ、少しだけたじろいだ。


 しかし。


 オマケ様がエミーに、語りかける。


<これまであなたが、“親”を、もしくは“子”を......殺していないと、お思いですか?>


 と。




 そう......おおよその場合において、生き物とは何かの“子”であり、場合によっては既に“親”である。

 今までだってエミーは、様々な家族を壊し、食べてきたのだ。

 その復讐に来た熊を、返り討ちにしたこともある。

 今さらなのだ。


 自分のために、他者を、世界をすりつぶして、とりこみ続ける。

 そうやってエミーはこれまで生きてきたし、これからもそうやって生きていくしかないのだ。

 今回は、わかりやすかっただけだ。

 本当に、今さら、なのだ。


 再度、エミーの殺意に火がつき、燃えあがる。

 その魂が、またバケモノのそれへと、変じる!




 しかし。

 エミーの心が残していた、その人間性。

 それが生み出した、ほんの少しの隙は。

 今、この時においては。


 子ダコたちに、味方したのだ!




 ビュンッ!!




 母親譲りの【気配遮断】によってその気配を隠し、エミーの背後へと回りこんでいた子ダコの内の一匹が......この時、エミーに対して、体当たりをかました。

 子ダコとは言うが、巨大タコの子ダコだ。

 その大きさは既に人の頭ほどあり、全力で宙を泳いだ場合の速度は、かなり速い。

 そんな子ダコの、体当たりだ。


 動揺により隙が生まれていたエミーはそれを避けることができず、体当たりを食らい、よろめいた。


 エミーは、丈夫だ。

 常人ならば骨が砕けるような体当たりを受けても、よろめくだけで済む。

 このスペックがあるために、子ダコたちには本来、勝ち目などないはずであった。


 しかし。


 しかし、だ!


 結論から言おう。


 この子ダコたちは、確かに。




 “やってのけた”!




 「ぐ......!?」


 よろけるエミーに、新たな隙が生じる。

 それを見逃す、子ダコたちではない!

 彼ら彼女らは一斉にエミーへと、今度は前方から、体当たりをしかける!


 ドポン、ドポン、ドポンッ!


 不意をついた連続攻撃が【黒鎧】越しにエミーの体に衝撃を与え続ける!


 実を言えば、先ほど述べた通り、子ダコたちによるこの決死の攻撃も、エミーにダメージを与えることは、なかった。

 しかし、彼らの間髪入れぬ、度重なる体当たりの衝撃によって。


 ふわりと。


 エミーの体が、宙に浮いた。




「しまッ......!?」


 陸上生物であるエミーは、地に足つかねば本気が出せない!

 慌てた時には、もう遅い。

 彼女は子ダコたちの連続体当たりによって宙に運ばれ、反撃ができない状態で、もてあそばれ始めた。

 【黒触手】で、子ダコたちを振り払う。

 それをするための隙すら与えぬ、見事なまでの連携から生み出される、子ダコ連続体当たり!


「な、めるなああーーーッ!!」


 エミーは宙を回転しながら絶叫し、本気の【威圧】を周囲にまき散らす!

 その魔力の悍ましさに、至近距離で【威圧】を受けた数匹の子ダコはショック死するが、何せ彼ら彼女らは数が多い!

 すぐに空いた穴は埋められて、連続攻撃は再開される!




 そうしてエミーが宙を運ばれること、数秒。

 仕上げとばかりに、子ダコの内の一際体の大きな個体が、地上へと叩きつける形で、エミーに対して強烈な体当たりを放った。


 抵抗する隙のないエミーは当然それを食らい、真っ逆さまに地上へと落ちていく。


 そして、その落下地点に、あったものは。


 子ダコたちが、それを狙っていたのか、それとも偶然か......それは、わからないが。


 とにかく、そこにあったものは。


 ......遺跡の中に残された、転移魔方陣!




「あああああああーーーッ!?」


 猛烈な勢いで、転移魔方陣へとエミーが叩きつけられた、次の瞬間!

 彼女の体は、迸る紫色の光に包まれた!

 そして、その数秒後には!




 エミーの体は、この霧の森から、すっかりと消え失せていた。

 そして二度と、戻ってくることも、なかった。


 静かな青い霧の森を死で彩った、どす黒い色のバケモノは。




 こうして、姿を消したのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  本能的とは言え子ダコたちがやってのけたのは拳闘において至高の攻撃“チョムチョム”!!(´⊙ω⊙`)敵ながら素晴らしい!!名も無きタコ母さん、貴女のお子さんたちはすごかったよ。 [気になる…
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